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「言葉本来の力を活かしたインターフェースを作りたかった」─Ubiquity開発者Aza Raskin氏インタビュー

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セキュリティについて

―― 近年,Web上のサービスでユーザが意図しない情報が公開設定になっているケースがありますが,このような問題を防止する方法はあるのでしょうか。

Web上のサービスの普及により,一般ユーザの利用も増えてきていますが,情報が公開設定になっていることを知らずにプライベートな情報を書き込んでしまうケースが目立ちます。家庭訪問のために生徒の自宅の住所をGoogleマップに登録していて,それが誰からもアクセスできる状態になっていた例などを例に挙げて,それを防止するようなインターフェースやしくみについて質問しました。

Raskin:

これは,デフォルト設定の持つ怖さだと思います。セキュアではない設定がデフォルトとなっている場合,ほとんどのユーザはセキュアではない状態で利用することになります。

では,なぜ「情報を公開する」というセキュアではない状態がデフォルトになっているかというと,そのサービスを運営する事業者がユーザを増やしたいからに他なりません。

一方,MozillaはNPOですので,ユーザを増やすことが最優先の目標ではありません。ユーザの本当の利益を第一に考えることができます。

たとえば,Mozilla Labsで開発している「Weave」は,Mozillaが運営するサーバにユーザの情報を蓄積し,タブの状態やパスワード,履歴,ブックマークなど,どこからでも同じものを利用できるのですが,これらのデータはMozillaのサーバに保存されるまでに2回暗号化されます。私たちは中身を見ることはできません。また,どの情報をMozillaに送るのかをユーザ自身が決めることができます。

もちろん,自分から共有する設定を行ったときは別ですが,現在の多くのWeb上のサービスが行っている「無理矢理公開させる状態」はおかしいのです。

私が今「Webが壊れている」と思います。サービスの中には,コンタクトリストにアクセスするためにGoogleアカウントのパスワードを要求するものもあるのです。これは,コンビニでお金を払うときに,店員に家のカギを渡してお金を取りに行ってもらうようなもので,不必要な情報にまでアクセスを許してしまっています。これはあってはならないことで,本来はコンタクトリストだけにアクセスすることをユーザが許可するべきなのです。

その他

―― あなたが優れていると感じるインターフェースを教えてください。

Raskin:

先ほども例として出しましたが,Googleカレンダーの「Quick Add⁠⁠,「30 Boxes」(自然文入力により予定を追加できるカレンダーサービス⁠⁠,あと最近見つけたのが「Social Helix」です。

そう言うと,Aza Raskin氏は実際にデモしてくれました。Social Helixもカレンダーサービスなのですが,画面上でマウスをくるくると回すと拡大/縮小され,年単位/月単位など直感的に閲覧することができました。

―― PC以外で優れたインターフェースと感じるものはありますか?

Raskin:

Samsungのデジタルカメラ「NV10」です。ポケットに入るくらいコンパクトなのですが,リアルタイムに撮影できるくらい優れたインターフェースを持っています。

液晶画面の側にボタンが直線に配置されていて,これを指でなぞって操作することができるのです。これがタッチパネルよりも優れている点は,ボタンの感触を手で感じながら操作できることです。

Samsung NV10。
操作の際,ユーザに「感触」としてフィードバックがあることの重要性を強調していました。

Samsung NV10。