レポート

“ピボット”して未来につなげる――失敗カンファレンス2012開催

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マーケットを見ること

同時期に登場し,ともにシェアを獲得できなかった2つのブログサービス,⁠nowa」「Vox⁠⁠。これらの振り返りに対し,モデレーターの山崎氏は「同時期,同様なコンセプトのブログサービスでも,失敗した原因はまったく違いますね。では,これらを通じて,失敗しないようにするために何が考えられるでしょうか」と,次のディスカッションの話題に進みました。

満席となった会場

満席となった会場

まず,赤松氏から「開発者,とくにエンジニアが考えるサービスというのは,自分自身が熱くなれるものになりがちです。また,トップエンジニアと言われれば言われるほど,企業の中で埋もれたくないという気持ちが強く,人脈ネットワークが大きい一方で,周りの一部のエンジニア・クリエイターたちにのみ受ける,内輪なサービスとして盛り上がってしまう傾向があります。結果として数万人のコアユーザぐらいで限界を迎えてしまいます」と,開発者手動のサービスの難しさについて述べました。

一方,この点は清田氏も実際のサービスを例に挙げ,⁠FacebookやTwitterはもともと開発者のモチベーションで生まれたサービス。その後,マーケットを見る人間が加わったことで,いかにシェアを大きくするか,その戦略を間違えなかったから今のような規模になっているわけです。ですから,開発者のモチベーションに頼って大きくするというのは王道パターンであると言えますが,広げる部分を意識する必要はあります」と,開発者のモチベーションを肯定しながらも,マーケッターの重要性について訴えました。

サービスの終わらせ方と未来へのつなぎ方

もう1つ,仮に関わったサービスが失敗した場合,関係者にとってはクロージングも重要な仕事になります。この話題についても話が進みました。

「自分は当時nowaの終了を見る前に他部署に移ってしまったのが心残り。今回,この場で振り返り,見なおすことができたことでようやく供養ができました」⁠佐々木氏)「失敗したとき,クロージングにかかる労力を維持するモチベーションが一番難しいです。クロージングのような撤退戦では,とてもドロドロした雰囲気になりますが,結局そこは責任者が責任を追わざるを得ないですね」⁠関氏)など,いずれもクロージングの難しさと同時に大切さ,マイナスなことに対するモチベーションの維持について述べました。

尾下氏は「関さんがおっしゃるようにそのモチベーションは重要。ただ,仮にサービスがクローズしたとしても,そこで得られた経験を次のサービスにつなげられれば良いという考え方もあります。いわゆる⁠ピボット⁠の考え方ですね」と,失敗を失敗に終わらせないマインドを持つことの大切さを伝えてくれました。

そして,⁠サービスそのものは非連続になるかもしれないが,人やアセット(資産)は連続性を持たせられるものであり,持たせなければいけません」⁠尾下氏)と,サービスに限らず,事業をしていく上で大切なポイントにも触れられました。

赤松氏は「金がなくなったら終わりというのは資本主義の基本なので,利益を出していくことは大事ですが,そのためにはモチベーションを維持することが大切です。モチベーションを持てる状態を考えることで,結果もついていくると思います」とまとめました。

同じく清田氏も「モチベーションは大事ですね。仮にサービスが終わるとなったとしても次につながるように(開発者・企画者たちの)モチベーションを上げておきたいです」とメッセージを残しました。

失敗を失敗で終わらせないために

パネリストのそれぞれのコメントを踏まえ,山崎氏は「まず,失敗の要因として共通して上がったのがマーケティング視点とモチベーション。そして,仮に失敗した場合に次につなげる意識が大事ということがわかりました。これはWebサービスに限らず,すべてのことに通ずるのではないでしょうか。⁠もしWebサービスが失敗したとして)結局,なくなったお金は戻らないわけですから,その残ったお金あるいはリソースでどう儲けていくか,それが事業展開の肝でもあります。後悔するのではなく,次を見据えること。今日のディスカッションのまとめはこのあたりにあるのではないでしょうか」と,モデレーターとして締めくくりました。

以上,パネリストたちの生々しい体験談とともに失敗について熱く語ったトークセッションが終わりました。山崎氏のまとめにもあったように,失敗を失敗のまま終わらせず,次につなげる意識を持つこと,⁠ピボット⁠の意識,それが失敗したときに一番大切なことなのかもしれません。

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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