プロジェクト管理に関わるすべての方のための祭典「Backlog World」レポート

前編:日本から多彩なプロジェクト管理の知見が集まった1日~Backlog Worldセッションレポート

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ヤッホーブルーイングのチームづくりと熱狂的ファンづくり
原 謙太郎 / 株式会社ヤッホーブルーイング

⁠ビールが大好き!」と言うITエンジニアも多くいるのではないでしょうか。かくいう筆者もビールが大好きです。最近,日本国内でも注目を集めるクラフトビール業界から,株式会社ヤッホーブルーイング 原謙太郎氏が登壇し,⁠ヤッホーブルーイングのチームづくりと熱狂的ファンづくり」というタイトルからして魅力的な講演を行いました。

アツいビール愛とともに発表を行った株式会社ヤッホーブルーイング 原謙太郎氏

アツいビール愛とともに発表を行った株式会社ヤッホーブルーイング 原謙太郎氏

ヤッホーブルーイングは「よなよなエール」のメーカーとしても有名で,実際に呑んだことがある方も多いでしょう。原氏は自分が所属するチームのことを「ビールを愛する"知的な変わり者"集団」と表現します。

さて,今回の発表ではヤッホーブルーイングが国内全300社の中でどうやってシェアトップを獲得したのか,そして,13年連速増収増益を続けられているのかについて,虎の巻とも言えるノウハウを公開しました。

たとえば,ヤッホーブルーイングの主力商品の1つ『水曜日のネコ』の場合,リーダー戦略・フルラインナップ戦略などを行い,ファンづくりを行いました。この商品を含め,同社がつねにブランド開発で意識しているのが「明確なターゲティング」⁠コンセプト・引用ベネフィット⁠⁠,そして「デザインや名前はその表現手段として扱う」ということでした。

そして,魅力的な商品づくりの基盤となるのがチームづくりです。同社では「経営理念浸透への執着」を最も最重要課題として,チームづくりを行っていると言います。そのために,価値観の共有,フラットな議論,フラットな組織,コンセンサスによる意思決定など,優良なチームには欠かせない要素をしっかりと準備・整備しているのが特徴的です。

その中で特徴的なのがUD(ユニットディレクター)と呼ばれる,ユニットごとのリーダーの確立でした。こうした組織から新しいプロダクトが生まれ,そして「プロダクトにとって最も大切なのが"ファン"です」と原氏は力強くコメントします。

このファンをいかにして熱狂的なファンに変えるか,この一連の流れをYPP(よなよなピースプロジェクト)と命名して,さまざまな企画に取り組んでいます。たとえば,実際にファン同士のミーティングをつくったり,試飲イベントを開催したりと,ファンの気持ちを掴み,ファンの真理にあるロイヤリティを高めているそうです。

このように,チームづくりとファンづくり,この2輪があって今のヤッホーブルーイングがあると,同社ならではのユニークな戦略を聞くことができたセッションとなりました。

I BELIEVE THE POWER OF TEAMWORK!!
小久保 祐介 / 株式会社ヌーラボ

主催者であるヌーラボからは,2017年6月にジョインしたばかりの小久保祐介氏が,⁠I BELIEVE THE POWER OF TEAMWORK!!」という,まさにBacklog Worldの世界観を体現したタイトルのセッションを行いました。

昨年からヌーラバーとしてジョインした株式会社ヌーラボ 小久保祐介氏

昨年からヌーラバーとしてジョインした株式会社ヌーラボ 小久保祐介氏

小久保氏は現在名古屋に在住で,リモートワークを中心に(週2~3日⁠⁠,残りをヌーラボの事業所のある福岡・京都・東京で働いているとのこと。このような働き方を実現している点からも,ヌーラボ自身が働き方の多様性を受け入れている企業であることが伺えます。

小久保氏は入社後はBacklogのバグ修正や機能改善を担当するチームに配属され,そこでまず感じたのが「あまりうまくまわっていない雰囲気」だと述べました。その理由として,ヌーラボの成長とともにチームメンバーが増えた結果,コミュニケーション流量が増大し,そのため,プロジェクト管理が煩雑になり,また,コミュニケーションコストの増加を生み出し,円滑に回らなかったのではないかと分析しました。

そして,この状況に合わせた仕組みとマインドセットを整備することを目標に取り組んだとのこと。とくに,メンバー間で「知る」意識を高めるための仕組みづくりを強化し,その中には,⁠Product Ownerチーム」の結成や,Backlogメンバーを福岡本社に実際に集める機会として「Backlog Gathering」を企画するといったように,お互いを知る環境を順を追って整えました。その結果,とくに「メンバー同士,肩の力を抜いて話し合える和やかな雰囲気」を生み出せたという点がとくに印象的でした。

そして,改めてプロダクトの成功が最も大事だとし,そのためにはユーザ・チーム・企業,すべてが適正なバランスで関係を保つことが必要とし,セッションを締め括りました。

BacklogとTypetalkでリモートワークを快適にする方法
小賀 浩通 / 株式会社デジタルキューブ

株式会社デジタルキューブ代表取締役社長の小賀浩通氏は,リモートワークの快適化に焦点を当てた「BacklogとTypetalkでリモートワークを快適にする方法」について話しました。

