第3回 戦略的Webマーケティングセミナー開催

Web視点からのコーポレートマーケティング ―第3回戦略的Webマーケティングセミナーレポート(前編)

2010年3月2日、株式会社技術評論社主催「第3回戦略的Webマーケティングセミナー」が開催されました。今回は「Web視点からのコーポレートマーケティング」にフォーカスし、コーポレートサイトの運用に関するセッションが行われました。ここでは、その模様についてお届けします。

●基調講演

Amazon Data Services Japan株式会社

URLhttp://aws.amazon.com/
株式会社ビジネス・アーキテクツ
URLhttp://www.b-architects.com/
●オートノミーセッション
URLhttp://www.interwoven.co.jp/
●日本IBMセッション
URLhttp://www-06.ibm.com/software/jp/rational/products/test/policytester/index.html
●ディバータセッション
URLhttp://www.homepagine.com/

基調講演
コストだけでないAmazon Web Servicesのメリット~Panasonic ecoideasnetに見るクラウド最新活用ノウハウ

AWSを選択することによる変化

Amazon Data Services Japan株式会社
マーケティングマネージャー小島英揮氏
Amazon Data Services Japan株式会社マーケティングマネージャー小島英揮氏

「第3回戦略的Webマーケティングセミナー」のトップは、Amazon Data Services Japan株式会社マーケティングマネージャーの小島英揮氏、株式会社ビジネス・アーキテクツ取締役、シニア・アートディレクターの青木誠氏、テクニカルディレクターの後藤和貴氏による基調講演「コストだけでないAmazon Web Servicesのメリット~Panasonic ecoideasnetに見るクラウド最新活用ノウハウ~」です。自社でインフラを持たないクラウドコンピューティングが注目を集めている中、Amazonが提供するクラウドサービス「Amazon Web Services(AWS⁠⁠」の概要と、AWSを導入したPanasonic ecoideasnetの事例を元に活用ノウハウが紹介されました。

小島氏は、AWSはアマゾンの高度なEコマ―スサイトの運用ノウハウとテクノロジーを、オンデマンドで使えるようにしたサービスであると説明します。完全従量制で低コストに運用ができる点が大きな特徴で、初期投資が必要なく、トラフィックに連動して使用するサーバ容量で課金されるので、キャッシュフロー経営に効果が大きいとのことです。

システムが仮想化環境で提供されるので、従来の開発環境がそのまま生かせ、ハード障害が発生してもコンテンツに与える影響がほとんどないのも特徴のひとつです。AWSはインフラ部分に気をとられることなく、本来注力するべき部分に時間を配分できるサービスであることを強調しました。

株式会社ビジネス・アーキテクツ取締役
シニア・アートディレクター青木誠氏
株式会社ビジネス・アーキテクツ取締役,シニア・アートディレクター青木誠氏

続いて青木氏より、Panasonic ecoideasnetのサイトコンセプトの解説があり、スモールスタート、初期投資を抑えて無駄のない拡張を行うなどのプロジェクト要件が説明されました。例としてFacebook、Twitter、Googleのアカウント連携し、利用者の個人情報を保持せずに、利用者ごとに実績などの情報を記録するなどの施策が紹介されました。

「Webサービスと連携を行うためのシステム構築は、企業の自社ネットワークへ接続するリスクを回避する必要があり、外部サイトでの構築が必須だった」と青木氏は説明します。AWSを選択した結果、インフラへの投資とシステム開発の効率化され、インフラ構築に必要な時間とコストを抑えることができたそうです。

テクニカルディレクタの後藤和貴氏
テクニカルディレクタの後藤和貴氏

後藤氏はAWSを導入して変わった点として、サーバの管理が容易であることを挙げました。今まではアクセス数に応じた対応ができないことがあったが、クラウドは要求されるアクセス数に応じた対応ができ、サーバを管理するまでのAPIが公開されているので、AWSで提供されていないサービスでも独自に組み込むことができることが大きなポイントであると述べました。

AWSを導入するリスクについて、関係者の理解を得るには、事例が少ないため説得が難しい側面もあることを指摘しました。また、基本従量課金で費用が完全に確定するのが月末のため、予算計画の見通しが難しい点があること。決済方法がクレジットカードのみなど、決済に関する承認が難しい可能性があることも指摘しました。

最後に青木氏が、⁠AWSの選択は物理的な制約に対するリスクを軽減でき、インフラが資産ではなく従量型サービスになる。スモールスタートして、そのときの条件に合わせて大きく成長させていくというプロジェクト要件に合致していたと考えている」と語り、基調講演を締めくくりました。

当日のプレゼン資料はこちらからダウンロードできます。
基調講演の資料ダウンロード

セッション1
次世代CMS発表、意味ベースマーケティングで意思決定を支援!

