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SEから製品開発へ─両方を知っているからできることがある
>エンジニアインタビュー 日本電気(株)開発環境技術本部 主任 菊地 誠さんspan>

2008年9月16日

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PM経験を生かした製品開発への貢献

では,「仕事の内容の似ている部分」とは何なのでしょうか?

現在のProcessDirectorの開発は,前にやっていた仕事と技術的な背景はほとんど同じで,同じようにソフトウェアの開発なので,考え方は非常に似ているんです。作業はどこまで進んでいるのかという進捗管理だったり,あとは品質をどうしていくかというところですね。これは製品開発するうえでも十分役に立っていると思います。

もう一点,ProcessDirectorという製品が「ソフトウェア開発のプロセスを効率化するためのツール」ということがあります。長年SEとしてプロジェクト管理をやってきた私の経験は,このツール自身を作る面でも役立つんです。SEの仕事,プロジェクトマネージャっていうのはすごく大変な仕事で,その仕事をいくぶんかでも楽にしたいというのがこの製品です。私もそういう意識は以前から持っていて,プロジェクトマネージャの仕事を効率化できないかと考えていました。どのように効率化したら良いか,という点については現場を体験していると強いと思います。その強みを活かして,この製品にいろいろと取り込んで行けたらいいなと思っています。

もちろん製品自体の勉強は必要です。そうしなければお客様の前で説明できませんし,ましてやセミナーで講演なんてできませんから。まだまだ奥が深くて全部は語りきれないんですけど。でも,今までやってきた経験があるので,勉強もスムーズに進む面はあります。

ただ,私はこの製品の誕生から立ち会っているわけではないので,機能や仕様がすぐに反映できるわけではありません。そこで,新製品の開発もやっているのですが,その開発ではいろいろと意見を出しています。

といっても,SE時代にはプロジェクト管理システムを本格的に使っておられなかったようです。これについてはどう考えておられるのでしょうか?

以前の職場でも開発管理ツールというものがあることは知っていましたが,使っていませんでした。使っていたら良かったなとは,今にして思えばありますね。たとえば,品質のデータなどは,現場ではProcessDirectorのようはツールではなくExcelを使って管理していることが多いんです。それを集計するときに,多少はマクロなんかを使って自動化してはいるのですが,大変ですし,同じデータを元にして集計しているのに,集計するたびに方法が違うので,結果が違ったりします(笑⁠⁠。その点はツールを使うと非常に便利です。これはProcessDirectorの特徴なのですが,通常の業務をこれを使ってこなしていくと,自然に品質のデータがツールの中に溜まっていくんです。これは結構使い勝手がよく便利だと思います。

ツールの得意なところと不得意なところがあると思うんです。ツールを使うことですべてうまくいくわけではないと思っています。だから,ツールの利点が活かせるところはどこか,というところから考えますね。具体的には,先ほど言ったような数を集計するようなところ,そこは得意だと思うんです。それをうまく活かして,集計っていう行為を意識しなくても,普段の業務を進めていけば,必要な情報がツール内に溜まっているという形になれば,管理負荷が軽減されていくと思います。

管理するためにデータを持ち寄って進捗会議をして,その進捗データをまた集計して,なんてやっていたら,それだけで大変で,本来の管理業務ができなくなってくるんです。そういった雑多な部分をいかにうまく効率化するかというのがツールの使いどころですね。

ProcessDirectorとは?

ここであらためて,菊地さんが担当されている「ProcessDirector」という製品の特徴について伺いました。

この製品は,世の中でソフトウェアの重要度が上がってきて,プロジェクトの管理が重要視されてきた中で,まずはNECのグループの中でのツールとして誕生しました。できてから5年間ほど社内で使って,社内プロジェクトである程度実績を積んでから外販を始めました。その後,いくつか機能を追加しつつ現在に至っているという状況です。

機能の特徴としては,普通のプロジェクト管理ツールはプロジェクトの進捗管理に重きを置いているのですが,ProcessDirectorは進捗だけではなく,品質の管理や課題の管理といった管理機能があって,それらの間で有効なデータをやりとりしながら連携して,管理の負荷を下げることができる点があります。また,ユーザ全員にプロセスを厳守させるという点も特徴の一つです。

