ジオロケーション時代の幕開け――ジオロケーション・カンファレンスレポート

第2回注目のジオロケーションテクノロジー――Google Fusion Tables、OpenStreetMap、MapQuestProgram

今回は、Google Geo Developer Advocate、Mano Marks氏、OpenStreetMapに関わるSteve&Hurricane Coastご夫妻のセッションをレポートします。

(本文)

Easy Mapping in the Cloud: New features in the Google Maps API and Fusion Tables(クラウドで簡単にマッピング:Google Maps APIの新機能とFusion Tables

Google Geo Developer Advocate Mano Marks 氏
Google Geo Developer Advocate Mano Marks 氏

Google Geo Developer Advocateを務めるMano Marks氏は、その肩書のとおり、Googleのジオロケーション技術の専門家です。冒頭でGoogle Maps APIを紹介した後、今、注目を集めるGoogle Fusion Tablesに関する解説を始めました。

Google Fusion Tables。KMLなどのデータを利用してさまざまな地図の生成が行える
Google Fusion Tables。KMLなどのデータを利用してさまざまな地図の生成が行える

Google Fusion Tables誕生の経緯

「私を含め、エンジニアにとってGoogle Maps APIはとても扱いやすく、ジオロケーション開発をするための技術として最適と思っていました。そのため、エンジニア以外のユーザにも当然のように使ってもらえると思っていたのですが、エンジニア以外の人間にとっては扱いやすいどころか難しいということがわかりました。そこで、どうすればいいかを考え、導き出されたのが、Microsoft Excelをはじめとした⁠スプレッドシート⁠と同じ操作方法にすることでした。そして生まれたのが、この⁠Google Fusion Tables⁠です」と、Mano氏はGoogle Fusion Tables誕生の経緯を述べました。

この説明にもあるように、Google Fusion Tablesは、表形式のデータを準備すればリッチな表現の地図を作成できる技術です。操作方法は非常に簡単で、必要なデータを用意してアップデートした後、ビジュアライズボタンをクリックすれば完了となります。

日本地図を作成したところ。人口の多さによって色を変えている
日本地図を作成したところ。人口の多さによって色を変えている
Storyline(筋書き)の地図化。この例では、ある地域の地図に対してニュースを紐付けている。このように、その場所に対しての筋書きを盛り込むこともできる
Storyline(筋書き)の地図化。この例では、ある地域の地図に対してニュースを紐付けている。このように、その場所に対しての筋書きを盛り込むこともできる

エンジニアのためのGoogle Fusion Tables

このように、ユーザ視点で見て非常に扱いやすいGoogle Fusion Tablesですが、⁠エンジニアにとっても大変便利だ」とMano氏は述べます。

Google Fusion Tablesの扱い方は、大きく、

  • Read-only(読み込み)
  • Write(書き込み)

の2つに分けることができ、Read-only(公開地図)では、Google Maps APIをFusion Tablesレイヤで利用したり、HTTP GETをSQLライクのクエリで利用することができます。一方の、Write(認証が必要な地図)では、クライアントライブラリや、OpenDataKitやApp Inventorを使ってデータコレクションを実現できます。このように、さまざまなパラメータをコントロールできるため、非常に柔軟なカスタマイズができるのが、Google Fusion Tablesの特徴です。

Google Fusion Tablesは、サイズ制限やクエリ制限のある無償版に加えて、制限を外せる有償版アカウントも用意されています。

Mapping the Future

Open Street Map Founder/Microsoft Bing Mobile Principal Architect Steve Coast 氏
Open Street Map Founder/Microsoft Bing Mobile Principal Architect Steve Coast 氏

続いて、OpenStreetMap(以降OSM)の創始者でもあり、現在、Microsoftに所属しているSteve Coast氏が登壇し、同氏が取り組むOpenStreetMap、そしてこれからの地図技術の展望について発表を行いました。

