「Adobe MAX Japan 2009」詳細レポート

1日目(その1)基調講演,RTMFPを使った未来のコミュニケーション,Space -スペース- FITC session

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3つのトレンド「Client+Cloud」「Social Computing」「Devices+Desktop」

その後,冒頭で示された3つのトレンド「Client+Cloud」⁠Social Computing」⁠Devices+Desktop」についての事例を順番に紹介した。

「Client+Cloud」

まず,⁠Client+Cloud」のキーワードに基づく,クラウドからアプリケーションに拡張できる機能の事例として,次のユーティリティ・アプリケーションを紹介した。

  • Tour de Flex様々なAdobe Flash Platformの機能を見ることができる。日本語にも対応。また,コンポーネントや機能についてサンプル及びソースを交え解説する。外部API,例えばAmazon,TwitterなどがAPIに組み込まれており,アプリケーション上でデモ操作することができる。
  • Adobe DeveloperBoxAdobeのWebサイト,Adobe Lab等のRSSフィードやPDFやコンポーネントリファレンスをアプリケーション上で閲覧,検索できる。
「Social Computing」

次にケビン氏は「ひとりひとりのエクスペリエンスから,もっと他人と繋がっていくエクスペリエンス⁠⁠,つまり「Social Computing」の事例として,次のアプリケーションを紹介した。

  • Adobe WaveAdobeが開発中のAIRアプリケーション。デスクトップノーティフィケーション機能を搭載。様々なサービスから,コメントや更新があった場合にAdobe Waveがデスクトップ上に通知してくれる。ケビン氏は同アプリについて「世界のWEBコンテンツと個人とを繋ぐ素晴らしい方法」と表現した。
  • ニコニコ動画株式会社ドワンゴが開発・運営しているサービス。ユーザーが投稿した動画に他のユーザーがコメントをリアルタイムに閲覧・付加できる。紹介ではケビン氏のインタビューが再生された。ケビン氏は再生中の動画とコメントを閲覧し,⁠なにかおもしろいことが書いてあるんでしょうね。私は読めませんが」と,会場に笑いを誘った。そして,⁠ソーシャルコンピューティングをこのように取り組むことで動画をよりよいものとしている好例」と評した。
「Devices+Desktop」

そしてケビン氏は「Devices+Desktop」を挙げ,⁠インターネットに接続できるデバイスはPCにとどまらない。特に携帯電話はPCを超えるものとなってきている」と,スライドでは情報端末における割合を示すグラフを示しながら言及し,⁠携帯電話がPCよりも大きな割合を占めているおり,新興市場では10億人の人が携帯電話からインターネットに繋いでいるという。このことからPCをインターネットデバイスとしてまったく使わない世代がでてくると考えており,大きな変革である。インタラクションのやり方を大きく換えるだろう。つまり我々はソフトウェアやアプリケーションのデザインを考え直さなければならない」と危惧した。

その上で,⁠そのためのアプローチは,まずモバイルデバイス・携帯電話の画面サイズにあわせ,コンテンツやアプリケーションのデザインをし,その後にもっと大きなスクリーンであるPCや他のデバイスに対応させるやり方がベストであり,順当である。これは大きなコンテンツを作る上での大きな課題である」と示した。

そして,⁠我々は2010年までに10億台の携帯端末にFlashを搭載させることを目標にしてきた。このプロジェクトは順調に進んでおり,目標達成は期待した以上に早い2009年内に実現できそうだ」と語った。

しかしながら,ケビン氏は「デバイス自体も10億を超えるため,これだけでは不十分であり,これらのテクノロジーをより前へ進めていかなければならない」と目標を新たにし,⁠弊社は,様々な素晴らしいパートナーと組んでOpen Screen Projectを提唱した。これは一貫した信頼できるエクスペリエンスを様々なスクリーンで提供,それらを皆様が開発し,端末に関わりなくエンドユーザーの方々に信頼のある形で提供できるようにするためのものだ。これによって様々な障壁が取り除かれた」と説明した。

写真7 Flashが搭載されてきた携帯端末数の推移。2009年中に10億台を達成予定

写真7 Flashが搭載されてきた携帯端末数の推移。2009年中に10億台を達成予定

docomoとFlashの進化,そしてAIRから見えてくる未来

これからの携帯端末のFlashはどうなっていくかをより具体的に説明するため,Adobeとパートナーシップを組む株式会社NTTドコモ(以下docomo)の永田清人氏が登壇し,docomoの携帯端末・Flashにおける今までの進化と未来を語った。

永田氏は「2003年に世界の携帯電話で初めてdocomoがFlash Lite1.0を搭載した。2005年にはAdobe Readerを,昨年にはFlash Videoを再生可能にした。Adobeとは長い間パートナーとして提携してきた。Adobeの技術,そしてクリエイター,デベロッパーの方々の協力によって前に凌ぐ心地よさを実現できた」と感謝の意を述べ,これからのモバイルサービスに関して「さまざまなエリアとの融合サービスを行うことを標語とし,テレビであろうがPCであろうが,PDAであろうが,携帯であろうが,すべてのユーザーエクスペリエンスを一緒にしていきたい。これはAdobeの推進しているOSPとぴったりマッチしている。よってこれからはAIRの技術を使ってこの新しい価値を実現するために取り組んでいく」と語った。

永田氏はAIRの技術を携帯端末に導入することによるメリットとして,次の点を挙げた。

  • AIRアプリとしてパッケージ化・オフラインでも利用できる。
  • FlashやJavaScriptで作成できるため,リッチな表現のコンテンツの拡大が期待できる。
  • デバイスの垣根を越えた共通のユーザー体験の提供ができる。

