レポート

「WACATE2010 冬」レポート─温故知新に驚きと感動と

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技法の必要性を考えてみる

河野哲也さんのセッションは,技法の必要性を実際に体験するというものです。とあるA4枚分の文書から「の」「v」などの文字数を数えるという課題です。

「技法の必要性」の模様

「技法の必要性」の模様

この「数を数える」という作業に対して条件を変えながら複数回行うのですが,技法の必要性を体験できる絶妙な課題として考え抜かれています。

1回目各個人で自由に数える個人作業の不正確さとばらつきを知る
2回目チームで技法を検討後に数える技法を考えて使う価値を知る
3回目チーム全員で数えるチーム活動の価値を知る
4回目他チームの技法を用いて数える技法を応用する価値を知る

このように,段階的に技法の必要性を実感することができます。

個人の作業には限界があること,技法によってばらつきを押さえることができること,チームで技法を使うことによって価値を高めることができること,他の人が技法を使用した場合にも役立てる流用性があること,体験を通して技法について学ぶことで,頭と体で理解することができます。この体験による学びは,WACATEの特徴であり価値のひとつです。

Test.SSFセッション「温故知新-自分を知って進もう-」

小山竜治さんのセッションでは,ソフトウェアのスキル標準である「Test.SSF」を実際に使ってみるセッションです。テスト詳細設計に必要なスキルが分類されており,それぞれのレベルを記載することでレーダーチャート形式に「準備」⁠獲得」⁠分析」⁠設計」⁠作成」⁠検証」の分類によるレベルの把握が可能となります。

レーダーチャートの例

レーダーチャートの例

ここでは,テストエンジニアではない人も,自分のスキルでテストに流用可能なものを知ることができます。また,テストに必要で不足としているスキルを明確化することで,今後の学習計画に生かすことができます。現在の得意分野と苦手分野を把握し,今後学ぶべき方向性を決定するためにTest.SSFは役立ちます。参加者の温故知新となるセッションでした。

クロージングセッション「ソフトウェアテスト・ヒストリーの学び方」

最後は,辰巳敬三さんによるクロージングセッションです。ソフトウェアの歴史とテスト技法の歴史。WACATE2010で学んだテスト技法も出現します。テスト技法を学ぶことが,過去の歴史を学ぶことであることを実感します。また,ソフトウェアの歴史と世界の最新研究状況も紹介されるといった,まさに「温故知新」の内容となります。

最後に,論語の言葉を用いて締められました。日本語訳の簡潔な表現を用いてしまいますが,以下の内容です。

自分の知らないことを把握し,学んだことについて自分で考え,それを実践してみる。

WACATEでは,今の自分ができることとできないことを学びました。そして,課題に対して自分で考えて実際にアウトプットを作成しました。この言葉はWACATEで学んだ内容と繋がります。WACATEの二日間の体験が自分を成長させていること,これからの糧となるだろうことを実感する瞬間でした。

辰巳さんのセッションの模様

辰巳さんのセッションの模様

WACATEを通して

そして,最後にクロージングとポジションペーパー賞の発表で終了となります。以上で詳細させて頂いたセッションだけでも非常に価値の高いのですが,さらにWACATEにおいて得られる価値を3点紹介します。

参加者との議論と刺激
コミュニティでは,業種も専門も違う人たちが集まります。参加者間において異なる立場同士が意見を交わすことにより,日ごろ見えていなかった部分に光が差し込まれ,多くの気付きを得ることができます。また,同年代の学習意欲の高い参加者との出会いは刺激を与えてくれます。
ベテランの後ろ姿
WACATEには講師,参加者問わずベテランの方も多く参加しています。ベテランの方々の謙虚な振る舞い,学ぶための姿勢,深い知識と経験や技術といったものから,将来の目標とすべき姿を発見できます。
WACATE実行委員
これだけ中身の濃いワークショップを企画するには,相当のエネルギーが必要です。しかし,実行委員の皆様は明るく楽しんでワークショップを運営しています。相手を喜ばせて自分も楽しむ,その姿に感動を覚えます。

また,WACATEは初参加でも入り込みやすい仕掛けを用意しています。前述したポジションペーパーセッション,チームでの議論を行うことでコミュニケーションにおける不都合を感じることはありません。

コミュニティに参加して元気を貰い,仕事をがんばる!という人の話を聞くことがありましたがまさにWACATEは元気と活力を与えてくれます。テストエンジニアのみではなく,開発エンジニアの人を含めて学習意欲のある方はWACATEに参加してみてはいかがでしょうか。驚きと感動が得られることは間違い無いでしょう。

著者プロフィール

水野昇幸(みずののりゆき)

WACATEは2010冬にて初参加。職場の先輩に誘われるがまま参加し,大きな衝撃を受ける。普段は某電機メーカーでシステム開発を担当。開発7割,時折テスト。「ETソフトウェアロボットコンテスト」の関西地区実行委員も勤めている。楽しんで学ぶことができる,という場に引き寄せられると幸せを感じる。