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#3 小阪淳さん

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自分はコレだ,“決めない”能力

小:最近思ってるのは,昔に比べると「基礎的能力」っていう,⁠何かをやるために学ばなきゃいけない⁠とか⁠習得しなきゃいけない技術⁠ってのが,減ってる気がするんですよね。

それは,良くもあれば悪くもあって,例えば,音楽をやりたいってなったら,昔だったら⁠楽器が弾けないとダメ⁠⁠,⁠譜面読めないとダメ⁠とかあったのが,今だったら楽器できなくったって,譜面読めなくったって音楽が作れる。

それこそ音を集めてきてコラージュしたりとか,色んな音楽の作り方もありますし。

自分が何かをやるために必要な技術が減ってるから,逆に,自分が今までやったことのないチャレンジをする事がすごい楽になってるんですよね。

良いものができるかどうかは,また別ですよ。

でも,敷居が下がる事によって,違うジャンルの人が入ってくるのが,そのジャンルにとってすごく刺激になったりするもんですよね。

─⁠─そうですね。思います。思います。

小:音楽やってた人がFlashに目覚めて,とかね。

─⁠─面白いですよね。Flash界でもずっとFlashだけやってた人ばかりじゃなく「わー,色んな人が入って来た」みたいな状況になってくると。

小:いいんじゃないですか。やっぱり競争あっての進化ですから。

─⁠─逆にFlashやってた人が,リアルに動くものに手を出してみようとか,もっとアート寄りな作品を作ってみたい!とか,そういう人もいっぱい出てきますね。

小:ね。そうなってくるのと難しいのは,これで食ってくっていうのが言いにくくなるんですよ。

─⁠─あぁ,そうですね。なるほど。⁠専門」っていうのがだんだん薄れて行く。

小:そうそう。その能力を持ってるからといって食っては行けなくなる(笑)

“自分にとって必要な能力⁠とか,⁠ものの見方⁠っていうのを,自分で選ばなくちゃいけなくなって来ている。

一つ武器になるのは,⁠何かの能力⁠というよりは⁠フットワークの軽さ⁠っていうのがある思うんです。⁠自分はこうだー!⁠って決めちゃうと,潰しが効かないじゃないですか。

だから,⁠決めないっていう能力⁠は結構使えるぞと。⁠笑)

自分はデザイナーとか自分はアーティストとか,って,実際,仕事に入ったら違う立場の方がいい場合ってありますよね。

それが一番大きかったのが,『宇宙図2007』っていうポスターを制作した時です。

小:僕の場合,『宇宙図』を作る時の僕の⁠デザイナーとして⁠の仕事って,全体の2~3割なんです。後は⁠内容を考える⁠仕事だったんですよね。

僕が科学的なコンテンツの内容に対して云々を言うのは,本来なら越権行為というか「オマエにそんな事求められてない」ということだと思います。

でも,僕は⁠プロの素人⁠なんだって,言い切ってみたんです(笑)

心の中で, ⁠僕に分からない事は書かない!僕に分かる事だけを書きます!」みたいなことを思ってて。

─⁠─すごいです。

小:そして,色々調べて行くと,色々な事が分かって来て,実際に掲載する文章も僕が元原稿を書いたりする流れになったんですよね。

そんな立場も仕事としてアリなんだっていう発見が大きくて。

じゃ,僕はあんまりデザイナーとか名乗らないで仕事をする方が良いんじゃないかな,と最近はそういう風に思ってるんですよね。

─⁠─トークの時に見せていただいた⁠対話するためのFlash⁠では,専門家の方と対話をし,⁠宇宙図』の元となる考えを理解するという目的で作られていますよね。

小:そうそう。やりとりしている間に⁠実はそんなに難しい話をしてるんじゃない⁠ってことが分かって来たんですよね。

一般に配るものですから,そんな難しい事やったってしょうがない。

小:で,良かったのは⁠専門家⁠って言われる人たちと話す時に,対面して話すと専門用語を言われた時に僕が知らなかったらそこで対話が止まってしまう。

テクニカルな単語をボンボン出されると,全然コミュニケーションできなくなる。

ところが,メーリングリストなどでやり取りする時は,専門用語が来てから調べてメールを出せる。自分の知識のなさをカバーできちゃうんですよね。

すると,さっきの基礎的能力っていうのが,どこのジャンルに行ってもそれほど問われなくなったのと同じように,今度は専門の人たちと対等に喋ったりする事がある程度可能になってくるんです。

小:そういうことが,自分にとって,フットワークの軽さを維持するノウハウになってくるわけですね。

つまり,なるべく人に会わないと!ますます引きこもって行くみたいな(笑)

─⁠─そうですよね。分からない事もすぐ調べて,理解して,組み立てて,返事を返すっていうのも能力ですもんね。

小:いちいち説明を求めるよりも,この人に聞くべき事だけを聞くっていうやり取りの省略化もできますから。色んな意味で自分の立場を身軽にする道具がネットによって提供されているんだなっていうのをつくづく思いますね。多分,10年前だったらそんなことありえないです。

アトリエの様子

小阪さん

著者プロフィール

BOW

ボストーク株式会社に寄生するプロジェクトチームの一つ。
石崎奈緒子,高橋真希子,吉川佳一の3人により2008年10月よりスタート。主にwebを中心に活動中。

URLhttp://b-o-w.jp/