WordCamp Fukuoka 2010最速レポート(随時更新)

2010年2月27日、日本で4回目、九州地区では初となるWordPressに特化したカンファレンス「WordCamp Fukuoka 2010」が西南学院大学コミュニティーセンターにて開催された。ここでは、その模様について速報でお届けする。

※順次公開していきます。

会場となった西南学院大学コミュニティーセンター。
会場となった西南学院大学コミュニティーセンター。
開会に先立ち挨拶を述べる株式会社ヌーラボ代表取締役橋本正徳氏。福岡で働くWebの人々(FWW)などの運営にも関わっている。
開会に先立ち挨拶を述べる株式会社ヌーラボ代表取締役橋本正徳氏。福岡で働くWebの人々(FWW)などの運営にも関わっている。

WordPress for the world from Japan~日本から世界へ

オープニングセッションを務めたのは、ニューヨークを拠点とした情報システムコンサルティング会社1080dの最高情報責任者で、アメリカの最大手出版社であるTime社でWordPressを使った様々なオンラインメディアサイトに関わる立場でもあるNed Watson氏。同氏は5~6月ごろにヌーラボに所属することになっている。

Ned Watson氏。
Ned Watson氏。

まずはじめに、これまでの氏の実績が紹介された。そのうちの1つ、aimeewilder.comは、WordPressを使って制作されている。⁠それまでWordPressを使ったサイトというのは、投稿数が増えていくいわゆるブログ型のサイト構造だったものが、aimeewilder.comでは、ページを増やすCMS型のサイトを実現できた。このときに、WordPressの新しい可能性を感じた」とNed氏はコメントした。

Ned氏の制作実績の1つ。http://aimeewilder.com/。
Ned氏の制作実績の1つ。http://aimeewilder.com/。

日本人はWordPressを使うべき

Ned氏は、WordPressの魅力として

  • OSSで作られていて完全に無料
  • 英語国以外でもそれぞれの言語で使える
  • コミュニティはニューフェース(初心者)に優しい
  • デザイナーはすぐにキレイなサイトを制作できる

といった点を挙げ、さらに「日本人の作るテーマは、外国人の目から見てキュートである」という持論を交えながら、日本人はもっとWordPressを使うべきと熱く語った。

No WordPress No Life

前述のとおり、Ned氏はこの春からヌーラボに所属するのだが、それに合わせて福岡での目標として、

  • 福岡を日本のWordPressのベースにしたい
  • Automatticの人間を福岡に呼びたい

などの目標とともに、他の地域でのWordCampには負けたくない!という思いとともに、地域に根ざした活動をしていくことを宣言し、⁠No WordPress No Life」というコメントで発表を終えた。

次回はこれまで開催された東京や京都の規模を追い越すと意気込んだNed氏。そして、資料の右下には打倒ライバルプロダクツ!の文字が表記され、その場での宣言も行われていた。
次回はこれまで開催された東京や京都の規模を追い越すと意気込んだNed氏。そして、資料の右下には打倒ライバルプロダクツ!の文字が表記され、その場での宣言も行われていた。

WordPressとプラグインで連携するWebサービス

二番目に登場したのは、ヌーラボでBacklogやCacooなどのプロダクトデザインを務める縣俊貴氏。

『WEB+DB PRESS』の連載でもおなじみ縣俊貴氏。
『WEB+DB PRESS』の連載でもおなじみ縣俊貴氏。

まずはじめに、昨年秋にリリースし現在世界100ヵ国以上で2万2,000人のユーザを獲得しているオンラインクリエイティブツールCacooの紹介を行った。

Cacoo for WordPress

今回のプレゼンでは、オンラインクリエイティブツールCacooをWordPressでさらに使いやすくするためのプラグイン「Cacoo for WordPress」が紹介された。

このプラグインを利用することにより、WordPressの管理画面から直接Cacooを呼び出し、Cacoo上で編集した画像をそのままアップデートできるようになる。このように、外部のサービスを使いやすくできるのもWordPressをはじめとしたオープンソースの特徴であると縣氏はコメントした。

WordPressコミュニティのススメ

この他、オープンソースとフリーミアムなどの概念を説明した後、OSSのFree Riderにならないためには、WordPressの普及促進をサポートすること、WordPressを使うことなど、自分たちができる範囲から始めることで十分だと述べた。