「無償」が持つ2つの意味

Steve氏は2004年にOSMを設立した後、2008年にはCloudMadeを共同で設立、そして、2010年にMicrosoftへjoinしています。⁠OSMで考えているのは、最新の地図を、無償で提供することです。ここで言う無償というのは、ユーザが無償で使えること、⁠サードベンダが)無償ライセンスで利用できること、この2つの意味を持っています」と、OSMが目指す「無償」の地図について改めて説明しました。ちなみに、OSMはCreative Commons Attribution-ShareAlike 2.0 licenseの下、提供されています。

OODA Loopの採用が成功のきっかけ

現在、たくさんの国の人が参加するプロジェクトになったOSMがなぜ成功したのかについて、⁠OODA Loopを採用しているからだ」と、Steve氏は述べます。OODA Loopとはアメリカ空軍のJohn Boyd大佐によって提唱された意思決定の考え方で、O(Observe:監視⁠⁠、O(Orient:判断⁠⁠、D(Decide:決定⁠⁠、A(Act:行動)を1つのサイクルとして、このサイクルを繰り返すことで健全な意思決定を実現できるとするものです。

「地図というのは日々変化し、最新のものにするためには常に見ている必要があります。これは、まさにOODA Loopと同じで、⁠更新)頻度を多く、その感覚を短くすることで成功につながるのです」と、地図の特徴が、OODA Loopに当てはまることを解説しました。Steve氏によれば、現在のOSMは4~10分の頻度で地図がアップデートされ、つねに現実に近いものに近づくように取り組まれているとのことです。

また、Steve氏は無償とオープンのトレードオフにも触れ、このバランスは「一貫性をどこまで持たせるかによる」と独自の見解を示しました。

時間と出費のグラフ。OSMは時間および金銭的コストが一番小さく、ついでMM(MapMaker⁠⁠、そして、PMV(Private Map Vendor)が最も時間および金銭的コストがかかるとしている
時間と出費のグラフ。OSMは時間および金銭的コストが一番小さく、ついでMM(MapMaker)、そして、PMV(Private Map Vendor)が最も時間および金銭的コストがかかるとしている

What is MapQuest Open?

OpenStreetMap Community Advocate / MapQuestProgram Manager for the Open Initiative Hurricane Coast 氏
OpenStreetMap Community Advocate / MapQuestProgram Manager for the Open Initiative Hurricane Coast 氏

夫のSteve氏に続いて登場したのが、Hurricane Coast氏。Hurricane氏は、OpenStreetMap Community Advocateを務める他、MapQuestProgram Manager for the Open Initiativeでもあります。MapQuest Openは、OpenStreetMapを利用したオープンソース版の地図サイトです。

MapQuest Open日本語版公開!

Hurricane氏は冒頭で「本日、MapQuest Openの日本語版、open.mapquest.jpを公開します」と発表し、会場から大きな歓声が上がりました。先に発表されたYahoo! JAPANからOSMへの地図資産の提供に続き、本日2つ目の大きな発表となりました。

open.mapquest.jpの公開
open.mapquest.jpの公開

MapQuest Openの特徴は、OSMの地図データを利用しながら、さまざまなマップタイルやスタイルを利用することで豊富な描画が行える他、地図の標高を含めた描画が行える点です。また、MapQuest Open上に、イベントやMeet-Upグループなどの情報を付加することで、イベント開催案内などを自由に手軽につくることができます。

豊富な開発キット

デベロッパー向けには、JavaScript SDKやAS3/Flex SDKの開発キットが用意されている他、Directions/Geocoding/Search/Static Map/TrafficのWebサービスAPIが用意されており、自由に利用することが可能です。

MapQuest Openの特徴の1つは、豊富な開発キットが用意されている点
MapQuest Openの特徴の1つは、豊富な開発キットが用意されている点

ビールと酒、そして地図、この3つで楽しくなる!

先ほど紹介したように、MapQuest OpenではMeet-Upグループを作成できます。これについてHarricane氏は「人と人が集まってクリエイトすることはとても重要です。MapQuest OpenでMeet-Upグループをつくり、そこにビールと酒、そして地図、この3つがあれば皆楽しくなります」と、フェイス・トゥ・フェイスで集まって時間と場所を共有する楽しさ、MapQuest Openがそれを実現できることを伝え、セッションを締めくくりました。

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