インタビュー

プロダクト思考で開発が進む「みてね」の今とこれから~みてねの生みの親笠原健治氏,開発マネージャ酒井篤氏が考える,プロダクトとエンジニアリングの素敵な関係

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「みてね」ならではの開発チームの特徴

――プロダクトオーナーと開発チームのそれぞれの立場の共有,そして,何よりコミュニケーションを含めた密な連携が,今のみてねを支えることが伺えました。続いて,開発チームにフォーカスして質問させてください。現在のみてね開発チームの体制,また,特徴があれば教えていただけますか。

酒井: まず,開発チームはもちろん,事業部内に多くのみてねのヘビーユーザがいる,というのが1つの特徴です。作る側が当事者目線で体験や課題を捉えられるのはとても大きいですね。

また,最近は開催できていないのですが,リリース後,ユーザ規模が小さい間は定期的にユーザミートアップを開催していました。そこでは,自分たちの目線とは違う,客観的な目線から,とくに自分たちが知らないこと,見えない課題,さらにみてねを通して見える,社会的な問題にも触れることができたと感じています。

そうした,さまざまな目線を意識しながら,実際に手を動かして開発するときの心構えは「目の前のユーザを喜ばせたい」という共通認識で進められてきたことも,みてねの開発ならではの特徴と言えます。

また,私がもともとmixiの開発も関わっていたので,当時と比較すると,mixi時代はエンジニアの数が多く,開発組織の規模が大きかった一方で自分が扱える範囲が小さかったとも言えます。みてねについては,スモールスタートのときから関わっていたため,自分が扱える範囲が広く,いろいろな技術を自ら試すことができたというのもエンジニアとしての喜びがありました。

現在は19名の開発チームになり,規模も大きくなっている中,アプリ開発,デザイン,インフラ,SREなどチームに分けて進めていますが,ユーザの声を大切にする気持ちやさまざまな技術の研究をする開発文化は残っていると思います。

開発手法としては,スクラム開発(ラージスケールスクラム)を採用し,チーム内のコミュニケーションの活性化,課題の共有,ロールの明確化など基本部分をしっかりとやりながら,実際の開発業務はチームごと,個人ごとで対応できる体制で行っています。

具体的なツールとしては,奇をてらったものはなく,シンプルさ・使いやすさを重視することで,より速く,効率的に開発できる体制になることを心がけています。

笠原: 私は,全体の中でもとくにアプリ開発やユーザに近い部分を見るようにして,SREや機械学習などに関するところは緩めに参加している状況です。ここも,役割分担と情報共有のバランスを心がけている結果と言えますね。

――ここまでのお話を伺って,まさに「みてね」という1つのプロダクトをメンバー全員がそれぞれの役割を持ちながらも,同じゴールを目指して進めている「ラージスケールスクラム」の模範例と感じました。

今後,さらに成長し,また,エンジニアを含めたチームメンバーが増えることがあるかと思います。その点について,とくに育成についてはどのように進めているか教えてください。

酒井: 新たなメンバーが増えたときのトレーニングとして,既存メンバー含めた3人程度の小さなスクラムチームを作り,私から課題を提供して開発してもらっています。このとき,私が意識しているのは,スピードよりも,チームでの開発を体験してもらうこと,また,確実にゴールに辿り着いてもらうことです。可能な限り,プロダクトの改善につながる課題を提供するため,達成したゴールが「みてね」のユーザにとっての価値につながり,自分がチームの一員になれたと実感してもらえるよう心がけています。

言葉で言うと楽しそうに見えるところもありますが,中には小さなバグの改修などもあります。バグの改修は地味ですが,とても大切な業務ですから。

また,人材育成とともに,技術的負債の解消や新しい技術の採用を通して,開発者体験の向上も積極的に行っています。

とくに最近ではインフラの刷新に取り組んでいます。みてねのインフラは,5年前に設計された当時から,主にAWS OpsWorksで構成管理されているのですが,サービスや組織の成長とともに,コストやスケーリング,開発効率などの面での課題が顕在化してきているため,現在はAmazon EKSを採用してコンテナ化を積極的に進めています。SREチームが誕生したのは,そのプロジェクトを立ち上げるためでもありました。

このように,プロダクトや組織の課題と向き合う中で新しい技術に触れていくことで,新卒エンジニアや中途採用エンジニアの育成だけではなく,いまチームにいるエンジニアにとっても常に学べる環境を提供していきたいと考えています。

コロナ禍において,リモートワーク時間が増える中,みてね開発陣はオンラインを活用して積極的にコミュニケーションを取りながら開発を進めている

コロナ禍において,リモートワーク時間が増える中,みてね開発陣はオンラインを活用して積極的にコミュニケーションを取りながら開発を進めている

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室部長代理。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属,同誌編集長(2004年1月~2011年12月)や『Web Site Expert』編集長を歴任。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)の責任者として,イベントやWeb・オンライン企画を統括。現在は,技術評論社の電子出版事業を中心に,デジタル・オンライン事業を取りまとめる。社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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