レポート

群衆の叡智サミット2008 Spring 開催
>-群衆の叡智が生まれるメカニズムとイノベーションと群衆の叡智の関係について熱く語られた1日span>

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セッション2:「群衆の叡智」のポテンシャル―経済活動のイノベーションは起こせるか~群衆が指し示す「あなた・企業・社会が、次にすべきこと」とは?

セッション2は,日本ユニシス株式会社 伊藤佳美氏をチェアに,企業・教育機関・政府関係機関・Webメディアと,さまざまな立場の方がパネリストとして登壇し,群衆の叡智とイノベーションの関係性をテーマに議論が交わされた。

楠正憲氏(マイクロソフト株式会社)
田代秀一氏(独立行政法人情報処理推進機構)
徳力基彦氏(アジャイルメディア・ネットワーク)
福岡秀幸氏(日本電気株式会社)
山口浩氏(駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部)
吉岡弘隆氏(ミラクル・リナックス株式会社)

セッション2の登壇者。左から伊藤氏,山口氏,福岡氏,楠氏,田代氏,吉岡氏,徳力氏

セッション2の登壇者。左から伊藤氏,山口氏,福岡氏,楠氏,田代氏,吉岡氏,徳力氏

まず,チェアの伊藤氏から群衆の叡智はイノベーションを生むか?という質問に対し,会場の約60%が生むと答え,25%が関係がない(生まない⁠⁠,残りの15%は,わからないのでこのサミットに来たという回答を挙げた。この質問をベースに,それぞれの自己紹介が行われた。基本的には,どの参加者も,群衆の叡智がイノベーションを生む,または,生む可能性があると答えた一方で,その前提条件などについて触れていた。

その後,まず,駒沢大学山口氏のプレゼンが行われ,同氏はこの中で「群衆の叡智は魔法の推奨ではない」⁠過度の期待は禁物」という意見を強調し,群衆の叡智からイノベーションを考えるときに,⁠正解」を探すことが重要なのではなく,多様性,柔軟性が大事とまとめた。

続いて,NEC福岡氏より,EGM(Employee Generated Media)というキーワードとともに,同社の社内SNSを例に挙げ,社員という群衆の中から生まれるアイデア,また,そのきっかけとなる新しい結合の重要性について話が上がった。このSNSは,現在15万人のグループ社員のうち,2万人の閲覧者がいるとのことで,とくに部署間を越えたコミュニケーションが生まれたことに効果が上がっていると発表した。

続いて,マイクロソフト楠氏は,ここ数年のMicrosoftの方針転換,とくにオープンになっているポイントを強く訴えた。たとえば,正式な発表をプレスリリースのみで行うのではなく,製品担当者レベルのblogを活用し,さらにそこに来るフィードバックを汲み取った上で製品開発を行っているということに,群衆の叡智からイノベーションが生まれる可能性があると述べた。一方で,情報の発信出口が多様化したことにより,とくに(英語情報を積極的に見ることが少ない)日本のプレスやメディアが情報についていけなくなっている現状を危惧していた。

最後に,IPA田代氏がIPAの現状や取り組みについて説明をする中で,セッション1でも取り上げられていたOSS開発の話題が上がった。これについては,パネラー陣の中でも,さまざまな意見が上がったのだが,AMN徳力が述べた「群衆の叡智なり,OSSプロジェクトの進め方というのは,あくまで選択肢の1つである。それが必ずしもすべて良いわけではない」というコメントが印象的だった。このコメントに対してはミラクル・リナックス吉岡氏も賛同し,さらにOSSの強みは「Release early, release often」であること,これが適用できるものであれば,OSS開発の考え方を取り入れた方が良いと述べた。

セッション2は,タイムオーバーのため最終的なまとめまで議論が進まなかったが,皆,イノベーションを生むための仕組みとして群衆の叡智は役に立つという大きなコンセンサスがあるように受け止められたが,一方で,それが最適解ではなく,柔軟に利用していくことが大事であるという声も挙がっていた。


今回,計4時間,2セッションに渡り,各パネリストが持論を展開し,意見と意見をぶつけ合いながら熱い議論が交わされた。どちらのセッションも,群衆の叡智に関する明確な答えが出たわけではないが,今回のサミットの主旨からすると答えを出す必要がなかったと言えるだろう。

群衆の叡智とは,まず,自分自身がその群衆の中の1人であると認識することが大事であり,そういった人たちが集まった結果,群衆ができ,群衆の叡智が生まれてくるのではないだろうか。次回も予定されているとのことなので,今回のレポートで「群衆の叡智」に興味を持った方は,ぜひ足を運んでもらいたい。

群衆の叡智サミット
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