快適なリモートワークを追求し続ける,株式会社デジタルキューブ代表取締役社長 小賀浩通氏

快適なリモートワークを追求し続ける,株式会社デジタルキューブ代表取締役社長 小賀浩通氏

デジタルキューブと言えば,WordPressを中心とした受託開発業務が有名ですが,現在,同社内では100%リモートワークを実現しているとのこと。ここ10年の間に多くのIT企業が実践してきているリモートワークですが,同社は前述の働き方改革に注目が集まる前の早い段階から実践してきています。

小賀氏は「10年分の失敗を一挙公開します!」と,2006年創業時からの同社での働き方について紹介していきました。現在のBacklog+Typetalkのスタイルになったのは2013年からで,その前の2011年頃からBacklog+Gtalkという,⁠プロジェクト管理ツール」「チャットツール」の原型での働き方が整備されたとのこと。ここに至った経緯は,円滑なコミュニケーションに加えて,さまざまな情報の記録(ログ収集と共有)など,業務の目的に合わせた結果だと小賀氏は説明しました。

そして,Backlogが持つ高いタスク管理機能と,Typetalkが持つ流動性の高い情報収集機能の2つを合わせやすかったことが,この2つのツールを選んだ理由だと述べました。

今回のセッションでは,失敗を含め同社がこれまで取り組んできた働き方およびワークフローの整備について赤裸々に公開されました。こうした知見のシェアこそが,このイベントの本質でもあり,また,参加者にとって大変役立ったのではないでしょうか。

レガシーな新聞社が本気でテクノロジーメディアを目指す開発プロジェクト
西馬 一郎 / 株式会社日本経済新聞社

Backlog Worldには,IT企業だけが登壇したわけではありません。その1つが日本経済新聞社です。同社のデジタル事業BtoCユニットに所属する西馬一郎氏は,⁠レガシーな新聞社が本気でテクノロジーメディアを目指す開発プロジェクト」と題し,日本経済新聞(日経)が取り組んだデジタル化の動きについて,舞台裏から紹介しました。

株式会社日本経済新聞社デジタル事業BtoCユニットに所属する西馬一郎氏は同社のデジタル化・テクノロジー化について公開した

株式会社日本経済新聞社デジタル事業BtoCユニットに所属する西馬一郎氏は同社のデジタル化・テクノロジー化について公開した

日経と言えば,140年の歴史を持つ新聞です。その伝統的なメディア企業がなぜテクノロジーメディアを目指すのか,その理由の1つに西馬氏は「外部環境の変化」を挙げました。この25年のあいだに,国内外問わず,日常生活へのデジタル化,そして,インフラとしてのインターネットが整備されたこと,それにどのように対応するかが,テクノロジーメディアを目指した理由になったと言うわけです。

最初に行ったのは日経電子版サービス開発で,開発をするにあたって,開発力や開発スピードを向上することを目指し,そのために組織や開発体制を変更したと言います。具体的な開発には,コード管理やテストの自動化,また,そのコミュニケーションインフラとして,Backlog/Slack/Qiita:Teamも導入したそうです。

⁠開発基盤を整備した結果,日経電子版サイトの表示速度改善や誌面ビューアのサーバレスなど,さまざまな部分でテクノロジーの恩恵を受けた成果が見えてきた」と,開発担当者ならではのコメントを述べました。

また,Backlogもさまざまなシーンで利用しており,とくに印象的だったのが,電子版プロモーション案件での利用事例でした。この事例では「メンバー間の情報共有ツールとして活用されているのですが,エンジニアなどの技術職以外にも浸透し始めている」と,レガシー企業の中に,ICT化が着実に目に見える形で現れている点に驚きを覚えます。

一方で,まだすべてをBacklogで管理しきれておらず,Excelなどこれまで活用していたツールと併用するシーンがあるため,コミュニケーションが鈍ってしまうなど,今後の課題についても触れながら発表を終了しました。

著者プロフィール

橋本正徳(はしもとまさのり)

1976年福岡県生まれ。福岡県立早良高等学校を卒業後上京し,飲食業に携わる。劇団主催や,クラブミュージックのライブ演奏なども経験。1998年,福岡に戻り,父親の家業である建築業に携わる。2001年,プログラマーに転身。2004年,福岡にて株式会社ヌーラボを設立し,代表取締役に就任。現在,福岡,東京,京都,シンガポール,ニューヨーク,アムステルダムに拠点を持ち,世界展開に向けてコツコツ積み上げ中。


五十川慈

1989年福岡県生まれ。Meggyと呼ばれている。株式会社ヌーラボの広報兼コミュニティマネージャーとして,会社とプロダクトの「ファン作り」に取り組む。九州大学卒業後5年間,東京のスタートアップ企業で営業や人事に従事し,2017年にヌーラボ福岡本社にUターン転職。お菓子作りが好きで,将来は企業の人として働きながらも,実店舗を持たないお菓子屋さんとしても仕事をしたいと考えている。


馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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