ESEC2008(第11回組込みシステム開発技術展)Photoレポート

ESEC2008(第11回組込みシステム開発技術展)Photoレポート(最終日)

最終日も2日目と同様に初夏を思わせる陽気の中、多くの来場者が詰めかけていました。ここでは、会期を通して、来場者からどのような反応があったのかなどを振り返りながら紹介します。

ESEC会場風景
ESEC会場風景

Google Androidデモ展示

エスマッテクのAndroidデモ
エスマッテクのAndroidデモ

昨年(2007年)の11月に米Google社が発表した携帯電話向けのソフトウェア開発環境・プラットフォームの「Google Android」を手がかりに会場内をまわると、数社ほどデモ展示がされていました。

日本システムウェアエスマテックでは、これからAndroidの導入を検討する企業に向けてのサポートサービスを掲げていました。また、アットマークテクノでは、デモ機に多くの人が足をとめ、その注目の高さをうかがうことができました。

アットマークテクノのAndroidデモ
アットマークテクノのAndroidデモ

Androidは、そのオープンなアーキテクチャ・思想によって、携帯電話向けでのプラットフォームにとどまらず、OA機器や車載システムなどでの応用が期待できるそうで、会期中にもそういった業種の来場者から多くの問い合わせがあったとのこと。今後が楽しみな技術です。

グレープシステム

組込み機器においても、マルチプロセッサ/マルチコアに対応したシステムが普及していると聞きますが、実際にはどうなのでしょうか? グレープシステムでは、SMP(Symmetric Multi Processor)対応のリアルタイムOS「ThreadX-μITRON/SMP」を展示しており、SMP型プロセッサによるシステムを検討している研究部門や商品企画担当者からの問い合わせが多かったようです。なお、同OSではシングルコア版のプログラムと同一のコードとして記述できるので、それまでの概念や開発済みのライブラリなどをそのまま活用できます。

グレープシステムのブース
グレープシステムのブース

TOPPERSプロジェクト

TOPPERSプロジェクトのブースでは、TOPPERS/ASPカーネルの一般公開を記念して参加企業によるASPカーネル対応製品が発表されていました。そのうち東海ソフトでは、ASPカーネルに対応したCAN通信ミドルウェアをデモ機とともに紹介していました。以下の写真にあるのは、動作環境が左から「TOPPERS/ASP」⁠NonOS」⁠TOPPERS/OSEK」で、3つとも同じアプリで動いています。これはOSEK/VDX規格に基づいて部品かされているためシステム構成に応じた利用が可能になるそうです。

CAN通信ミドルウェアをデモ
CAN通信ミドルウェアをデモ

富士通グループ

今年の3月に新たに設立された富士通マイクロエレクトロニクスでは、ARM1176プロトライピングキットを展示していました。同キットはARM社製CPUコアのARM1176JZF-S評価用LSIとユーザロジック評価用FPGAが搭載されています。そのためARM1176JZF-S搭載SoC(System On a Chip)の完成前に機能評価やドライバ開発を行うことで開発期間を短縮できます。

ARM1176プロトライピングキット
ARM1176プロトライピングキット

このほか、富士通ソフトウェア事業本部では、組込みソフトウェアのミドルウェア、サービス、ソリューションから構成されるブランドInspiriumを前面に打ち出して紹介されていました。同製品ラインナップ強化として、先日発表があった広辞苑クラスの大規模電子辞書の全文検索を実現する電子辞書ソフト「Inspirium 辞書検索ライブラリ V1.0」やデータ放送の受信・表示用「BMLブラウザ」などもデモ機が展示されていました。

Inspirium BMLブラウザ
Inspirium BMLブラウザ

テレロジック

モデル駆動型組込みシステム開発環境「Rhapsody」にEclipseプラグインなどの新たな機能拡張をした新バージョンを、5月14日に発表したテレロジックでは、ロボットアームのシーケンス図トレースがブース中央で展示されていました。実際にロボットアームの動作によってシーケンス図がトレースされている様子は、UMLでビジュアルに組込み製品を開発することができることを実感できるものでした。なお、そのほかの新機能として、よりSysML機能を活用できるようになり、複雑なデータのモデリングやトレードオフ解析を実行できるようになったそうです。

シーケンス図トレースのデモ
シーケンス図トレースのデモ

リネオソリューションズ

組込みLinux「Lineo uLinux」と開発環境「uLinux ELITE」を提供するリネオソリューションズ(以下、リネオ)のブースでは、4月23日に戦略的提携を発表した米Timesys社のロゴもリネオのロゴと同じくらいの大きさで表示されていました(参考:リネオと米国Timesysが戦略的提携、組込みLinuxソリューション提供を共同展開⁠。

Timesys社CEOのAtul Bansal氏(左)とリネオソリューションズ代表取締役社長の二木健至氏(右)
Timesys社CEOのAtul Bansal氏(左)とリネオソリューションズ代表取締役社長の二木健至氏(右)

提携の具体的内容とは、Timesys社の組込みLinux開発のためのWebサービス「LinuxLink」をリネオが、2008年6月1日、日本で提供開始するというものです。この提携にいたった経緯などについて、発表に合わせて来日していたTimesys社CEOのAtul Bansal氏は、⁠日本は私たちのビジネス戦略上、非常に重要でエキサイティングなマーケットです。そして、技術開発力などお客様からの信頼性が高いリネオが日本のマーケットでLinuxLinkを提供することによって、より一層日本のユーザの要望に沿ったソリューションとなることを確信しています」と語ってくれました。また、リネオ代表取締役社長の二木氏もエンジニアに向けて次のようにまとめてくれました。⁠今回のサービスはサブスクリプションでお求めやすい形で提供させていただきます。エンジニアの方にはぜひTimeSysの、そして今後はリネオから提供するLinuxLinkサイトにアクセスしてください⁠⁠。

LinuxLink by Timesys

LinuxLink by Timesys

組込みLinuxはライブラリやデバイスドライバが充実することで、オープンなLinuxは今後も伸びると見られています。ぜひ注目していきたいです。

まとめ

ESEC2008の3日間を駆け足での紹介でしたが、いかがだったでしょうか? ESECだけでも531社、同時開催も含めると1551社が出展するイベントですので、ほんの一部分しか紹介できないのが残念です。また、目新しく、派手な技術などが目白押しというわけではありませんでしたが、逆に既存の技術をうまく組み合わせて応用させたものがあったりと、発見の多い3日間でした。

なお、今年はゴールデンウィーク(GW)明けからちょうど1週間後の開催でした。そのため、各社ではいろいろと準備が大変だったそうです。昨年「FlexRay搭載電動カート」を展示していたヴィッツでは、⁠機能安全、適応可能!!⁠と書かれた札とセンサが埋め込まれた巨大なジオラマをGW返上で作り込んだそうです(来年は2009年5月13日(水⁠⁠~5月15日(金)の予定ですので、今年よりもさらにGW明けの準備期間が短くなりますね⁠⁠。

ヴィッツのブース
ヴィッツのブース

みなさんも、情報収集だけでなく、趣向を凝らした各社のブースを見学するのも楽しいですので、ぜひ足を運んでみてください。

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