その具体的な未来背景として,オフラインでもローカルに保存された最低限の情報にアクセス・表示できるアプリや,インターネットと連動したストリーミングライブサービス。デバイスにとらわれないオンラインゲームなどが考えられることを示した。

そして,ウェディングの情報・結婚式のスケジュール管理から友人たちへの報告,ご祝儀のオンライン決済,結婚式までに至る共有アルバム機能を搭載した,統合ウェディングアプリを,ムービーと実際の端末・試作アプリを用いて紹介した。

写真8 携帯端末上で動作する,試作中の統合ウェディングアプリ

写真8 F携帯端末上で動作する,試作中の統合ウェディングアプリ

基調講演の最後に,ケビン氏は「非常にエキサイティングなデモンストレーションだった。未来のビジョンが見えたと思う。是非こうしたトレンドを皆さんも活用していただきたい。私たちも常に最先端を行き,docomo,その他の企業と協力しながらデスクトップ,デバイス,そしてインターネット間を超える新しい未来を作っていきたい」と述べた。

RTMFPを使った未来のコミュニケーション

13:00から,Room 7の会場では,新しいプロトコル「RTMFP」をテーマとしたセッションが行われた。オーガナイザーはAdobe テクニカルエバンジェリスト 太田禎一氏,Adobe アーキテクト 上条晃宏氏。

写真9 Adobe テクニカルエバンジェリスト 太田氏

写真9 Adobe テクニカルエバンジェリスト 太田氏

RTMPの制約

太田氏はまず,前世代プロトコルであるRTMPの背景を説明。Flash PlayerとFlash Media Serverが通信する手段であるTCP/IPと,ActionScript3.0で接続を行うNetConnection/NetStreamクラスに触れた後,それらを使用することで音声やビデオの配信,サーバー経由のメソッドコール,メッセージ配信ができることを説明した。

その後,様々な場面・問題に対応するために派生したRTMPT,RTMPS,RTMPE,RTMPTEを順に説明後,RTMPの問題点として,TCPベースであるためデータ欠損時には再送信しなければならないこと,遅延が避けられないこと,P2Pを構築してもNATと互換性がないこと等を指摘し,RTMFPはそれらに対応するために生まれてきたと話した。

次世代プロトコルRTMFP

次に,RTMFPはUDPベースであり,それによってパケットレベルでの直接アクセスが可能になり,NATおよびファイアーウォールとの互換性が高まったと解説。UDP上に高度なネットワークプロトコルスタックを実装することで,高速なセッション確立,複数の並列メディアフローメッセージ,多様な輻輳情報を利用でき,瞬間的な切断からも迅速に対応できると説明した。

さらにセキュア面でも言及。すべてのパケットはブロック暗号で暗号化され,接続の確立時にSSLライクな認証をサポートしたと高度なセキュリティを保持しながらも,開発者はActionScriptレベルでアクセス可能で,コードはRTMPとほぼ同様に動作するなど,柔軟性を強調した。

写真10 RTMFPのセキュリティ

写真10 RTMFPのセキュリティ

RTMFPの目玉であるP2P通信についても解説。メディアデータはFlash Media Serverをバイパスし,FlashPlayer/AIRクライアント同士で送受信されるため遅延時間が減少,サーバー側における負荷がほとんどないと語った。

そして,RTMFPにおけるダイレクトP2Pの仕組み,ActionScript APIのコード利用に関して解説したのち,デモコードとデモアプリケーションを披露。比較的簡単にP2P通信によってウェブカムのデータ送信が行えることを示した。

写真11 RTMFPを利用した,ダイレクトP2P通信の仕組み

写真11 RTMFPを利用した,ダイレクトP2P通信の仕組み

写真12 RTMFPを利用した,ダイレクトP2P通信のデモ

写真12 RTMFPを利用した,ダイレクトP2P通信のデモ

Stratus

RTMFPを実現する次期Flash Media Serverは公開未定ということで,現在RTMFPを試せるRTMFPランデブーサービスとして,Adobe Labsで公開しているStratusが紹介された。StratusはAdobe IDがあれば誰ででも使用することができ,Stratusを利用することでFlash Media Serverを配置せずに1:1,1:少数の音声ビデオアプリケーションを構築できる。

太田氏は将来の可能性として,⁠Flash Player 10,AIR 1.5は第一段階に過ぎない。P2P技術で1対多の大規模なユースケースに適用することも視野に入れているため,私も期待している」と語り,それを実現するための技術"Groups"について紹介した。さらに現時点では不透明だが,可能性としてローカルのファイルのP2Pアップロードついても示唆された。

最後に太田氏は,上条氏のブログでもRTMFPを取り上げる予定であるため,デベロッパーの方は是非ブックマークしてほしいと語った。

100行にも満たない比較的簡単なコードで,Stratusを利用したFlashによるP2P通信が構築できることは,著者としても驚嘆した。読者の方も,これを機会に試してみてはいかがだろうか。

著者プロフィール

加茂雄亮(かもゆうすけ)

株式会社ロクナナにて,ActionScriptを伴うFlashコンテンツや,AjaxコンテンツなどRIA開発に従事するフロントエンドエンジニア。テクニカルライターとしての一面を持ち,WEB・雑誌・書籍、媒体問わず執筆。また,イベントやセミナーでの講演など,精力的に活動している。

URLhttp://log.xingxx.com/
URLhttp://rokunana.com/