インタビュー

ISUCON~10年目の挑戦,そして,未来へ

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個人競技ではなく,チーム競技としてのISUCON

――私が取材してきた中でも,ISUCONの本選出場をその年の目標とするエンジニアが増えてきているように思います。今,池邉さんはほかの競技プログラミングやCTFのような位置付けを目指しているとおっしゃいました。その中でも,ISUCONならでは,ISUCONとしてはここをとくに重視していきたい,主催企業の開発統括という立場から重要視していることはありますか。

池邉: 一言で言えば「チーム力」です。先ほども申し上げたとおり,ISUCONはエンジニアの技術力底上げにつながるコンテストを目指しています。私が考えるエンジニアの重要な資質の1つに「コミュニケーション力」があります。

私たちLINEもそうですし,プロダクトやサービスを開発する場合,すべてを1人で完結するというのは難しいですし,今のトレンドを見てもインフラやフロントエンド,デザイン,さらにユーザに届けるためのマーケティング,ユーザ対応のコンシューマサポートなど,多くの役割があって,優れたプロダクト・サービスが生まれて使われ続けています。

ですから,エンジニアとしても優れたコードが書ける,斬新なアイデアを生み出せるだけではなく,それをきっかけとして多くの仲間とさらに高みに上っていく心構えが必要で,そのためには周りの仲間とのコミュニケーションが重要です。

1名での参加も認めていますが,ISUCONはチームでの参加を推奨しています。その理由も,コミュニケーション力をエンジニアの重要な資質として考えているからです。

実際,ISUCONの予選・本選とも,出題の読み解き方,ゴールに向けた仮説の設定,それに至るプロセスなど,チームでどう考えるか,それでうまくいくこともあれば失敗することもあるわけです。事前情報なしで直面した課題に対し,仲間とどう対峙し解決していくのか,ISUCONではその部分をぜひ見たいですね。

このようなコミュニケーション力・チーム力もまた,先ほどお伝えしたような数値化しづらい評価基準で,それが見られるのもISUCONならではの特徴です。

初めて予選・本選すべてオンラインでの開催になったISUCON10

――今回,10回目にして初めてすべてオンラインでの開催となりました。とくに,これまでの本選では,予選を勝ち抜いた挑戦者たちが,同じ場・同じ空間に集まって課題に向き合い,ときに周りを意識しながら優勝を目指していたかと思います。今回,新型コロナウィルスの影響とともに,完全オンライン化になって意識したことがあれば教えてください。

池邉: まず,完全オンライン化の話の前に,参加チームを募集してあっという間に500チームが集まってしまったこと,これが想定外でした(笑⁠⁠。例年ですと,告知を開始してから少しずつネットに情報を上げたり,主催であるLINEから,あるいは過去のISUCON参加者のネット口コミを利用して募集チームを集めていたのですが,今回は本当にあっという間に参加枠の500チームが埋まってしまいました。個人的見解ですが,新型コロナウィルスの影響によって,今まで使っていた時間が空いてしまったり,あるいは,集中する時間がエンジニアの皆さんにも増えたのではないかと想像します。

また,オンライン化とともに,10回目を開催するにあたって,運営責任者から「11回目以降をどうしますか」という相談がありました。今のまま続けるのではなく,新しい形,今後も継続する意義のある形に挑戦したいという提案があり,今回は企業や個人のスポンサー募集を含め,これまでのISUCONとは運営の形を少し変えています。

完全オンライン化という話に関して言えば,おっしゃるとおり,今までは本選の8時間で一斉に取り組み競い合うという体験が,ISUCONのコミュニティの醸成につながっていました。

今回は会場に集まるということが難しい状況になったので,オンライン上で均等に情報を発信するようにしようと考えています。それをどのように受け取って,取り組むか,そこにまたチームとしての特色の出し方,そして,優勝に向けた取り組み方の特徴が出るのではないでしょうか。

イベントとしての一体感という点では,今回オンライン化で,みんなが集まって話したり,また,昼食を含めた休憩の時間を通じたコミュニケーションの機会を設けづらいという課題が見えました。その中で,少しでもチーム力を高めてもらえるよう,また,同じイベントに参加しているという一体感を出せるような施策のひとつとして,LINEのグループ会社である出前館の協力により,食事などで使えるクーポンを発行します。このクーポンを使って,同じメニューを頼んで同じ時間に食べても良いですし,逆に,チーム内で時間を分けて休憩も取っても良いですし,オンラインならではの一体感をそういった施策を通じて醸成できれば,これからのオンラインイベントの新しい姿につながるかもしれませんね。

今の時世をふまえ,オンラインでの取材となった

今の時世をふまえ,オンラインでの取材となった

――お話しするのは難しいのを承知の上で,伺います。ISUCON 10の予選の課題を教えてください(笑)

池邉:だめです(笑)

ただ,ヒントではないですが,これまでのISUCONは大きくその年の流行り,そして,出題スポンサー企業が提供しているサービス,この2つの特徴から予選・本選の課題が出題されています。あくまで傾向ではありますが,今回参加する500チームの皆さんには,まず,そこをスタート地点にぜひ準備を始めてみてください。そして万全の体調を整えて,予選初日を迎えてください。

参加500チームに向けて

――最後に,予選,本選を控える参加500チームの挑戦者に向けてメッセージをお願いします。

池邉: 詳しくはISUCON応援特設ページに書いてありますので,一言「頑張れ!」と伝えたいです。皆さんの挑戦,楽しみにしています。

――ありがとうございました。
ISUCON10
http://isucon.net/

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室部長代理。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属,同誌編集長(2004年1月~2011年12月)や『Web Site Expert』編集長を歴任。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)の責任者として,イベントやWeb・オンライン企画を統括。現在は,技術評論社の電子出版事業を中心に,デジタル・オンライン事業を取りまとめる。社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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