縣氏は「WordPressのプラグイン開発の仕組みは、iPhoneのAppStoreの構造に似ている」と語った。
縣氏は「WordPressのプラグイン開発の仕組みは、iPhoneのAppStoreの構造に似ている」と語った。

WordPressも簡単インストール「Microsoft Web Platform Installer」とその他、マイクロソフトのいろいろご紹介

午前中最後のセッションを担当したのは、マイクロソフト株式会社 デベロッパー&プラットフォーム統括本部開発ツール製品部エグゼクティブプロダクトマネージャ鈴木祐巳氏。マイクロソフトのWeb技術、WordPressへのアプローチ、そしてユーザに役立つ情報が紹介された。

非常に豊富なWeb技術を持つMicrosoftが、どのようにWordPressに向けて取り組むか、デモを交えながら解説した鈴木氏。
非常に豊富なWeb技術を持つMicrosoftが、どのようにWordPressに向けて取り組むか、デモを交えながら解説した鈴木氏。

Web Platform Installerでラクラクインストール

SilverlightやWPF、Expressionなど各種技術を紹介した後、鈴木氏はMicrosoftのWordPressに向けたアプローチとしてWeb Platform Installer(Web PI)を紹介した。WebPIとは、MicrosoftのWeb関連製品モジュールのインストールを行うもので、IISやSQL Server Expressの他、PHPランタイムやMySQLのインストールが行える。さらに、より上位のアプリケーションとしてWordPressが対応しており、会場で実際にインストールするデモンストレーションが行われた。

Web PIを実行後、ウィザードの手順通りに進み、最後にWordPressを選んで実行するとWindows環境へのWordPressが行える。
Web PIを実行後、ウィザードの手順通りに進み、最後にWordPressを選んで実行するとWindows環境へのWordPressが行える。

YouTubeにアップされている「Web Platform Installer を使ってWordPressを10分でインストール」デモ http://www.youtube.com/watch?v=RTtbf8oFXps

Web PIの特徴は、対象となるサーバに対して必要なモジュールを調べたうえでインストールを開始してくれる点。これについて「これまでWordPressの実行環境はLAMPが多かったと思いますが、制作側の環境を考えるとWindowsで利用できるほうが便利です。Web PIはその作業をサポートするために存在します。Web PIを使って、Windows環境でWeb制作をしている方にもっとWindowsになじんでもらいたいです」と鈴木氏はWeb PIの狙いと意味について説明した。

IE8からのアプローチ

Web PIに続いて、Internet Explorer 8からのWordPressへのアプローチとして、アクセラレータやWeb Sliceといった機能を紹介した。Web Sliceについては「WebSlicer」という、WordPress向けのWeb Slice対応プラグインが用意されている。

また、オフラインでのブログ編集サービスであるWindows Live WriterやWeb制作事業を支援するWebsite Sparkについて紹介し、MicrosoftとしてのWordPressに向けた取り組み、これからの展望についてまとめた。

WordPressのパワーと魅力

午後、最初のセッションはAutomattic社のハピネス・エンジニアとして、WordPressの啓蒙活動やコミュニティへの積極的な酸化を行っているマクラケン直子氏が「WordPressのパワーと魅力」というテーマで、WordPressを包括的に紹介した。

ハピネス・エンジニアとしてWordPressの魅力を語るマクラケン直子氏。
ハピネス・エンジニアとしてWordPressの魅力を語るマクラケン直子氏。

オープン性が持つ強み

WordPressの最大の強みはオープンであること。マクラケン直子氏は、改めてこの点を強調した。とくに、オープンソースで提供されていることに加えて、プロジェクト規模が大きくなるにつれ開発者の交流が増えていく点は、他のソフトウェアに比べても大変優位であると述べた。 また、TwitterやFacebookなどユーザをたくさん抱えているWebサービスは、ユーザがその開発状況を見たり知ることはできないが、WordPressはユーザ数が大きいにもかかわらず、誰でも知りたいときに開発状況を見られる状況にある点も魅力の1つであるとした。ちなみに、Automattic社が提供するブログサービス「WordPress.com」の最新データは、1020万ブログ、月間2.2億ユニークビジター/10億ページビューあるという。 さらに、世界各地での草の根活動であるWordCampの開催状況を説明し、年々ワールドワイドでユーザが増えていることが、現在のWordPressを支えていると、コミュニティの重要性を自身の体験とともに紹介した。

