「Adobe MAX Japan 2009」詳細レポート

2日目(その1)グレッグ・ミシェリ氏による基調講演,中村勇吾氏「映像とプログラミング」,城戸雅行氏「[Flash]アイデアの実装:コントロールと最適化」

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映像とプログラミング

13:00のセッションには,tha ltd. 中村勇吾氏のセッションに参加した。中村氏は日本を代表するFlashの第一人者で,会場は開演前から長蛇の列ができ,キャンセル待ちまで発生する様相となった。

写真5 tha ltd. 中村勇吾氏

写真5 tha ltd. 中村勇吾氏

でもやっぱりアニメだろう

「僕がFlashをはじめたころは,イントロアニメ最盛期だった。ActionScriptを使うということはほぼ無いに等しい状態だった」と,中村氏は昔を振り返った。中村氏は当時,Flashをアニメーションを作るではなく,インターフェースや,サーバーサイドと連携するアプリケーションを作るツールとして模索していたという。しかし,最近では原点回帰し,⁠やっぱりアニメかな」と思うようになったという。

animaと駆動エンジン

中村氏によれば,アニメーションの語源はラテン語で霊魂を意味するanimaからきているという。そして,昨年大ヒットした「崖の上のポニョ」を例に挙げ,⁠鬼のような手仕事」と評し,⁠止まっている静止画のならびから活力を作り出すことがアニメーションである」と述べた。

中村氏は自身が制作したクレイアニメを映し,自身の考え方の一つとしてアルゴリズム駆動をあげ,⁠既存のアニメーション的なシーケンスを素材にして,プログラムの枠の中にはめていく」とし,⁠プログラムの中にアニメーションが組み込まれている」ともした。また別の映像では,⁠自然のジンクスをプログラムのファンクション・リソースとして捉える。情報としてはとりにくいが,映像の中にプログラミングを組み込む。これは先ほどとは逆の考え方だ」と語った。

ユニクロのUT LOOP ! の例では,⁠いろんな人の映像の断片を組み合わせてサンプリングみたいな物を作ろう」ということで,CMとタイアップした。⁠動きのまとまりは保持しながら,膨大な画像のデータベースを組み合わせたらたまたま映像として結実し,動いたみたいなもの」として,このようなロジックをDB(データベース)駆動と呼ばれる考え方を解説した。

写真6 UT LOOP !

写真6 UT LOOP !

さらに,昨年多いに話題になったモリサワ フォントパークでは,人力駆動(インターフェース内でフォーマット化された人力)として紹介。同サイトはユーザーが自由にモリサワのフォントを組み合わせて作品(モーションタイポグラフィ)を作り,他のユーザーがその過程をみて楽しむものだ。

この制作では,よりフォントパークのアニメーションが見ている方に楽しくなるように,ワンハンドインターフェース(マウス操作のみですべてのコントロールができる)を追求したという。

中村氏は「アニメーションとなったあとでおもしろくなるように,Illustratorのようにかっちりしたものよりかは,適当に動かしたら動いたぐらいの,適当なインターフェースのほうがいいと思う。ユーザーがその操作に慣れるように試行錯誤する過程が,アニメとしてはおもしろいんじゃないか」とし,⁠ユーザーの動きに制約を与えることで,動きを操作する。インターフェースデザインでは,使いやすさ・より便利なものを追求するのももちろんアリだが,アニメーションで考えた時に,人の動きをコントロールする。そのためのめんどくささっていうのもアリかな」と語る。⁠アニマっていうのは,結局ひとつじゃなくていろんな方向がありえる」

写真7 モリサワ フォントパーク

写真7 モリサワ フォントパーク

アニメーションは物語らなくたっていい

中村氏は,映像には物語がなくてはならないということではなく,それをわざと放棄し,曖昧だが成り立つアニメもあるのではないかと考えていたという。⁠音楽を例に挙げ,気持ちいい瞬間が長く続くものを制作したかった」と語った。

その一つが,時計だという。⁠なんとなくいっこいっこのこういう飽きる寸前に次に変わるっていう変化の連続を,淡々とみせていくっていうのもあるな」と述べ,以前制作したCAMCAMTIMEや「伝える」から「伝わる」戸崎啓一氏が携わったUNIQLOCKを例に挙げた。中村氏は「状況とか,感じだけを発したいときに時計は割と有効」としている。

写真8 CAMCAMTIME

写真8 CAMCAMTIME

グラフィックデザインの拡張

自身が手がけたグラフィックデザイナー佐藤可士和氏のサイトKasiwasato.comを例に挙げ,制作前,⁠そもそもホームページをつくって欲しいっていわれたんだけど,あまりにも有名だから,ホームページいらないんじゃないの?」というようになったと中村氏はいう。

「じゃあ,どうするかってなって,講演とかで呼ばれて自分の立ってる後ろで,イイカンジのものをってことで,つまり可士和さん専用のプレゼンツール」として制作したことを紹介。⁠彼の特徴である色遣い,色の戦略をスライドショーとして動かせば背景映像として持つんじゃないか」とコメントした。

写真9 Kasiwasato.com

写真8 Kasiwasato.com

また,スクリーンセーバーとして販売されているDROPCLOCKを紹介し,シズルショットとして高速で動く物体を非常にゆっくり動かすことで,ぼーっとグラフィックデザインとして見ることもでき,連続した映像としてみてもできるものとした。中村氏はグラフィックデザインの拡張について「止まっているものの延長としてグラフィックデザインの中にあるルール間を基にそのままプログラミングに落とし込む」と述べた。

写真10 DROPCLOCK

写真10 DROPCLOCK

呼び方と俯瞰

中村氏は,制作する前,自分が何を作るのか考えるのだという。⁠ホームページ/Webサイト/インターフェース/サービス/アプリケーション/ツール…Web上のものには様々な呼び方がある。それだけ多面性があるってことだけど,自分が作っている物を何と呼ぶか,その発想によってデザインが変わってくるし,重要だと思う」と述べた。

中村氏のセッションは制作事例に基づいた氏の考え方を垣間見ることのできる貴重なものだった。多くの人が,ここから何かを感じるというよりかは,何かを拾った,ヒントを得たという特殊な感覚に至ったと思う。このセッションで蒔かれたクリエイティブのシードをどう活かすかは,来場したクリエーターに委ねらているのだ。

著者プロフィール

加茂雄亮(かもゆうすけ)

株式会社ロクナナにて,ActionScriptを伴うFlashコンテンツや,AjaxコンテンツなどRIA開発に従事するフロントエンドエンジニア。テクニカルライターとしての一面を持ち,WEB・雑誌・書籍、媒体問わず執筆。また,イベントやセミナーでの講演など,精力的に活動している。

URLhttp://log.xingxx.com/
URLhttp://rokunana.com/