レポート

コンピュータの未来,エンジニアとしての働き方は?「第2回 エンジニアの未来サミット for students 2011」レポート

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Getting Your Job Done!

第二部は,今回の特別ゲスト小飼弾氏,そして,竹迫氏の2名による,⁠Getting Your Job Done!」というテーマのトークセッションからスタートしました。

第二部は小飼氏(右)と竹迫氏(左)によるトークセッションから。今回の内容は,今年のYAPC::Asia Tokyoの内容をアップデートしたもの

第二部は小飼氏(右)と竹迫氏(左)によるトークセッションから。今回の内容は,今年のYAPC::Asia Tokyoの内容をアップデートしたもの

まず,小飼氏自身の経歴紹介から話がスタートしました。竹迫さんから「履歴上は中卒になるんですね」という問いかけがあり,小飼氏は「日本での学歴というとそうなりますね。そのあと,バークレー校に入って,仕事はいろいろやりましたよ。ITじゃない(通常の)土方もやっていますし(笑⁠⁠」と,自身の豊富な経験について語りました。その後,堀江貴文氏からオン・ザ・エッジ(その後のライブドア)に誘われ,ネットワークエンジニアとしてCTOになったこと,Perlというのは「実はプログラミングをしたい人のための言語と言うよりは,何かを早く解決したいと思っている人に向いている言語」という経緯や自身が得意なPerlに関する説明が行われました。他,その後のライブドアの動きについて竹迫氏から補足説明が行われながら,前段が終わりました。

続いて,本題である「Getting Your Job Done!」へと話が移ります。

小飼氏はいきなり「Job(仕事)って書くといやいややらされている感がありますね」と前置きした上で,実は働いたら負け(やったら負けなのがJob)である,という持論を展開しました。さらに,それを補足する上で,聖書のヨブ記(Book of Job)などを紹介するなど,独特のストーリー展開により,来場した学生の興味を強く惹いているのが印象的でした。

さらに,⁠Book of Job」から今話題の書籍「Book of Jobs」⁠公式伝記『スティーブ・ジョブズ⁠⁠)へシフトして,Steve Jobsの話を紹介しました。小飼氏はiPhoneやiTunesといった製品で「Appleがなぜ世界一になれたのか」という視点からスタンフォード大学での卒業式スピーチの話題に触れ,その中に出てきた「Connecting the dots」の話題を引用しました。

小飼氏によれば「技術というのは点と同じことでそれだけでは何も生み出せなく,この点をつなぐという行為こそ,まさにエンジニアリングにも通ずる」ということです。1つ1つをどのように組み合わせて形にするか,それを体現し,成功につなげたのがAppleであり,Jobsなわけです。

「仕事は選ぶものではない」⁠本当に役に立つか否かは役立ってみないとわからない」など,独自の視点で,働き方について説明をした

「仕事は選ぶものではない」「本当に役に立つか否かは役立ってみないとわからない」など,独自の視点で,働き方について説明をした

続いて,自著の『決弾』の中から,ベンチャーと上場企業の比較を取り上げ,⁠楽をしたかったら一流企業,仕事ができようになりたかったらベンチャー企業に行きましょう」というメッセージを投げかけました。さらに「一流企業というのは,社員の中に一流じゃない人がいても一流の成果を挙げられる企業」というコメントがあり,参加した学生の多くに参考になるコメントを残しつつ,プレゼンテーションを終えました。

良い悪いをはっきり言うこと,それがリテラシー

最後はこれまでの登壇者全員によるパネルディスカッションおよび質疑応答の時間となりました。

登壇者全員によるパネルディスカッションおよび質疑応答の時間

登壇者全員によるパネルディスカッションおよび質疑応答の時間

会場から「プログラム言語の学びについて,どこまで学ぶか,どのぐらい学ぶかについて教えてください」という質問が上がると,まず小飼氏が「そもそも学ぶのは必要に迫られてからやるもの。決めて学ぶものではない」という,一刀両断の回答からスタートしました。ただ,これは裏を返すと「なぜ学ぶのか?なんのために学ぶのか?そこが重要」というメッセージでもあります。この質問に対し,青野氏は「自分はBASICやアセンブラ時代からプログラムをやっていて,なぜやっていたかというと,ゲームを作りたかったから」という,自身の動機の重要性を挙げました。このように,プログラムを学ぶということに対して,もちろん自身の興味が重要である一方で,なぜ学ぶのかというところまで考えることの重要性が伝わる回答が多く聞かれました。

