レポート

楽天テクノロジーカンファレンス2008開催~大規模トラフィックを支える技術が見えた1日(その2)

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サーバへの投資

安武氏:

株式を公開した直後,サーバやインフラへの大きな投資をしました。このときの決断の背景などを教えてもらえますか。

三木谷氏:

規模が大きくなるにつれて,アーキテクチャに課題が見えてきました。加えて,システム側の計算力を上げる必要が出てきたのです。また,株式公開をした後,さらにビジネスとしていけると判断して投資しました。⁠大きな投資をしたという)結果を見ても,間違ってはいませんでしたね。

安武氏:

時系列で見ると,とても小さなサービスからスタートし,今は日本でも有数の大規模サービスとなりました。大きくなって変わったことや感じたことはありますか?

三木谷氏:

現在,楽天IDは5000万を数えます。スタート当時,流通金額はとても小さなものではありましたが,そのときから必ず成功できるという確信があったのです。そのため,大きくなってからも,何かが変わったということはありませんね。

逆に,もっともっと大きくして,それらを支えられるアーキテクチャやインフラを整備しなければいけないと思っています。さらに,スケールだけではなく,新規サービスもどんどん開発していかなければいけません。

その中でも,1つ変わったという意味では,社会的責任が非常に大きくなっていると感じています。

安武氏:

そういえば,以前社長から「原子力システムを動かすつもりでやれ」と言われたのを強く覚えています。

三木谷氏:

スケールが大きくなるというのは,まさにそういうことだと思います。たとえばTVだったら,TVの放送が止まることは社会的大問題です。ネットサービスは,TVに比べると気軽に考えられますが,大規模になればなるほどその責任が大きくなり,そのためにはサービスが止まったり,不具合が起きないよう未然に防ぐとともに,万が一,トラブルが発生した場合には,その回復スピードを早くすることが重要です。

写真3 これまで開発されてきた楽天の各種サービス

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エンジニアに期待すること

安武氏:

これからのエンジニアに期待することは何でしょうか?

三木谷氏:

私は,インターネットって陶芸みたいなものだと思っています。とくに,楽天のようなサーバ型は,最初の形からどんどん変えていかなければいけません。この点が,職人的な部分でもあり,陶芸につながるのですね。さらに,本当のエンジニアであれば,自分が作ったプロダクトに対するオーナーシップを感じていることが大事です。

楽天では,楽天チェックアウトのように,エンジニア主導で生まれたプロダクトがあります。今後も,このようなエンジニア主導の成果物を出していけるようにしていきたいです。そのためには,テクノロジーとインターフェースとビジネスモデルをどう組み合わせるかが重要で,その融合が成功したとき,真のサービスとなるはずです。

繰り返しになりますが,これからもエンジニアの方には,オーナーシップを持ってもらい,そこにビジネスマインドを加えて,とんがったこと,最先端のことをしてもらいたいです。

今回のカンファレンス開催の目的にもつながるのですが,楽天のアセットのコアはエンジニアリングです。これからも当社のエンジニアには,誇りを持ってやってもらいたいと思います。

楽天技術研究所を誕生の背景

安武氏:

エンジニアリング,技術という観点で言うと,現在,楽天には楽天技術研究所があります。この研究所が生まれた経緯について教えてください。

三木谷氏:

技術をコアにするとき,日常の業務から離れて,ファンダメンタルな技術革新を狙っていく人たちが必要だと思ったのがきっかけです。たとえば,今もどんどん進化しているレコメンデーションエンジンだったり,クラウドコンピューティングは,研究所を中心に内製していて,今後もさらに強化していきたいです。

サービスを出すときに,最終的には,技術力=差別化だと思っています。そのために,研究所という組織を用意し,そこから生み出していくことでオリジナリティを持たせていきます。

これからのトレンド

安武氏:

これから先を見たときに,どういったトレンドがあると思いますか?

三木谷氏:

デバイスの進化,普及です。とくにiPhone,スマートフォンはいけると感じました。日本での販売がスタートした後,絵文字は使えないとだめというユーザもいましたが,ビジネスマンをターゲットにした場合には,すべてを一元的にできるのはすばらしいと思います。今後も,スマートフォンはもっともっと流行っていくと思います。ただし,それがiPhoneになるのかどうかはまだわかりません。

その他は,インターネット上でのビデオストリーミングです。Skypeまで含めてメディアの在り方が根本的に変わると思います。

楽天グループに関しては,金融,Eコマース,コンテンツを併せ持ったビジネスを展開している,世界唯一の企業です。今後,弊社に限らず,アメリカ発ではないビジネスモデルがどんどんでてくると思っています。

この先10年について

安武氏:

最後に,この先10年についてのお考えを教えてください。

三木谷氏:

まずは国際化。これが最重要課題です。加えて,楽天から技術を生み出す風土をもっと強めていきたいですね。

先ほども述べたとおり,規模が変わっても感覚の部分は変わっていません。つねに目の前のものを見据えて対応していきます。一方で,大きくなることによって,古い考えの方たちとぶつかるときがあります。最近では,一般用医薬品のネット販売の禁止という意見が出ています。正直,くだらないと思っています。この問題については,弊社としてもきちんと対応していきますし,また,大きくなったからこそ正しく対応して,顧客の皆さまに最大の価値を提供していく責務が発生していると感じています。