ソフトウェア開発では,まず「いかに速く作るか」というのは大事なのですが,日本的な考え方だと,それと同時に「品質をいかに保っていくか」というのも大事にしているんです。その品質管理をプロジェクトとして進めていく上で,課題というものが出てくるんですけど,その課題は何なのか,そしてその課題がいまどんな状態になっているのか─たとえば誰かが着手しているとか,クリアされているかどうか─というのを管理する機能があるんです。この機能は使うための敷居が低くて,プロジェクト全員で入力したデータを共有することもできますし,課題がクリアされたかどうかもわかるようになっています。その辺から徐々に導入していってもらえたらスムーズに使うことができるのではないかと思います。

いきなり全部の機能を使おうとしても,どう使って良いかわからないと思うので,このように1つの機能からお客様に勧めることもあります。たとえば10個ある機能のうち1個から始めて,プロジェクトの進行や管理の項目によって機能を増やしていくという使い方ができるようになっています。

また,個別のプロジェクト管理だけではなく,その上のPMO(Project Management Office)つまりプロジェクトを横断的に見るような,組織で有用なデータ,あるいは会社の経営層が必要とするデータなども,個別プロジェクト管理の中からデータを吸い上げて提供するような機能ももっていて,これらが融合した形になっています。これも特徴の1つです。

あと細かい点で言うと,会社によって管理の項目や,帳票に出す項目なんかが違うんですけど,そういう違いを吸収できるように,お客様で出力項目をカスタマイズできる機能があります。カスタマイズ機能で対応できない場合は,私たちがお客様の要望を聞いて,直接カスタマイズすることもあります。

それから,ISO9001やCMMIといった各種の標準にも対応していて,ProcessDirectorを使ってプロジェクトマネジメントをしていくと,ISO9001の取得や,CMMIのレベルアップを比較的容易に図ることができるようになっています。こうした細かい基準をあまり意識することなく達成できるというのがポイントです。CMMIに関しては,リードアセッサに評価を依頼したところ,Process Directorの導入によりCMMI達成のためのプラクティスの内87%を強力にサポートすることが分かっています。

画像2

「品質」にこだわる

最後に,これから積んでいきたいスキルや,仕事への思いについて語っていただきました。

新しい技術というのは次々と出てきます。それをどんどん覚えていくのは非常に難しいと思うのですが,それをやっていかないと,新しい技術や物作りの考え方が出てきたときに,その周辺やマネジメントの方法も変わってくると思うんです。だから,新しい技術を勉強していかなければいけないと思います。

また,技術系の仕事に限らず,仕事全般でそうだと思うのですが,自分の専門分野だけではなく,お客様のところで話をうまくできるような,ヒューマンスキル的な面も必要だと思っています。そういったところも磨いていきたいですね。これにも関係あるのですが,先日初めて200人くらいの大人数の前で講演を行いました。そうしたプレゼンテーションのスキルは積みたいですね。

よく言われることですが,ソフトウェア開発では「QCD」つまり納期と品質,そしてコストの3点は絶対に押さえておかないと,プロジェクトが成功したとは言えません。中でも大変なのは品質です。品質をいかに作り込むかというところが大変です。言い方が悪いですが,ちょっと手を抜いただけで,お客様のところでどんな大きな影響が出るかわかりませんから。よくソフトウェアのバグが社会的に影響を及ぼすような事件になるじゃないですか。ああいうことがあるので,品質には気を遣いますね。

ソフトウェアがどんどん社会にとって重要度を増しているのです。そしてそのためには,最初の計画がしっかりしていなければいけません。小さなプロジェクトだと,問題が起こっても,放っておくと時間が解決してくれる面がありますが(笑⁠⁠,大きなプロジェクトでそれをやると,それがネックになって大変なことになってしまいます。そうしたことにならないよう,少しでもプロジェクト管理が効率化できるためのツールを作っていきたいなと思います。

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