第3回テックヒルズ「2012..Flashの終焉!? ~Flashの今後を見抜く~」実施レポート

2012年8月29日、CROOZ⁠株⁠主催「第3回テックヒルズ」がアカデミーヒルズ(六本木ヒルズ内)49階(タワーホールA)で開催されました。

第3回目のテーマはアドビシステムズ⁠株⁠を招き、⁠2012..Flashの終焉!? ~Flashの今後を見抜く~」という大胆なテーマで開催されました。

Flashテクノロジーの今後とあなたの人生とのかかわりについて

まず最初に、Flashと言えばアドビということで、アドビシステムズ⁠株⁠の太田禎一氏が登壇しました。

太田禎一氏
太田禎一氏

太田氏といえば、マクロメディア社時代よりDirector、Flashなどのデザイン・開発ツールのプロダクトマネジメント・マーケティングを担当し、アドビシステムズとの統合後は、Flash PlatformとWeb標準技術を基盤としたデジタルコンテンツ制作・メディア配信技術を中心に、アドビシステムズの最新テクノロジーの訴求活動を行っているいわば「本家本元」として、⁠Flashテクノロジーの今後とあなたの人生とのかかわりについて」お話しいただきました。

「着実に減っている」

太田氏は最初に「頼んでもいないのに各所から皆さんが予言をしてくれる」と言いながら、⁠AppleがFlashに勝つ」⁠Flashは死んだ」と題したサイトなどを次々と紹介しました。

次にUsageTrendsなどの市場数字を用いてSWFObjectを含むWebページ比率の遷移を示しながら、着実に減っている理由は、⁠Flashの役割がシフトして『適材適所』が進んでいるため」と述べました。実際に減ったと示しているのは「表示エフェクト、スライドショー」に関するもので、たとえば著作もののコンテンツでは現在でも多く利用されていると指摘しました。

また気になる部分として、HTML5における市場シェアを同サイトより取得したものを示し、先に紹介したFlashは「大きく減らして」9.5%に対して、HTML5は「大きく伸ばして」0.62%である部分にフォーカスし、

「まぁ、あれでFlashが死んでんならHTML5ビデオ始まってもいないってか?⁠

と、会場を盛り上げました。

Adobeがフォーカスする方向

多くのガジェット、ブラウザなどが乱立する現在、デスクトップPC、スマートフォン、既存フィーチャーフォンは全て重要で、特にスマートフォン、フィーチャーフォンは今後数年にわたっては重要と位置づけたものの、その数年「の先」は先細りになるであろうとの危機感を示しました。

その危機感より、Adobeは以下の2つの分野にフォーカスをするとのことです。

プレミアムビデオ
堅牢なコンテンツ保護
AAAゲーム
最高品質の3Dゲーム、軽快な2Dゲーム、GPUを最大限活用化

AAAゲーム側の取り組みについてのより詳細なお話として、ゲームプラットフォームのインストールベースの規模についての資料を見せながら「合い言葉は⁠Webブラウザのゲームコンソール化⁠⁠」に取り組むとし、実際に高機能プロファイラ「ProjectMonocle(開発中⁠⁠」や「ActionScript⁠Next⁠(開発中⁠⁠」に注力していく方向であることを示しました。

Adobeがフォーカスしない方向

フォーカスする分野を示す一方、現時点で具体的に以下の分野はAdobeが投資をしないと明言しました。

  • スマフォアプリ以外のモバイルFlash開発
  • Flash Lite対応(Device Central含む)
  • ActionScript2以前の言語
  • GPU対応しない従来のDisplay Liteレンダリング

4つの分野を細かく書きましたが、結局のところ「Flashモバイル撤退」でということです。しかしながら「撤退はモバイルブラウザプラグインのみ」「モバイルFlashテクノロジーはスマートフォンアプリ技術開発(AdobeAIR)として進化し続ける」と明言しました。

HTML5の世界へ

HTML5対応に関しては、その流れは否定しないものの、さまざまな問題があるという点も認識しなければならず、これから1、2年は「自己責任」のフェーズになるだろうと述べました。

  • PCとモバイルで別世界のHTML5(WebGLなど)
  • HTML5のモバイル実装が不安定(Canvasなど)
  • Flashレベルで使いやすいHTMLツールが(まだ)ない
  • 決定的なワークフローが存在しない

現時点での具体的な点として上記を挙げたものの、⁠それでも(HTML5の世界へ)行くしかない」という実情より、Flash→HTML5変換の試みに触れました。ProjectWallaby、FalconJS、Flash Pro + Toolkit for CreateJS、Swiffy、ExGame、Reelなどを紹介し、現時点では「銀の弾丸」はなさそうであるとしました。

はじめからHTML5+JSでも良いのでは?

最後に「はじめからHTML5+JSでも良いのでは?」という点については、⁠世界中の才能あるクリエイターとのコミュニティ」というアナログ的な部分を紹介し、これが今までFlashに携わっていた技術者のノウハウであり、⁠Flashの肝は人間、才能あるクリエイターとのコミュニティが既に形成されている。立ち止まらなければ、Flashの未来は明るい」と締めくくりました。

Arctic.js開発者から見るFlasherの未来

続いて、⁠株)ディー・エヌ・エー(以下DeNA)の近澤 良氏が登壇し、⁠Arctic.js開発者から見るFlasherの未来」と題しましてお話しいただきました。

Arctic.jsといえば、DeNAがHTML5開発支援フレームワークとしてオープンソースで公開されているもので、

  • 豊富なアニメーション作成支援機能
  • 表示ツリー、イベント伝播モデル
  • ActionScript3.0*4と近いAPI による、Flash 開発経験者の学習負担軽減
  • 各種スマートフォン OS の断片化を吸収し、開発工数を大幅に削減

