禅で学ぶ「エンジニア」人生の歩き方

第13回 磨き磨かれ

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禅語「逢佛殺佛」

ランク:中級 カテゴリ:スキルアップ

大本はこんな文章になります。⁠逢佛殺佛 逢祖殺祖 逢羅漢殺羅漢 逢父母殺父母 逢親眷殺親眷 始得解脱⁠⁠。

なにやら物騒な漢字が大量に混ざっておりますが……これの日本語訳はこんな感じになります。

「仏(佛)に逢うては仏を殺し 祖に逢うては祖を殺し 羅漢に逢うては羅漢を殺し 父母に逢うては父母を殺し 親眷に逢うては親眷を殺し 始めて解脱を得る⁠⁠。

なんていいましょうか……そのまんまかつ,物騒きわまりないといいましょうか,何か根本的にいろいろなものを否定してしまいそうな文章です。

どちらかといいますと。禅語と言うよりは,漫画などで「総てを捨ててただ殺戮のみに生きる道を選んだ,大抵は(ストイックな)敵役が掲げているような文言」にしか見えないのですが(幼少のみぎりなどに強烈なトラウマがあったとかいうあたりに起因した性格で,最後は主人公が「同情しつつもトドメを刺し⁠⁠,敵役は「殺されることでトラウマから解放され,主人公に助言をしたり礼を言ったりする」ってあたりが王道かと思われます⁠⁠。

この禅語は何を伝えようとしている……というお話を展開する前に,そもそもこれって本当に禅語なんでしょうか?

世の中には,色々な「幸せに暮らしたり平和に暮らしたりお金が稼げたり成功したり健康になったり」する秘訣があります。

  • 仏様に手を合わせて念仏を唱えれば幸せになれます。
  • 両親を大切にすれば幸せになれます。
  • 祖先を敬い,お茶を供えてご飯を供えてお花を買ってご供養をすれば幸せになれます。
  • 成功の7ステップを8つのポイントを9箇条を守れば幸せになれます。
  • 教団に浄財を寄付すればツボを印鑑をご宝塔を免罪符を買えば幸せになれます。

……って,ちょっと待ちましょう。

上述の総てを否定するつもりは,ありません(一部は明示的にはっきりと否定しますが⁠⁠。ただ,少し考えてみましょう。
⁠**をやれば○○」というこの系列のフレーズは。はたして「誰にとっても」⁠どんな状況でも」常にtrueなのでしょうか?

「師匠の言うことをまったく聞かない弟子と 師匠の言うことを全部聞く弟子は大成しない」なんて言葉があります。

はじめは守も大切です。守の大切さは破草鞋で書いた通りです。
でも,延々と「守」ばかりでは。規則ばかりが形骸化する上に,変化に対しての柔軟性が皆無と言えます。

適応能力の欠落は進化からこぼれ落ちる妙薬です。でもそんな薬は欲しくありません。多分それは「毒」って言います。

そうして。だからこその「殺」なのです。
もうちょっと穏便な単語を使いますと,守破離の破となりましょうか。

逢佛殺佛 逢祖殺祖 逢羅漢殺羅漢 逢父母殺父母 逢親眷殺親眷 始得解脱。

仏の教えを得たら,それを否定してみてください。
祖の教えを得たら,それを否定してみてください。
羅漢の父母の親眷の教えを得たら,それを否定してみてください。
十分な「守」の後にくる「破」こそが,本当の意味で理解をするためのstartラインなのです。

物騒で,どちらかというと「バトル系の漫画に出てきそうな」この禅語は。実は,そんな境地を語っているのです。

そうして,その学ぶ姿勢は技術だって何にも変わりありません。
定石を知らない基礎を学ばないというのは論外です。型を知らなきゃ形無しです。

しかし,定石が「何故に定石たるか」を知らず,基礎が「通用しない場面」を知らないのは,同じくらいに実は論外なのです。
一度はあえて定石を破ってみる,そんな試みもまた大切なのです。

ただ,Webアプリケーションとかの場合,時々それが「広域に対してはた迷惑」になりますので。基本,localに閉じた環境でやりましょう,という注意点はありますが。
VM(virtual machine)を自PCの中に立てるのが比較的手っ取り早いですし,LinuxであればKNOPPIXとかその系のDVDブートなディストリビューションをチョイスするのも手ですので。MacのOS XですとそもそもがBSDですので,設定も楽ですね。

十分にまずは基礎を身につけ,磨いてください。
そうしてその後に,その基礎を全部,否定してみてください。あなたを教えてくれた,あなたの師の教えの総てを「殺す」のです。

守破ができれば。
きっと,身につけた基礎に振り回されることなく応用がきくようになるはずです。

著者プロフィール

がる

こなしている職業を語ると「……で,何屋さん?」と聞かれる,経歴が怪しいエンジニア。「知のコラボ」とか「シナジー」とかって単語で上手に糊塗してみたい。