インタビュー

“人とのつながり”がもたらすコミュニティの力 ―「Start Python Club」3周年記念インタビュー

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参加者の関心分野

――Pythonに関心を持つ人が増えているようですが,多くのPythonのコミュニティのなかでも,Stapyはメンバーが多く,かなり人気があるように伺えます。Connpassのサイトを見ると,毎回100名以上の参加者が来ていますよね。みなさん,どのような関心を持って,参加しているのでしょうか?

阿久津:参加者の関心は大きく分けると2つの方向に分かれます。1つはウェブアプリ,もう1つは機械学習や統計を中心としたデータサイエンスです。この2つについてはそれぞれ特集を組んで,勉強会を行っています。それからIoT,ハードウェア系にも大きな関心が集まっていますので,何度か取り上げてきました。

ただしいずれの分野においても,実用レベルに達するにはプログラミングの知識だけでは足りず,その周辺の知識が欠かせません。そこでStapyでは,これらの特定の分野のプログラミングを扱うだけではなく,バージョン管理システムやアジャイル開発など,周辺の技術や知識もコンテンツに加えるようにしています。プログラミングだけだと,どうしてもマンネリ化してしまうので,アクセントをつけた企画を行うようにしています。

Start Python Club共同設立者の阿久津剛史氏

Start Python Club共同設立者の阿久津剛史氏

Stapyの振り返り

――3年間のコミュニティ活動を振り返って,とくに印象に残った講演,面白かった講演はありますか?

辻:毎回,スタッフで面白い講演を企画しているので,どれも興味深いものばかりですが,とくにPepperの感情生成エンジンを作った東京大学の光吉先生の講演が印象に残っています第10回:2016年1月⁠。Pepperの感情をカラーマップで示して,言葉の抑揚を変えることができるのは面白かったです。なにより冬なのに,タンクトップだった光吉先生にはさらに驚きましたが……(笑⁠⁠。

それから東京大学の加藤真平先生の自動運転用のOSS,Autowareの話は強烈でした第20回:2017年1月⁠。自動運転のOSSは発想自体が飛び抜けていましたが,Udacityの創設者のSebastian Thrunと共同開発をするなど,加藤先生の活動は日本発のベンチャーとしても面白かったです。

阿久津:どちらも10回,20回と記念イベントとして,とくに著名な研究者やエンジニアに話してもらいたかったので,企画を練りました。30回も同じように記念イベントとして,『いちばんやさしいPythonの教本』の鈴木たかのりさん,『Pythonエンジニアファーストブック』の関根裕紀さん,『PythonユーザのためのJupyter[実践]入門』の片柳薫子さんと@drillerさんといった,有名なPython本の著者の方々に講演してもらいましたが,この回も盛り上がりましたね第30回:2017年11月⁠。

コミュニティとしての広がり

辻:コミュニティ活動を継続して,参加者が増えてくると,コミュニティとしての認知度もどんどん高まって,PythonやITの界隈で有名な方にも講演してもらえるようになりました。Connpassを運営しているビープラウドの佐藤治夫さんが,コミュニティマネージャーSummit2017というイベントで,すごいコミュニティの1つとして挙げてくれたのはうれしかったですスライド資料⁠。

阿久津:コミュニティとして成長すると,企画・運営を手伝ってくれるスタッフも増えました。長野のGeekLab.Naganoというコミュニティを運営している中島祐樹さんは,東京の勉強会に参加した後,長野にもライブ中継してほしいというリクエストをくれました。そこでデスクトップ共有のウェブアプリを使って,長野のGeekLab.Naganoをサテライト会場として,ライブ中継しました。中島さんにはStapyの長野支部長として,月例の勉強会のライブ中継や巡業イベントを手伝ってもらっています。こうして地域的な広がりができたのもよかったです。

これまでに長野で2回,日本橋の理研AIPとつくばでそれぞれ1回,巡業イベントをやってきましたが,それぞれ定例の勉強会とは異なる分野のユニークな講演が聞けて,知見が広がるのが楽しいです。

「みんなのPython勉強会 in 長野 #2」の参加者

「みんなのPython勉強会 in 長野 #2」の参加者

――Stapyはほかのコミュニティとの交流に積極的ですよね。理研AIPやつくばの研究機関とも共同で,アカデミック向けのイベントを開催しているのはユニークです。

辻:昨年5月に理研AIPで開催したStapy x 理研AIP オープンソース研究会はエポックメイキングだったと思います。理研AIPと東京大学を兼任されている津田宏治先生に声をかけていただき,理研AIPとオープンソースのコミュニティで交流するイベントの相談をいただきました。

ご存知の通り,人工知能やコンピュータサイエンスの分野に限らず,材料科学,生命科学,機械工学,宇宙物理,素粒子物理など,多くの科学技術分野では大量のデータをコンピュータで解析します。最近では「オープンサイエンス」という言葉も普及してきましたが,オープンソースの流れはソフトウェア業界にとどまらず,アカデミックな科学技術分野にも浸透しています。

理研AIPでの研究会では,Chainerの開発をしているPFNの大野さんや,Pandasのコアコントリビューター(主要な開発者)として有名な堀越さんに講演していただき,日本のサイエンティストやエンジニア,プログラマがどのように世界のオープンソースの潮流に乗っていくべきかを考える貴重な機会になりました。

著者プロフィール

阿久津剛史(あくつたけし)

Start Python Club共同設立者・代表。某メーカーのマーケティング部門に勤務。データサイエンスに関心を持って4年前からPythonを始める。縁あって辻さんと知り合い,Start Python Clubを立ち上げる。仕事,コミュニティ活動の傍ら,休日は子供のサッカーチームを指導する2児の父。読書大好き。最近ハマっている本は,エリック・リースの『リーン・スタートアップ』。

Twitter:@akucchan_world
GitHub:@takeshi-a


辻真吾(つじしんご)

Start Python Club共同設立者・技術代表。東京大学先端科学技術研究センターに勤務。ちいさな頃からコンピュータが大好きで,いろいろなプログラミング言語を使って来たが,10年ほど前からPythonに落ち着く。さまざまなことに興味があるが,最近は,生命のような複雑なシステムをモデル化できる,新たな方法論を探したいと思っている。食べることと料理することが好き。最近はまっているのは,銭湯通い。

Twitter:@tsjshg
Web:http://www.tsjshg.info


高屋卓也(たかやたくや)

書籍編集者。2002年株式会社技術評論社に入社。営業職を経て現職。入門書から専門書まで幅広く担当。 データサイエンス系の専門書を多く手がけ,主な担当作に「データサイエンティスト養成読本」シリーズなど。

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