レポート

モチベーションアップにつながるきっかけ作りを――CSS Nite in TAKAMATSU, Vol.6「Webデザイナーのモチベーションアップ」開催

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セッション2:ライク・ア・ローリング・ストーン

セッション2つは,CSS Niteを主宰する株式会社スイッチの鷹野雅弘氏によるセッション「ライク・ア・ローリング・ストーン⁠⁠。

CSS Nite主催鷹野氏のセッション。タイトルの「ライク・ア・ローリング・ストーン」にはポジティブな意味とネガティブな意味がありますが,鷹野氏自身はポジティブな面を意識しているとのことです

CSS Nite主催鷹野氏のセッション。タイトルの「ライク・ア・ローリング・ストーン」にはポジティブな意味とネガティブな意味がありますが,鷹野氏自身はポジティブな面を意識しているとのことです

冒頭で「モチベーションアップをするにはどうすればいいのか」という,今回のセミナーコンセプトに触れ,鷹野氏自身は

  • もっとお金をいただける
  • もっとやりがいのある仕事

この2つが大きな要因になるとし,⁠今回,モチベーションアップという技術論ではないセミナーテーマなので,どうやって具体的にイメージしてもらうか,例としてスイッチの話を紹介します」と,同社の売上および売上構成など,センシティブな内容と合わせてプレゼンを進めました。

数字自体は会場内限定ということでここでは触れませんが,数字の先にある事業継続に関して「最近起業ブームが起こりつつありますが,起業がゴールではなく,大事なのは起業した後,事業を継続していくことです。その継続のために必要なのは,燃料としての仕事。参考の1つとして,大規模案件で仕掛りから現金化まで時間のかかるものを積極的に狙うよりも,短納期支払いサイトの短い案件を多く請け負うことも大切です」という,デザイナーと言うよりは経営者視点からの,事業継続ついて見解を述べました。

そして,⁠その継続をしていくために必要なのが,仕事に対するモチベーションです。では,そもそもとして仕事について考えてみましょう」と,聴講者参加型のワークショップを行いました。

このワークショップでは

  • その1:仕事はどのようにして生まれるのか?
  • その2:じゃ,そのために何をする?何をはじめる?

という2つのテーマについて,数名単位のグループワークの形式で行われました。

その1については,会場から「コストパフォーマンス」⁠クチコミ」⁠信頼関係」などの意見が挙がり,すべてに通ずるものとして「⁠⁠発注側に)あの人がいると思われる⁠あの人⁠になること」としました。そのためにどうするかについては「アウトプット」⁠つながりの強化」⁠小さいことを真面目に請け負う」などの意見が挙がりました。鷹野氏のまとめの中で印象的だったのが「決められた予算が合ったとき,たとえば本来ならば100万円という予算のはずなのに,50万円しかなかった場合,デザイナー側が⁠50万円分の仕事⁠として受けるのか,⁠今回の対価は50万円だとしても)⁠100万円分の仕事⁠と意識して受けるのかで,その後の仕事の発注の質が変わってくることがあります」と,純粋な金額や数字だけで判断せず,その先まで考えて仕事をすることの大切さに関するコメントです。そして「自分の守備範囲にこだわりすぎず,その上でなぜ仕事をするのかを考えること。仕事は人からしか来ないので,人を意識して仕事をすることが大切です」と,本質論・意識論を述べて締めくくりました。

恒例のプレゼント大会。今回たくさんのプレゼント協賛が集まりセッションの合間合間に,CSS Nite恒例のあいこじゃんけん(あいこが勝ち)が行われ,参加者たちがさまざまなプレゼントをゲットしていました

恒例のプレゼント大会。今回たくさんの協賛が集まったそうで,セッションの合間合間に,CSS Nite恒例のあいこじゃんけん(あいこが勝ち)が行われました

スポンサーセッション:Webと電話をつなぐ技術「boundio」

セミナーの折り返しでは,スポンサーセッションとしてKDDIウェブコミュニケーションズが提供する,boundioの紹介が行われました。セッションを担当したのは同社SMB事業本部山本良子氏。

boundioは,さまざまなインターネットサービスに組み込めるクラウドAPI。プレゼン中,山本氏自身のiPhoneに向けて通信を行うデモンストレーションが行われました。現在,月1回,KDDIウェブコミュニケーションズにて勉強会を開催しているそうです

boundioは,さまざまなインターネットサービスに組み込めるクラウドAPI。プレゼン中,山本氏自身のiPhoneに向けて通信を行うデモンストレーションが行われました。現在,月1回,KDDIウェブコミュニケーションズにて勉強会を開催しているそうです

boundioは,インターネット電話機能を有する技術で,現在,⁠架電用API」⁠通話履歴取得用API」が無料版としてBeta公開されています(500ポイント分無料。詳細は公式サイトを参照⁠⁠。

