インタビュー

LayerXが牽引する,エンジニア視点での実践的DXのススメ~これからの時代は“不確実性への対応力”で勝負

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4 分

ブロックチェーン技術を日本の産業に導入するには?

Q:3月の新会社設立以降,非常に積極的,そして,スピーディな動きが見られています。その中で,やはりLayerXがDXに取り組む一番の理由,それは,お二人をはじめとした,所属するエンジニアの皆さんが持つブロックチェーンに関する技術力があるからこそ,とも言えるのではないでしょうか。

ブロックチェーン技術に関しては,ここ日本では仮想通貨に関するものから注目を集めたことがあって,ブロックチェーン=仮想通貨という誤解が0とは言えません。改めて,日本の産業において,ブロックチェーン技術の活用はどのように進めていくべきか,エンジニアの目線で考えるポイントを教えてください。

鈴木: まず,ブロックチェーン技術が注目を集めた理由は,分散共通台帳が持つ汎用性とスケーラビリティではないでしょうか。その中で,個人的に注目しているブロックチェーン技術は,The Linux Foundationが運営するHyperledgerプロジェクトです。中でも,デジタル・アイデンティティに関する技術をまとめたフレームワーク「Indy」に着目しています。

デジタル・アイデンティティは,個人はもちろん法人にも適用されます。ですから,先に出た仮想通貨のような個人間取引だけではなく,個人と組織,組織と組織,国家と国家,といったような組み合わせ,あるいは,製造業において,生産ラインと生産ラインというような,業務フローに必ず必要になります。

Indyは,集中型IDプロバイダが持つ課題を解決するために誕生したものなので,今後増えるブロックチェーンベースのシステムに統合できると非常におもしろくなりそうです。

鈴木研吾氏

鈴木研吾氏

また,アイデンティティ関係のブロックチェーン技術を私がエンジニア視点で注目している理由は,GAFAやMicrosoftなど,テックジャイアントの参入率が低い点です。私が知っている限り,これらの企業のうち積極的に参入しているのは,MicrosoftのビットコインベースのIONだけではないでしょうか。業界自体がまだまだ黎明期であり,先のOSS活用の話にも通ずるところですが,個々のエンジニアの力が試される,おもしろい領域だと思います。

三津澤: 私からは少し俯瞰した視点で,ブロックチェーン技術とビジネスについてお話します。ブロックチェーン技術というと,金融のほか,物流などのエンタープライズ領域での適用事例を目にすることが多いと思います。ブロックチェーン技術が得意なのは,基本的には複数組織間でのデータとロジックの共有です。

そのあたりに,DXとブロックチェーン技術のタッチポイントがあります。今日本にある多くの産業では,第1段階としての自社の業務のデジタル化を実現できていない企業や組織が多いでしょう。ブロックチェーン技術を用いることで,DXを推進する際に業界全体でデータを活用したり,業務を標準化するような視点を取り入れることができます。サイロ化しない状態でデータを蓄積できることは継続的改善のための土台になりえると思いますし,業界全体での効率化にもつながると思っています。

ユースケースによって用いるべきブロックチェーン技術も異なりますので,まずはDXすべき対象に合わせて,複数社で共有することがメリットを生みそうな所にブロックチェーンを積極的に選択していくと良いかと思います。データの種別ごとに,色々なデータが載ったブロックチェーンが現れることになりますが,鈴木が話したように,デジタルIDの活用が進めば,多様な領域の,さまざまな属性・規模のユーザ同士で分散共通台帳が活用できるわけです。

私たちは,DX事例への取り組みとともに,継続してブロックチェーン技術の研究・開発を行っています。ちょうど先日(2020年6月30日⁠⁠,弊社の取組の一環として,独自の分析フレームワーク「LEAF」に基づくエンタープライズ向けブロックチェーン基盤比較レポートを発表しました。ご興味のある方は,ぜひご覧ください。

独自の分析フレームワーク「LEAF」に基づく エンタープライズ向けブロックチェーン基盤比較レポート(要登録)
https://layerx.co.jp/publications/leaf_basic/

