禅で学ぶ「エンジニア」人生の歩き方

第10回 肩の力の,抜き方と,抜かせ方

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禅語「愛語回天」「渓深杓柄長」

ランク:上級 カテゴリ:コミュニケーション

はじめの言葉は「愛語(あいご)よく回天(かいてん)の力あり⁠⁠,二番目は「渓(たに)深くして 杓柄(しゃくへい)長し」と読みます。

今回,あえて2つの禅語を合わせて紹介したいと思います。
この2つはいずれも「あなたの心のうちを相手に届ける」時に,とても有用な禅語だと思います。

上に立つと。なにがしか相手に「伝えなければならない」ことは,驚くほど増えると思うのですが如何でしょうか。

そんな,何かを伝える時に。⁠なにを伝えるのか」と同じくらい「どのように伝えるか」はとても重要です。
⁠丸い卵も切りよで四角 ものもいいよで角がたつ」なんて言葉もありますね。

9回目の万法帰一で,ユーモアの大切さについて語ったかと思うのですが,
⁠相手の事を考えて⁠あげて⁠いる」と思い上がるのではなくて,
⁠相手の立場に立って考えている」なんていう不可能を思うのではなくて,
ただそれでも「できないことを前提に」どこまで相手の背景に思いを馳せることができるか。そんな「伝えたい」という切実な想いがあればこそ,あなたの「言葉」ではなくて,あなたの「気持ち」が,きちんと伝わるのではないでしょうか?

「愛語は愛心より起こり,愛心は慈心を種子とせり」なんて言葉もございます。

もちろん,気持ちだけでは如何ともしがたい部分がありまして,だからこその「渓深杓柄長」ではあるのですが。

つまり。⁠深い谷に水を注ぐのであれば,その深さに合わせて杓柄を長くしなければいけない」ので,杓柄を長くできるだけの,コミュニケーションテクニックは必要なのですが。

でも,それらの総ての素になるのはやはり,慈心にのみ寄るのではないでしょうか?

心に慈心をもって。相手の心の谷の深さに合わせた長さで,適切な量の愛語を注ぐことができたら。

きっとそれは,第8回でやった卒啄之機に近づけるのではないでしょうか?

あなたは。
相手の谷の深さを,どこまで見極めることができますか?
そうして,その深さに対して十分なだけの柄の長さを,どれだけの愛心をもってのばすことができますか?

著者プロフィール

がる

こなしている職業を語ると「……で,何屋さん?」と聞かれる,経歴が怪しいエンジニア。「知のコラボ」とか「シナジー」とかって単語で上手に糊塗してみたい。