レポート

第2回 組込みプレスセミナーレポート

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組込みシステム開発:いつまで体力勝負を続けますか?
~組込みシステム開発の現場を抜本的に改善するための取り組みについて~

日立情報制御ソリューションズの主幹技師である飯島三朗氏による3番目のセッションは、⁠組込みシステム開発:いつまで体力勝負を続けますか? ~組込みシステム開発の現場を抜本的に改善するための取り組みについて~」と題したセッションでした。開発手法に対する新しい取り組みや、同社が展開している開発ツールについて紹介されました。

組込み開発の現場ではQCDの改善がテーマ

日立情報制御ソリューションズ
主幹技師 飯島三朗氏

冒頭ではまず、日立情報制御ソリューションズについて紹介がありました。同社は2006年に日立ハイコスと日立エンジニアリングが合併して生まれた企業で、2500名以上の従業員が在籍しています。ソフトウェア開発における組織のプロセス管理の成熟度を5段階で表す「CMMI(Capability Maturity Model Integration⁠⁠」において、⁠非常に成熟した開発プロセスを持つ」とされる最上位のレベル5を達成するなど、国内でも有数の開発力を誇ります。

同社は「情報・制御分野でのナンバーワンを目指して」という経営ビジョンを掲げ、社会インフラから産業・流通、セキュリティ、そして組込みシステムの開発の領域において事業が展開されています。組込み開発においては、カーオーディオやカーナビなど、制御系と情報系が交わる領域を中心としつつ、制御用コンピュータからミニコンまで、幅広い分野に対応しているとのこと。また薬品検査や自動車の車番認識に応用されている画像処理応用技術、あるいはBluetoothやUWB(Ultra Wide Band:超広域帯無線)などの無線技術にも強みを持つなど、社内の多様な技術を活用してワンストップソリューションを提供できる希有な存在となっています。

その日立情報制御ソリューションズにおいて、組込み開発の第一線で活躍している組込みシステム本部 プラットフォームソリューション部 主管技師の飯島三朗氏は、実態調査の結果から、現在の組込みの開発においてQCD、つまり品質とコスト、納期が問題になっていると話します。

その理由として挙げられたのは、度重なる仕様変更による不具合の多発やプロジェクトの長期化、経営判断による納期短縮などです。こうした背景から現場の作業時間は不足することになり、それを残業でカバーするしかなく、体力勝負になっていると指摘し、これまでの開発手法を改めるべきだと説きます。その具体策として上げられたのがモデルベース開発とHAYST法による効率的なテスト、そして派生開発手法の導入です。

開発効率の向上を実現する開発手法とテスト手法

一つ目のモデルベース開発は、開発対象のシステムをモデルとして記述、それをもとにして効率的な開発プロセスを実現する手法として注目を集めています。このモデルベース開発について、要求達成の手段を追求する⁠HOW⁠指向ではなく、何のためにそれをやるのかという⁠WHAT⁠の指向であることがポイントとのこと。

日立情報制御ソリューションズでは、既存の資産を活かしつつモデルベース開発を実践、それによって従来手法では1年かかっていたと見込まれる開発を、モデルベース開発と既存ソースの活用を組み合わせた手法により、わずか7カ月でリリースすることができたと大きな成果につながったことが紹介されました。

二つ目のHAYST法とは、富士ゼロックスの秋山浩一氏らが考案したソフトウェアテストの技法です。従来のテスト項目の洗い出しは、⁠勘と経験に頼っている部分が大きかった」と飯島氏。そこで少ないテスト件数と高い網羅率を両立させたHAYST法を取り入れ、あるプロジェクトにおいてテスト項目数を従来の1168件から64件と大幅に削減しながら、98.4%の組み合わせ網羅率を達成できたとのこと。ただ「適用できる分野とそうでない分野がある」そうで、どこで利用するかの見極めは必要のようです。

三つ目の派生開発の手法として取り入れられたのは、⁠XDDP(eXtreme Derivative Development Process⁠⁠」です。これはシステムクリエイツの清水吉男氏が考案した派生開発に特化したプロセスモデルで、変更要求や仕様を変更前後で表現した「変更要求仕様書」と、それに対応した変更箇所を関数単位で一覧化した「トレーサビリティ・マトリックス⁠⁠、そしてソースの変更内容を記述した「変更設計書」という3つの文書を作り、変更管理を厳密に行い、変更漏れや他の機能への悪影響を防ぐことが可能になるというもの。日立情報制御ソリューションズでは大規模受託開発においてXDDPを導入したところ、同様のプロジェクトと比較して不具合発生率が約50%に減少したと、大きな成果があったことが発表されました。

“日本の組込みシステムを世界一にしたい”

続いて、日立情報制御ソリューションズから提供されている組込みシステムの開発時に有用なツールが紹介されました。

「SagePro/eDEBUG」はプログラムの動作状況をOSの視点から時系列で表示することで動きを可視化するツールで、キャッツ製の「ZIPC」やルネサステクノロジの「HEW」といった他社開発環境と連携することも可能とのこと。これらの環境との連携によって、システムコールを出したところがソースコードのどの部分かが分かるようになっているということで、トラブルシューティングや性能解析において大いに役立つツールだと言えそうです。

続けて構成管理ツールである「SagePro/CM」と、プロジェクト統合管理ツールの「SagePro/PM」についての説明がありました。SagePro/CMはソフトウェア資産の変更や構成、そしてドキュメントを一元管理可能ということで、組込み開発において重要視されている再利用率の向上につながる製品だと言えるでしょう。SagePro/PMは計画から進捗、課題、不具合、そしてリスク管理までが可能なツールで、上級管理者からプロジェクト管理者、そして担当者のそれぞれの目的に応じたビューが実現されているとのこと。

開発中のプロダクトとして紹介されたのが「SagePro/eXM」です。これは先に説明されたXDDP支援ツールという位置付けで、⁠XDDPで求められる成果物の作成を支援するツール」であるということでした。派生開発の効率化を実現したい企業にとってはリリースが楽しみな製品ではないでしょうか。

最後に、組込み開発の方法論の確立に向けて、産学官連携で取り組んでいる研究について解説した飯島氏。⁠日本の組込みシステムを世界一にしたいという意気込みでやっています」と語り、プレゼンテーションを締めくくりました。