鈴木: 具体的な産業としては,すでに取り組みが進み始めた金融業界,そして,日本では物流業界でのブロックチェーン技術活用が進むと予想します。また,三津澤が申し上げたように,業務フローがデジタル化できていない業態,企業での活用も増えていくのではないでしょうか。

また,私の考えとして,産業へのブロックチェーン技術活用には,技術力に加えて,さまざまな経験が重要と考えます。私たちLayerXには,エンタープライズ領域と対になる,コンシューマ向けサービス(GunosyやPairs)の開発者が在籍している点が,おもしろい部分でもあり,強みではないかと考えています。

コンシューマ向けサービスで培った不確実性に対する対処方法,運用ノウハウ,改善経験が,今後取り組むであろう,DXに向けて,実際に動くものとして提供できるはずです。

三津澤: 今の話の補足として,LayerXにはプロダクトやサービスの立ち上げからスケールに関わっているエンジニアが多くいます。そのため,プロジェクトを立ち上げる際に,継続的改善を実現するために限られたリソースをどこに配分してプロダクトをリリースするべきかの勘所がつかめているメンバーが多いと思います。

DX時代,これからのエンジニアに求められる資質とは

Q:今のお話を伺って,ブロックチェーンという専門性の高い技術が,今後,日本の多くの産業でも採用されていくのではと楽しみになりました。一方で,そのためには,技術の採用,その先の活用,そして,DXの実現には技術力,すなわち,エンジニアが必要です。

最後に,お二人から見て,これからのDX時代におけるエンジニアに求められる資質について教えてください。

画像

三津澤: 私は事業やプロダクトの立ち上げに絞ってお話しますね。

設計力は非常に大事だと思っています。

エンジニアの手がかかるような運用や修正が困難なコード,スケールしないアーキテクチャなど,グロースさせるタイミングで重荷になるような負債をため続けると改善がママなりません。とはいえ,固く作りすぎるのも不必要に煩雑なソフトウェアができてしまい,スピードを損なうという観点では違います。バランスを取れる力は大切だと思います。

たとえば,Webサービスで言えば,当然データベース設計やAPI設計といった各論も重要です。加えて,システムのどういった要求に対してどのような技術を具体的に選択するかと言うような観点も大切です。総合的なアーキテクチャ設計力が求められると思います。100点をつねにめざすというよりは,いち早くプロダクトを立ち上げる際につねに80点が取れるようなバランス感があるといいなと思います。

鈴木: 技術という点では,三津澤と同じです。また,設計をしっかりするためには,ネットワーク,データベース,プログラミング言語など,一通り知識を習得しておいて損はないでしょう。応用的な部分を掘り下げるのではなく,まず,仕組みの部分,基礎を知っているだけで,トラブルや何かの障壁にぶつかったときの対応策,回避策を見つけ出せるはずです。

DXの観点では,今お話した基本的な技術に加えて,自分が関わる領域以外の知識や経験,そして,自分の領域外のメンバーとのコミュニケーションが求められます。ですから,今後,エンジニアとしてDXに関わるには,さまざまなスキルセット・マインドセットの方たちとのコミュニケーションの取り方は大切にすることをおすすめします。

三津澤: 改めて,私たちが考えるDXとは,ビジネスを継続させるためのデジタル化であり,この流れは,日本の産業においてますます大きな潮流になっていくと信じています。

今,鈴木が申し上げたように,きちんとしたコミュニケーションができるエンジニアは,DX領域で求められる人物になるでしょう。

いろいろとお話しましたが,DX時代のエンジニアの資質,それは,不確実性に対応する余裕を持っている,総合力のあるエンジニアかもしれません。あるいは,もし何か1つのスキルのスペシャリストであれば,自分が持っていないスキルを持っている人とチームを組んで,総合力を実現できることが大事ですね。

――ありがとうございました。

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室部長代理。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属,同誌編集長(2004年1月~2011年12月)や『Web Site Expert』編集長を歴任。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)の責任者として,イベントやWeb・オンライン企画を統括。現在は,技術評論社の電子出版事業を中心に,デジタル・オンライン事業を取りまとめる。社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

Twitte ID:tomihisa(http://twitter.com/tomihisa/

バックナンバー

2020

  • LayerXが牽引する,エンジニア視点での実践的DXのススメ~これからの時代は“不確実性への対応力”で勝負