インタビュー

2022年のRed Hat Enterprise Linux,そしてCentOS Streamの今後は? ―Red HatにOS戦略を聞いてみた

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CentOS Streamの位置づけは?

――2021年12月末でサポートが終了したオープンソースプロダクト「CentOS」について,サポート終了後のユーザ移行などをどう考えているのか教えてください。また,CentOSはこれまでRHELのクローンOSという位置づけでしたが,CentOSの名前を残した「CentOS Stream」は新たにRHELのテストプラットフォームに変更されたという解釈で良いでしょうか。

RH:まず最初にお伝えしておきたいのですが,CentOS Streamというプロジェクトの目的は,CentOSおよびRHELの開発を真にオープンにし,多くの方々が将来のRHELのリリースにいち早く触れ,自身の実現したいことのためにRHELの開発に対してのフィードバック,改善の方策,そして修正そのものを提案できるようにする,つまりコミュニティに「参加」できるようにすることです。コミュニティへの参加はオープンソースソフトウェア開発の最も重要なファクタのひとつです。それを実現するためにCentOS Streamが存在します。詳細は「CentOS Streamとは」を参照してください。

具体的な例としては,ハイパースケーラーのような大規模システムについて検討する「CentOS HyperScale SIG」や車載Linuxを実現するための活動を行う「CentOS Automotive SIG」などは,プロダクトを利用されるユーザ自身が多く参加することを歓迎しています。また,Automotive SIGが2022年3月に発表したバイナリディストリビューション「CentOS Automotive Stream Distribution」は,まさにそのようなコミュニティ活動の成果として期待されます。

一方で,これまでCentOSを利用してきたユーザの声があることもよく理解しています。我々はこの方針の発表後,多くのCentOSユーザの声を聞いてきました。CentOSの移行先をどうしたらいいのか,迷われている方の声も多く耳にしています。その解決策のひとつとして,たとえばCERNとFermi Labのように,実際にCentOS Streamの検証を行い,CentOSのEOL後はCentOS StreamをメインのOSとして活用するという方針を出している組織も存在しています参考PDF⁠。もちろん,こうしたやり方がすべてのCentOSユーザのユースケースをカバーできるとは思っていませんが,今後はCentOS Streamのことを(CentOSユーザに)よく知ってもらう活動に注力していきたいと考えています。

RHELエコシステムにおけるCentOS Streamは,アップストリームのオープンソースプロジェクト「Fedora Linux」と,プロダクショングレードなOSであるRHELの間に位置づけられる。Fedoraで実装された先進的なイノベーションの中から,近い将来RHELに取り入れられる機能をRHELに先駆けてテストし,RHELのソースコードを開発する役割を担う。CentOS Stream開発者はRHELエンジニアと同じ開発コードに早期に触れることが可能になるほか,次のバージョンのリリース前にフィードバックを共有できる(画像はRed Hatのサイトから引用)

RHELエコシステムにおけるCentOS Streamは,アップストリームのオープンソースプロジェクト「Fedora Linux」と,プロダクショングレードなOSであるRHELの間に位置づけられる。Fedoraで実装された先進的なイノベーションの中から,近い将来RHELに取り入れられる機能をRHELに先駆けてテストし,RHELのソースコードを開発する役割を担う。CentOS Stream開発者はRHELエンジニアと同じ開発コードに早期に触れることが可能になるほか,次のバージョンのリリース前にフィードバックを共有できる(画像はRed Hatのサイトから引用)

――CentOSユーザをRHELに移行させるプランはとくに用意しないのでしょうか。

RH:これまで申し上げたように,CentOS Streamの目的はCentOSとRHELの開発を真にオープンなものにし,コミュニティに参加できるようにすることであって,CentOSユーザの方々を強制的にRHELに移行させるためではありませんし,短期的/長期的な収益のためでもありません。

しかしながら,CentOSプロジェクトの方針変更とは関係なく,企業におけるOSSの活用を推進するためにRed Hatが提供できるRHEL,そしてRed Hatサブスクリプションの価値については,さらに多くの人々に引き続き伝えていきたいと考えています。このRHELの価値に共感してくれるCentOSユーザの方々には,移行のためのファイナンス面およびテクニカル面での支援をすでに提供しています。たとえば,柔軟なお支払いの方法,教育機関に向けたアカデミックオファリング,CentOSからRHELへインプレースで変換できるconvert2rhelツールの提供などです。また,前述したDeveloper Subscription for Individualsの適用範囲の拡充などもすでに発表しています。グローバルでも国内でも,実際にCentOSからRHELへの移行を決定した顧客が存在しますので,⁠CentOS→RHELの移行に関して)相談してもらえれば,非常にうれしく思います。


Red Hatはそのミッションとして「To be the catalyst in communities of customers, contributors, and partners creating better technology the open source way(顧客,開発者,パートナー企業の架け橋となり,オープンソースのチカラですぐれたテクノロジを創り出す⁠⁠」を掲げています。そのミッションの中心にあるのはやはりRed Hat Enterprise Linuxであることを,あらためて実感しました。5月のRed Hat SummitでRHELに関するどんな画期的な発表が用意されているのか,引き続き注目していく必要がありそうです。

Red Hatがグローバル(上)と日本市場向けにそれぞれ掲げるミッション。⁠オープンソースのチカラ⁠の中心的存在は現在もこれからもRHEL

Red Hatがグローバル(上)と日本市場向けにそれぞれ掲げるミッション。”オープンソースのチカラ”の中心的存在は現在もこれからもRHEL

著者プロフィール

五味明子(ごみあきこ)

IT系の出版社で編集者としてキャリアを積んだ後,2011年からフリーランスライターに。フィールドワークはオープンソースやクラウドコンピューティング,データアナリティクスなどエンタープライズITが中心。海外カンファレンス取材多め。Blog 「G3 Enterprise」やTwitter(@g3akk),Facebookで日々IT情報を発信中。

北海道札幌市出身/東京都立大学経済学部卒。

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