電話をかけたり音声を再生できる他,合成音声の再生も行えるため,たとえばECサイトへ組み込んだり,自社のSNSと連動した機能強化,サーバ監視の自動応答システム構築など,さまざまな利用シーンで活用することが可能です。開発言語として,PHP/Perl/Ruby/Javaに対応しており,デベロッパーツールが配布されています。今春,正式版として公開される予定とのことです。

セッション3:KDDIウェブコミュニケーションズのデザインチームにおけるモチベーション復活劇

後半戦1つ目は,KDDIウェブコミュニケーションズSMB事業本部事業本部長 高畑哲平氏による「KDDIウェブコミュニケーションズのデザインチームにおけるモチベーション復活劇」と題したセッションです。

高畑氏自身が責任者としてチームを編成し,そこで経験したチームビルディングの難しさ,それに対する解決のアプローチを赤裸々に語りました。マネジメントの立場にいる人にとってとても参考になった内容でした

高畑氏自身が責任者としてチームを編成し,そこで経験したチームビルディングの難しさ,それに対する解決のアプローチを赤裸々に語りました。マネジメントの立場にいる人にとってとても参考になった内容でした

このセッションでは,同社が数年前に経験したWebデザインチーム内のモチベーション低下,そこから生まれた問題,解決に向けた課題の洗い出し,解決へのアプローチ,チーム再編とメンバーのモチベーション向上までのアプローチを,実際に取り組んで実践した手法とともに紹介しました。

冒頭,高畑氏が参加者に向けて「今,仕事が楽しいと思う人はどのぐらいいますか?」と問いかけると,会場内ではほんの数名しか手が挙がりませんでした。参加者の多くが,何かしら仕事に対する悩みや課題,不安などを感じていることが多かったようです。その反応を見て「そうは言っても仕事が楽しいことが良いはずです。私たちのチームでは,実際に起きてしまった問題を直視し,それを解決し仕事を楽しくすることを実現するために,いろいろな取り組みを行いました」と,セッションを続けていきました。

同社のWebデザインチームは,数年前はどうやってもうまく回らないケースが頻発し,加えて限られた人材リソースによる業務圧迫といった負のスパイラルに陥ってしまったと高畑氏は振り返ります。また,同社の事業において,ソリューション開発とWebデザイン・Web制作の関係が受発注の関係になってしまっていたこと,それによる(Webデザインへの)軽視が起きていたことも問題として掲げました。

そこでまず取り組んだことの1つとして,配置すべき人材の適性調査だったそうです。具体的にはYG性格検査(矢田部ギルフォード性格検査)と呼ばれる検査方法を採用し,チーム内のメンバーに実施,各人の個性・内面などを数値化し分析を行ったとのこと。

実際に当時のチームで分析したところ,リーダーに向かない人間をリーダーに配置してしまっていたことがわかったそうです。高畑氏はそのことを「当時はリーダーに向かない人間をリーダーにしてしまっていました。結果として,⁠向き不向き関係なく)仕事の成果だけを求めてしまい,その人物は仕事をやらされている感が強くなり,また,そのためチーム全体が機能しなくなったのです。役割を最優先に考えてしまっていたのですね」と振り返りました。

この検査をした後は,まず,チーム全員の資質を把握し,どういったポジションに適正があるか,その上で能力と突き合わせてチーム構成を変更を行い,

  • 主体的に変化できるようになった
  • アウトプットのスピードが向上した
  • サイトの数値結果が向上した
  • 社員ひとりひとりの精神的な状態が改善した

という効果が見られたそうです。

その他,前述したWebデザインへの軽視については,中途として採用したWebデザイナーに社内向けのプレゼンをしてもらったとのこと。

「⁠⁠Webデザイナーから)社内のエンジニアに向けてWebデザインの勉強会を開催するなど,Webデザインの意義や価値,Webデザイナーの地位向上に向けた施策を行うことで改善に取り組み,今まさにその成果が見えてきています」と高畑氏はコメントしました。

最後に「人は感情を持った生き物です。ですから,⁠数字や役割だけでみなすのではなく)人としてどういう仕事をするのか,できるのかを考えることが大切です。そして,モチベーションを上げるために,その根底にある⁠納得感⁠をどれだけ共有できるかがとても大切になります」とまとめました。

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室部長代理。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属,同誌編集長(2004年1月~2011年12月)や『Web Site Expert』編集長を歴任。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)の責任者として,イベントやWeb・オンライン企画を統括。現在は,技術評論社の電子出版事業を中心に,デジタル・オンライン事業を取りまとめる。社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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