インタビュー

F5 NetworksによるNGINXの買収に見る,オープンソース・パワー

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3 分

オープンソースの価値

Rabstatt氏は「いまクローズドソースの企業がこれが我々のシステムの機能です!”と言って製品を提供しても,人々はもっと大きなフレキシビリティを求め,リサーチし,他の(より良い)方法がないか探します。オープンソースはそうした(現代的な)状況で人々を引きつけ,うまくやっていく優れた方法です」と言います。

まさにそのクローズドな文化である(かつハードウェアベースの)ネットワークアプライアンス業界,その老舗の1つとも言える1996年創業のF5社が,オープンソースネイティブなソフトウェアスタートアップであるNGINX社を,そのオープンさに大きな価値をおいて(6億7,000万ドルで!)買収したわけです。

そして,これはNGINXに限った話ではありません。Marc Andreessenが2011年に指摘したとおり注2),ソフトウェア(アプリケーション)のパワーは日々,強くなり,世界を飲み込みつつあります。そしてソフトウェアのパワーは,デベロッパのパワーによって産み出されています。

もう世界はソフトウェアデベロッパのパワーを無視できなくなりました。つまりどのような企業にとっても,その市場で強い競争力を維持するためには,アプリケーション,そしてデベロッパに寄り添うことが必要不可欠となったのです。

1998年にNetscape Communications Corporationが,そのブラウザのソースコードをオープンにしたのは実にエポックメイキングな出来事でした。あれから20年が経ち,企業がそのプロダクトをオープンにして開発・提供し続けることは,いまやごく普通のビジネスアプローチとなりました。今後は「デベロッパーに寄り添う」ことを指向する買収や連携がもっと増えていくでしょう。注目したいと思います。

社内の風景。オープンな雰囲気で,遊べる場所もあります

社内の風景。オープンな雰囲気で,遊べる場所もあります

注2)
⁠Why Software Is Eating the World⁠, Marc Andreessen,

コラム:インタビューのこぼれ話

いつも筆者は一問一答でなく雑談的な形で取材しています。

この日は会社の成り立ちに関する話の中で,こんな脱線がありました。

Rabsatt氏:

Igor(NGINXの創業者Igor Sysoev)は別の会社で働いてたんだけど,Webサービスのスケーラビリティの問題に気が付いて,自分で解決しよう,と決めたんだね。

これが人気を得て,スペアタイムでのメンテナンスに限界が来て2011年に会社を起こしたんだ。

筆者:

うまく行く製品は創業者自身の強い欲求(desire)から出ているものが多いですね。

Rabsatt氏:

そう。それもパーソナルで痛くて辛い(painful)経験があってね。⁠ははは)

多くの人達もその辛さを経験しているけど,彼が最初にやり遂げた。多くの回数,多くの人が,痛みと手を打った(deal)したんだね。⁠なるほど)

彼は「いやそんなことはしない,自分で何とかこの痛みを直してやる(pain relief⁠⁠」って決めたんだね。

筆者:

良いですねその表現。初めて聞きました。"Pain relief approach(鎮痛剤アプローチ)" ですね。⁠一同笑い)

オリジナルTシャツ

取材の終わりに T シャツを頂きました。

「ごめんね読み方分からなくて!」と笑いながら貰ったTシャツ。もはやネタです

「ごめんね読み方分からなくて!」と笑いながら貰ったTシャツ。もはやネタです

「読み方のわからない名前にしちゃったから」と笑いながら渡してくれたのですが,その名前の下に「オープンソースのWebサーバだけれど,リバースプロキシ,ロードバランサ,APIゲートウェイ,コンテンツキャッシュにも使えます」とあります。

NGINXが単なるWebサーバでなく,アプリケーション環境構築のパーツとして,ユーザとともに成長してきたことをみごとに示す,良い説明だと思います。

著者プロフィール

安田豊(やすだゆたか)

京都産業大学コンピュータ理工学部所属。KOF(関西オープンフォーラム)やiPhoneプログラミング勉強会などのコミュニティ活動にも参加。京都の紫野で育ち,いまは岩倉在住。せっかく復帰させたCBX 400Fに乗る機会がなく残念な日々を過ごしている。

バックナンバー

2019

  • F5 NetworksによるNGINXの買収に見る,オープンソース・パワー