WordCampは地域ごとに行われるWordPressに特化したイベント。日本ではこれまで東京で2回、京都で1回行われており、今回は初の九州地区での開催となった。WordCamp http://central.wordcamp.org/
WordCampは地域ごとに行われるWordPressに特化したイベント。日本ではこれまで東京で2回、京都で1回行われており、今回は初の九州地区での開催となった。WordCamp http://central.wordcamp.org/

WordPress 3.0先取り情報

WordPressの強みと魅力に続いて、この春リリースが予定されているWordPressの最新バージョン3.0について、先取り情報が届けられた。3.0の見どころは、

  • WordPress MUの統合
  • 新デフォルトテーマTwenty Tenの採用
  • カスタムメニュー機能の強化

などがある。 とくにWordPress MUはアーキテクチャ的に大きな変更となる。この点について「これまでのバージョンで開発したプラグインやテーマが使えるかどうか不安になっているユーザもいるかもしれないが、大きな不整合は発生しないので心配しないでほしい」と、バージョンアップによる下位互換に関するコメントが行われた。 また、新しいデフォルトテーマである「Twenty Ten」の紹介、カスタムメニュー機能の使い方などが最新のベータ版を元に紹介された。

新デフォルトテーマTwenty Ten。すっきりとしたビジュアルになっている。
新デフォルトテーマTwenty Ten。すっきりとしたビジュアルになっている。

貢献しやすいインフラを目指して

この他、オンラインコラボレーションができる翻訳ツールGlotPress、ソーシャルねとワークサービス構築用プラグインBuddyPressといったオススメプラグインの紹介、WordPressの非営利団体WordPress Foundationの紹介が行われ、⁠WordPressは、こういった便利なツールが存在し、また、WordPress普及に向けた活動が行われています。今後は、ユーザが貢献しやすいインフラの整備を目指します。そして、将来的にWordPressがさらに成長するモデルを目指しています」と発表を締めくくった。

レンタルサーバーでのWordPressの使い方

地元福岡発の企業paperboy&co.からは、エンジニアの万野潤二氏が登壇し、同社の「ロリポップ!レンタルサーバー」上でのWordPressの使い方、エンジニア視点でのWordPressの可能性について語った。

週末は家族3人で山で暮らしているという万野氏。今回、参加者に向けてロリポップ!レンタルサーバー(http://lolipop.jp/)3ヵ月無料お試しキャンペーンが用意されていた。
週末は家族3人で山で暮らしているという万野氏。今回、参加者に向けてロリポップ!レンタルサーバー(http://lolipop.jp/)3ヵ月無料お試しキャンペーンが用意されていた。

1分もかからず使えるWordPress

まずはじめに、誰もが手軽にWordPressが使えるようにしたいという目的で、ロリポップ!やチカッパ!など、同社のレンタルサーバに標準でWordPressがインストールできるようになったことを説明した。壇上では、ユーザアカウントなど最低限必要な情報を設定するだけで、1分もかからずにWordPressが利用できるデモが行われ、手軽さを実演した。

「ここだけ設定すればWordPressがすぐに使えます」と、ロリポップ!でWordPressが利用するためのデモが行われた。実際、1分もかかっていなかったのが印象的。
「ここだけ設定すればWordPressがすぐに使えます」と、ロリポップ!でWordPressが利用するためのデモが行われた。実際、1分もかかっていなかったのが印象的。

プラグインを作ろう、プラグインを組み合わせよう

続いて、All in One SEO PackやContact Form 7などの便利なプラグイン、Global Translator Pluginやwp-tegakiなどユニークなプラグインを紹介したうえで、⁠プラグインがあればWordPressが何倍も便利に楽しくなります。そして、欲しい機能があれば自分でプラグインを作ることもできるのです」と、エンジニア視点ならではのプラグイン論を展開した万野氏。さらに「プラグインというのは単なる拡張機能ではなく、サイト全体のイメージを変えたり、ビジュアル的なアイキャッチを作る効果もあります」と、プラグインの可能性を説明した。 万野氏自身も実際に

というプラグインの開発を行い、さらにそのプラグインを活用したWebサービス「hot ATND」の開発までを行っている。この経緯について「プラグイン開発のきっかけは、ATNDにある情報を見落としたくないという気持ちでした。開発自体は1日程度で終わっています。残念ながら作ったプラグイン自体は、それほどたくさんの方にダウンロードはされていないんです。ただ、プラグインを開発したことにより、今度はそれらを組み合わせたWebサービスをつくるアイデアが生まれ、hot ATNDというWebサービスを生み出すことができました」と、プラグイン開発による波及的効果について、体験談とともに解説した。

