滑川海彦の TechCrunch40 速報レポート

TechCrunch40 Summary #5

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タフなカンファレンスだった

とまあ駆け足で全体をご紹介してみた。帰りの飛行機の中で税関申告用紙を渡されたが頭が集中しない。いちばん上の「航空機(船舶)の名前⁠⁠,⁠出発地」という欄に「エアバス⁠⁠,⁠滑走路」と書いたら怒られるだろうな? キリストが飛行機に乗ると「生年月日:0004/12/25 姓:ベン・ヤコブ 名:イェス」とか書かされるのだろうか?

などとくだらないことを思いついておもわず(不気味な)笑いがこみあげてくる。いやはや毎日こういう取材をこなしている新聞記者のみなさんはたいしたものだ。

朝8時から夜の7時まで2日間ぶっ通しでプレゼンテーションとパネルディスカッションが続き,わずかな休憩時間の間に1日50社のデモを見てまわり,その後には飲み会があるというスケジュールは,いくら能率的なアメリカでもいささか過密ぎみ。

まして主催者側のTechCrunchチームとなると,あらゆる雑務に加えてセッションの要約記事をサイトにリアルタイムでアップロードしつづけたのだから,そのタフさは想像を絶する。

シリコンバレーのジュリア・ロバーツ(と筆者がかって命名しているのだが)ことヘザー・ハードTechCrunch CEO,ファウンダーで主筆のマイケル・アリントン,共同主催者のジェイソン・カラカニスに深く敬意を表する。

同時に膨大なカンファレンス・レポートをやはりリアルタイムで翻訳しつづけたTechCrunch日本版チームのパワーもたいへんなものだ。レギュラー翻訳チームから滑川と市村佐登美さんが会場取材のために抜けたのでますます負担は大きかったはずで,いやご苦労さまでした。

「Web2.0」は依然加速中か

シェラトン・パレス最大のホール「メイン・ボールルーム」に身動きもままならないほど詰め込まれていた聴衆だが,驚くほど集中して聞きいっていた。

このように会場の密度の高さは相当なもの

このように会場の密度の高さは相当なもの

速報の最初でも触れたように,チケットの売れ行きに気をよくして,会場後方に「椅子のみ」の席をしつらえてキャパシティーを確保したのだが,そこも満員。すこしでも前で壇上を見ようと壁際で立ち見組も出ていた。しかしさすがに「椅子のみ」席は疲労が激しく,休憩時間中はコメカミをマッサージしたり,やや放心状態の聴衆が目に付いた。

お疲れの「椅子のみ」席の面々

お疲れの「椅子のみ」席の面々

TechCrunchの一般オーディエンス向けチケットは2500ドル弱(早期予約割引は2000ドルだった)と日本の感覚ではかなり高価だが,何人か参加者に尋ねてみたところでは,アメリカのシリアスな業界カンファレンスではまず普通の値段だという。

とくに壇上でのプレゼンができる40社から金を取らず,優秀な会社だけを選んだところがよいという意見もあった。DEMOなど同種のカンファレンスではプレゼンをしたい会社から1万~数万ドルの出展料を徴収しているということで,往々にしてとんでもないツマラナイ会社が混じることになるらしい。

「プレゼンにはたいして期待していないが,これだけ大きなミーティングだと普段会えない人間に会えるからね」というベンチャーキャピタル関係者もいた。たしかにそこここで日本風の名刺交換をしている参加者の姿が目についた。

全体としてシリコンバレーを中心としたアメリカのウェブサービス業界には依然熱気が充満しているという印象だった。サブプライム問題を何人かに持ち出してみたが,一様に肩をすくめられてしまった。⁠どうなるかわからないが,すぐにパニックが起きるほどの話じゃない。景気が減速して影響が出るとしてもずっと先の話」ということなのであろう。

デモ,壇上を含めてスタートアップの新サービスの内容のレベルについていえば,jig.jpの福野泰介さんがjig.jp経営日記「TechCrunch40に来ています。⁠中略)出展企業は,いろいろ個性的なサービスではあるけど,決してまったく手が届かない感じではないので,ぜひ来年は出展を考えたい。みなさまもぜひ!」と書いているのが的確な評に思えた。

なお,今回プレゼンテーションを行なった40社の情報一覧(英文)はここに。そこからリンクをたどると,TechCrunch企業情報データベース(英文)にジャンプしてさらに詳しい情報(詳しいサービス紹介,住所,スクリーンショット,サイトURLなど)が得られる。

とりあえず最大のトレンドは「マルチメディアWiki」

TechCrunch大賞は,自動的にユーザーの口座からオンラインで情報を収集してパーソナル会計管理をしてくれるサービスMintに決まったことはお伝えしたが,トレンドとして目についたのはなんといっても「マルチメディアWiki」的なサービスだった。画像,動画,音声,テキストなどマルチメディアを素材として複数のユーザーが共同してひとつのページを作成・共有できるサービスである。実はスタートアップ以外の大企業,Yahoo!,AOL, Googleが発表したサービスもそろってマルチメディアWiki的な方向だった。

次回はTechCrunch40全体を通して見えてきたトレンドと,特に興味をひかれたサービスについて少し詳しくレポートしてみたい。

(続く)

著者プロフィール

滑川海彦(なめかわうみひこ)

東大法学部卒業後,都庁勤務などを経てIT関係のライター,翻訳者。TechCrunch日本語版を翻訳中。著書に「データベース・電子図書館の検索・活用法」(東洋経済新報社・共著),「ソーシャル・ウェブ入門 Google, mixi, ブログ…新しいWeb世界の歩き方」(技術評論社)など。個人のブログはSocial Web Rambling

著書