意味ベースマーケティングで最適なコンテンツを提供する

オートノミー株式会社オートノミー・インターウォーブン
第二営業部 部長・鈴木望氏
オートノミー株式会社オートノミー・インターウォーブン 第二営業部 部長・鈴木望氏

基調講演に続くセッションは「次世代CMS発表、意味ベースマーケティングで意思決定を支援!」をテーマに、オートノミー株式会社オートノミー・インターウォーブン 第二営業部 部長・鈴木望氏からお話をいただきました。

CMSで使用するテンプレートは、単純に製作を効率化するツールではなく、ブランディングガイドラインをシステムに落とし込むものと説明し、⁠IRやCSRなどは100%テンプレート化し、キャンペーンなどクリエイティビティを前面に押し出す場合はテンプレート化しないなど、ニーズに応じて設定するものと考えています」と鈴木氏は語ります。

従来のマーケティングでは、現在の細分化された市場ニーズをとらえきれないという問題があるとの認識を示し、オンラインマーケティングは、⁠ソーシャルメディアへの対応⁠⁠、⁠多様化するデバイス⁠⁠、⁠システムの複雑化によるIT部門との折衝など⁠⁠、外部環境の激しい変化の中で降りかかる課題は多く、⁠担当者は多くの悩みを抱えている」と現状を説明します。

意味ベースマーケティングとは、⁠訪問者の意図を理解して最適なコンテンツを提供し、最終的なアウトプットとして企業側に結果をもたらすもの」と鈴木氏。今後のマーケティングは、ソーシャルメディアやTwitter、Facebook、YouTubeなどさまざまなメディアで顧客の動向を把握してターゲットを絞り込んでプロファイリングし、このプロファイルを元に市場をセグメント化して、顧客情報を構造化してWebサイトを最適化する「意味ベースマーケティング」が必要となってきていることを説明しました。

このような状況に対応するCMS製品が、オートノミー株式会社の「TeamSite⁠⁠、⁠LiveSite」⁠Optimost」最新版です。⁠Optimostは最適化を実現する『MVT』⁠多変量テスト)ソリューションであり、サイトを構成する要素の組み合わせを絞り込み、最終的に顧客にとってベストなクリエイティビティを選出することができる」と説明します。実際のサイトでテストをしたところ、目的のページへの誘導率が最大で44%も増えたそうです。このような最適化を実現していくと、自社サイト訪問する顧客をセグメント化でき、更なる最適化が図られます。

TeamSite最新版はオートノミーの検索技術を盛り込んでおり、外部のサイトの情報をクローリングして収集することができ、収集したデータを元に感情分析や口コミでのシェアがどのように推移しているかを視覚的に確認できるのも特徴のひとつです。テンプレートは、コンテンツとアプリケーションを分けることにより、コンテンツが部品化され、それぞれの担当者が本来の仕事に注力できるようになります。

また、LiveSite最新版は、コンテンツを持つ部分とコンテンツを配信提供する部分を分けたことにより、ソーシャルメディアなどの外部サイト対して自社コンテンツを一元化して提供することが可能になったと鈴木氏は説明します。

最後に、⁠従来のようにCMSを導入して効率化を図るだけでなく、Webサイトの最適化を行って、顧客のセグメントを発見していただけるよう、オンラインマーケティングのパートナーとしてお役に立てると強く感じている」と語り、セッションを締めくくりました。

セッション2
「企業の顔」であるWebを安全でたしかなものにするために~IBM Rational Policy TesterによるWebサイト・リスクマネジメント~

Webサイトのリスクを減らすには

日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウェア事業
ラショナル事業部の雨宮吉秀氏
日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウェア事業 ラショナル事業部の雨宮吉秀氏

企業にとってWebサイトは、ビジネスを牽引する最も重要な媒体の一つであり、そして、自身をあらわす「顔」でもあります。築き上げた高いブランドイメージの維持や信頼感など、Webサイトに課される使命はますます重く、大きくなっています。そこでセッション2では「⁠⁠企業の顔」であるWebを安全でたしかなものにするために~IBM Rational Policy TesterによるWebサイト・リスクマネジメント」をテーマに、日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウェア事業 ラショナル事業部の雨宮吉秀氏からお話をいただきました。

企業のWebサイトを取り巻く環境は、ビジネスの強力なツールとなっている一方、膨大なWebサイトを把握できずにリスクの温床になっていると雨宮氏は指摘します。コンプライアンスリスク、セキュリティリスク、リンク切れなどの機会損失リスクなどのリスクは、企業のブランドイメージを毀損すると説明します。

もう1つのリスク要因としてアクセシビリティがあります。目が不自由な方、ご高齢の方などが、容易にアクセスできるWebサイトを構築しなければならないと雨宮氏は指摘します。日本アイ・ビー・エムでは企業のアクセシビリティへの取り組みを定点観測しており、アクセシビリティの高い企業は総じて売上高が高い傾向にあるとしています。

このようにさまざまな要求をされるWebサイトは、チェック項目も膨大な数になってきており、またサイト全体を人手で検査するのはもはや不可能であると雨宮氏は警鐘を鳴らします。