また,⁠就職の際,学歴不問と言われるが実際はどうなのか?」という質問に対しては,⁠学歴を見るのは採用側の仕事を楽にするため」⁠小飼氏⁠⁠,⁠学歴以外を評価してもらう手段として,インターンを経験することも良い」⁠渡辺氏)といった回答が上がりました。また,たとえばGitHubにコードを公開していたり,ブログを書いているのであれば,それこそが学歴以外の特異性で,就職の強みになるという意見も上がりました。

次に「今,多くのビジネスでインターネットやITが利用されている中,たとえば,今年のはじめにあったグルーポン問題のように,リテラシーが問われる事件が起きています。この点についてはどう思いますか?」という質問に対し,モデレータの馮から「Microsoftでは教育などにITに関して取り組まれたりしていますがどのように思いますか?」と補足質問をすると,⁠世界と比べて,まだ日本のIT浸透率は低いので,これからもっと高めていくことで,ユーザのリテラシーも上がっていくと思います。そのために,ベンダ側からの積極的な働きかけもしなければなりません」⁠渡辺氏)と,日本の現状に関して,さらなるIT導入の必要性を訴えました。

ここで小飼氏は「そもそもユーザにリテラシーを求めてはいけない。リテラシーが必要なのは,ユーザではなくてベンダ側」というコメントをし,さらに「ユーザ自身が糞には糞(ダメなものにはだダメ)とはっきり言わない限り何も変わらない」と,提供者側に意見を伝える重要性を述べました。この例えについては,⁠結局,きちんと言えることがoccupation(職業)になり,はっきり言わないことがjob(仕事)になってしまう」と,働き方に通ずるメッセージも加えました。

最後は「最近,日本の農家の大規模化が進んでいる中,ITはどのように関わっていくと思いますか」という質問に対し,青野氏が「実はもう日本の農業の大規模化は進んでいて,その中でのITの役割は重要になっています。たとえば,数人の農家であれば情報共有は可能ですが,数十人で大規模な敷地で農業を営む場合,管理の仕方などが煩雑になります。そういうときにIT活用が必要になるのです」と,農業の大規模化,農業のIT化を示唆しました。

一方で,小飼氏は「生産性が上がるということは,実は(働き手にとって)残酷な意味も含んでいます。なぜなら生産性が上がるためには効率化が必要で,⁠人の)職業を減らしてしまう可能性があるからです」と,生産性・効率化・仕事という,今の日本が抱える問題に対し,一石を投じました。また,質問に上がった農業を例に,⁠職業を減らさないためには消費を増やすことが大切。そのための解決策として「農業のエンタテインメント化が進むのでは」という見解を述べ,パネルディスカッションの時間が終了となりました。

参加した学生から多数の質問が上がった

参加した学生から多数の質問が上がった

次回は12月10日に開催

以上,第一部,第二部とも大変内容の濃いプレゼンテーション,パネルディスカッションが行われました。

最終回となる第3回は12月10日に開催されます。参加希望の学生の方は,以下サイトからお申し込みください。

エンジニアの未来サミット for students 2011
http://cybozu.co.jp/company/job/recruitment/recruit/seminar.html

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室部長代理。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属,同誌編集長(2004年1月~2011年12月)や『Web Site Expert』編集長を歴任。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)の責任者として,イベントやWeb・オンライン企画を統括。現在は,技術評論社の電子出版事業を中心に,デジタル・オンライン事業を取りまとめる。社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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