デザイナーのためのWordpressオリジナルテーマ作成入門

次に登場したのは、フロッグマンオフィスに所属し、メディア系サイトや企業サイト等を制作する山口有由希氏。山口氏は、本格的にWordPressを使い始めがのが10ヵ月とのことで、まだまだ経験が豊富ではないとのこと。この立場だからこそ感じたWordPressで気になること、躓いたところなど、自身の体験談をもとにWordPressのオリジナルテーマ作成について解説した。

デザイナーのためのテーマ制作

山口氏が最初に手掛けたWordPressのサイトは、自身のブログ「VIVID COLORS + BLOGhttp://blog.v-colors.com/⁠。これを皮切りに、元々行っていた素材サイトの制作などからWordPressを採用するようになり、今に至っている。⁠WordPressの便利な特徴の1つが画像サイズの指定が容易な点です。あらかじめ必要な画像サイズを設定しておくことで、リサイズが簡単に行えます」と、自身が体験したWordPressのメリットについて話した。

「好きでWordPressを使っていたら、まさか私が登壇することになりました」と今回の発表の経緯について話す山口氏。
「好きでWordPressを使っていたら、まさか私が登壇することになりました」と今回の発表の経緯について話す山口氏。

アイデア次第で可能性は無限大

また、フォーラムの日本語情報が充実してくるなど、環境要因の素晴らしいさなどを混ぜながら、⁠テーマはアイデア次第でどんなものでも作れます。可能性が無限大にあるのもWordPressの魅力の1つです」と、クリエイター視点からのWordPressの魅力について語った。

WordPressのどういったポイントが優れているか、自身の経験をふまえた解説入りの発表資料が用意されていた。
WordPressのどういったポイントが優れているか、自身の経験をふまえた解説入りの発表資料が用意されていた。

最後に、どうやってWordPressの技術を習得したかを、体験したポイントごとにまとめ、発表を終了した。

Hello WordPress! Hello World! 福岡から世界へ

休憩後に続いて登場したのは、Contact Form 7など、たくさんのユーザを獲得するプラグインを開発する三好隆之氏。三好氏は、WordPress日本語公式サイト、日本語版作成チーム、ローカルコミュニティWordBenchなど、WordPress関連コミュニティで積極的に活動している。

Contact Form 7の開発者として、世界各地のWordPressユーザに知られる三好氏。
Contact Form 7の開発者として、世界各地のWordPressユーザに知られる三好氏。

WordPressは世界で勝負できるプラットフォーム

WordPressの魅力の1つは、誰もがプラグインを開発して機能を追加できる点。この点について「WordPress用のプラグインを開発して公式サイトに登録されれば、世界中のユーザに使ってもらう機会が得られるわけです。これは、WordPressが世界標準のプラットフォームだからこその強みです」と、開発者ならではのコメントで、WordPressの強み、魅力について語った。

Contact Form 7のユーザ比率はアメリカで32%、日本8%、イギリス7%と、日本に閉じていない。
Contact Form 7のユーザ比率はアメリカで32%、日本8%、イギリス7%と、日本に閉じていない。

見ず知らずの方の人生を豊にできるというモチベーション

また、Contact Form 7の開発をしたことにより、お金では得られない財産を得られたそう。⁠おかげさまでContact Form 7は世界各地にいるたくさんのユーザの皆さんに使っていただけています。ユーザの方から、応援や励ましのメッセージをいただくことがあるのですが、その中で、ただありがとうというお礼だけではなく「Contact Form 7で(自分の仕事が改善され)人生が豊になった」というコメントをいただいたときに、本当にやっていて良かったと思いました。見ず知らずの方の人生を豊かにできるというのは、何ものにも得難い経験ですし、開発していく上での大きなモチベーションになります」と、WordPressというオープンソースの世界で開発していたからこその、貴重な体験談について語ってくれた。 今回の三好氏の発表は、技術論ではなくマインドの部分について多く触れられていたのが印象的。この話を聞いた方の中から、WordPressコミュニティに参加する人が増え、コミュニティがさらに活性化していくことを期待させる内容だった。

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