日本アイ・ビー・エムは、これらのリスクを回避する製品として「IBM Rational AppScan Enterprise Edition」「IBM Rational Policy Tester」を提供。その大きな特徴は、Webサイト全体のリスクをスキャンし、統一的なビュー(ダッシュボード)で、企業のリスクを視覚的に監視できること。また、強力なカスタムルールを作成できるので、企業のサイトポリシーに則った検査をすることができます。例えば、指定したCSSを使用しているか、正しいフォントを使用しているかなど、サイトポリシーを細かく定義してチェックが可能になっています。これ以外にも多言語サポートや多様性あるレポートの出力なども紹介されました。

AppScan Enterprise EditionとPolicy Testerを実際に導入した事例が紹介され、サイトの検証にかかるコストの削減、ブランドイメージの向上と機会損失の最小化、Webサイトの内部統制に有用であることが説明されました。特に海外に展開されている場合、プライバシー保護違反やアクセシビリティ違反などで多額の賠償金を請求されるケースがあり、リスクヘッジとしても有効であるとのことです。

このほか、OnDemando(SaaS)で提供される同サービスの説明がありました。クラウド型のサービスなので、初期投資と運用コストを抑えた導入が可能とのことです。最後にWebサイトのリスクは子会社、部門、関連会社などに分散しており、対策はその場限りになりやすく、企業全体の問題として対応できないことがあると雨宮氏は注意喚起します。AppScan Enterprise EditionとPolicy Testerを利用したリスクの軽減は、リスク対策が必須の現在において大変参考になったでしょう。

セッション3
レンタルサーバからクラウドへ~これらのWEB構築はCMSサービスで

システムの制約にとらわれないWeb構築

株式会社ディバータ代表取締役社長
加藤健太氏
株式会社ディバータ代表取締役社長 加藤健太氏

セッション3のタイトルは「レンタルサーバからクラウドへ~これらのWEB構築はCMSサービスで⁠⁠。Webの利用が当たり前になってきた今、Web構築するときに何を選択するかをテーマに株式会社ディバータ代表取締役社長の加藤健太氏にお話をいただきました。

加藤氏は現在のWeb製作にはCMSが必須と説明します。しかし、CMSを導入するには数百万円単位の高額な初期投資やシステムが開発になることなど、導入に対しての敷居が高いことに対して問題を提起します。

この答えとして、ディバータは月額525円からのCMSサービスホームペーじんを提供しました。ホームペーじんは、ディバータが従来から提供しているRCMSとほぼ同様の機能が提供されるとのことです。RCMSは国連機関や300万PV/月あるサイトなどで導入されており、実績があるサービスと同等の機能を非常に低価格で利用できるのが大きなメリットと加藤氏は説明します。

レンタルサーバや専用サーバの場合、サーバ運用にかかるコストは固定費でしたが、ホームペーじんは、クラウドを利用して提供するため、⁠コストが変動費になり、初期投資を回収するスキームを考える必要がない」と加藤氏。また、CMSのサービスを提供する中で一番コストがかかるのは、人的なサポートの部分と説明します。しかし、2サイト目以降はサポートがそれほどかからないとのこと。1サイト目はRCMSと同等の料金体系で提供して、2サイト目以降は人的コストが軽減されているという前提でハードウェアを提供できるので、低価格の料金体系が実現できたそうです。

他のCMSと大きく違う点として、当初からSaaSで提供するということを念頭に置いて開発がされているとのことです。マルチテナントという考え方で、ひとつのシステムの上に数千のサイトを構築できるのが大きな特徴で、その中でそれぞれのサイトがカスタマイズしたり特殊なデータを入れ込んだり、外部と連携することができるそうです。

「同じようなサイトを大量に構築する場合、毎回構築するのは面倒だと思います」と加藤氏。しかし、ホームペーじんにはサイトコピーという機能があるので、1回サイトを構築してしまえば、コピーするだけで楽に構築ができるそうです。テンプレートサイトを構築して簡単ホームページ作成サービスを提供するなど、この機能を用いて新たなビジネスチャンスをアプローチしてもらえればとのことです。

ホームペーじんとRCMSの違いにも触れ、ホームペーじんはサイトを量産していくことに向いており、RCMSは独自サイトを作り込むことに向いていると説明がありました。キャンペーンサイトや商品を紹介するページはホームペーじんで、コーポレートサイトはRCMSなどのように使い分けていただければと加藤氏は語りました。

最後に、⁠システムは再利用、自動化するものと考えている」と加藤氏。Webサイトの利用が一般的になり、グローバル化するにつれて、そのニーズは必須になってきています。ホームペーじんは、そのような流れの中で、誰もが必要とするインフラなどのサービスを限りなく自動化して再利用できるようにしたいと語り、セッションを締めくくりました。

当日のプレゼン資料はこちらからダウンロードできます。
セッション3の資料ダウンロード

(トークセッションに続く)

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