を目的として提供されているものです。今回、このArctic.jsの実開発者よりFlasherの未来についてお話がありました。

近澤 良氏
近澤 良氏

まずFlashは、非常に優れたツール、デザイナーとプログラマの分業、クロスプラットフォームを実現すると語り、ご自身も「Flashは大好き」と述べつつも、反面iPhoneの登場でflashが、続いてAndroidも今後はFlashプラグインの提供打ち切りとなったことから、クロスプラットフォームという部分に陰りが出てきたと説明しました。

上記を受けて、DeNAの取り組みを紹介しました。

SWFランタイム

ExGame
JS製FlashPlayerでLite1.1が「ほぼ」動く。mobageプラットフォーム内に多数のリリース実績を持つ。
Pex(PostExGame)
非常に早い(実際の再生デモを披露⁠⁠。JavaScriptで操作。今後のスタンダードに。

Flashライクに開発(Arctic.js)

スマートフォンブラウザ向けゲームフレームワーク。JavaScriptからHTML5のCanvas要素を利用。AS3ライク、MITライセンス

また、実際のArctic.jsのアーキテクチャについては、オブジェクト指向、イベントモデル、ディスプレイツリーを採用し、Flashのムービークリップを再現しAS3ライクを実現していると説明しました。パフォーマンスに関してもArctic.jsを利用したタイトルのデモを披露し、60fps近くのパフォーマンスを実現している部分をアピール。特にキャンバスのパフォーマンスがあがってきているので安心して将来性が期待できると期待を寄せていました。

最後にFlasherのこれから

まず、Flasherとは、⁠気持ちのよいアニメーションが作れる」⁠インタラクティブなプログラミングが得意」⁠UIに関する知識が豊富」と定義。なにより「フロントのエバンジェリスト」であると認識し、技術についてはHTML5を選ぶだろと紹介しました。

FlasherがHTML5を選ぶ理由として、⁠キャンバス、CSS3の表現力向上」⁠JavaScriptとActionScriptは非常に似ている(スキル転換が楽⁠⁠ミドルウェアやツールが増えてきている」など利点を挙げました。 さらに、JavaScriptのライブラリ群、アニメーションツールもキラーは見当たらないものの確実に増えては来ているため、今後に期待できると話しました。最後に「スマホの需要にどこまで応えられるかが鍵」としてプレゼンを締めくくりました。

パネルディスカッション

第二部は先に登壇したAdobe、DeNAのお二人にCROOZ、gloops、gumiというメーカ、プラットフォーマーを加え、あらかじめ用意されたテーマに沿って議論が交わされました。

今後Flashが必要なのか?

gumi:gumiではフィーチャーフォン向けを作ってから転換しています。まだまだフィーチャーフォン向けの対応が必要であり、編集ツールとしてFlashは非常に優秀と思います。

Adobe:現在でも圧倒的にFlash Lite1.1が使われており、最大のパイに対してリーチをのばすのは自然だと思います。

DeNA:PCサイト向けのFlashはどうなるか? 求められているものは変わってきている。技術者はどういう方向へ進んでいくのか?

CROOZ:Flashが終わったら全てが終わる訳ではないと思います。Adobeさんに頑張っていただいてHTML5変換ツールを作っていただければ長期安泰ではないでしょうか?

gloops:ひとくくりでFlasherといっても広いと思います。その中でどういう方向で行くのか?個人的には演出に特化していかなければならないと思います。プログラミングに特化していく方向もあるが、フロントのスペシャリストでありたい。

総論:フロントエンジニアとしては必要である。適切な技術にコンバートする必要もある。

今後のモバイルソーシャルゲームのFlashについて

gumi:GREEプラットフォームではここ1年でソーシャルゲームのFlashが変わったと感じています。 Flashの操作によって、たとえばタイミングによって魚が釣れる…などから表現力(ムービー)に特化したツールになった感じがします。

CROOZ:確かに演出に特化してしまった気がしますね。ゲーム性が必要ならFlasherから提案していくべきだと感じています。

Adobe:デスクトップでゲームコンソールより優れたゲームができる事を目指しています。技術としてはゲームコンソール向けでもモバイルでも同じような事ができます。ただ、収益性のよいゲームはそれほど動かなくても、操作がなくても良くなっていると思います。ただ、技術としてはできるので、いろいろと挑戦し、開拓してほしいですね。

gloops:ゲームを深くやるというよりもちょっとした時間を使って遊んでくださっているというユーザ目線は重要。ただ、今後リアルタイムバトル、さらにその次の波を見越して新しい仕組みを作っていきたいです。

Flashを用いない開発手法について

gumi:flashと同時に吐き出してくれるようなツールなどでしょうか?

Adobe:弊社では今の所Edgeでしょうか? CSS、JavaScriptを知っていればすんなり入れます。ただ、今ではコマアニメができない。まだpreview版なので是非成長を見守ってほしいと思います。

DeNA:なぜ、タイムライン、開発言語部分を分離したのでしょうか?

Adobe:新しい、本当に使いやすいを目指しました。他に良いツールがあるならそれに任せたかった。ボタン一発の便利な変換は現状ではできないのですが。

DeNA:EdgeはPCとモバイルどちら向けなのでしょうか?

Adobe:元々はモバイル向けです。

DeNA:create.jsについては今後どうなるのでしょうか?

Adobe:Flashに慣れた人のJavaScriptライブラリというスタンスはかわらないと思います。 コミュニティが正しい相性、実装などを選択してくれ続けると思います。

おわりに

Adobeやプラットフォーマーなどの開発者より直接話を伺う貴重な機会でしたが、実際に利用する(今回の場合はソーシャルゲームベンダ)は、自社の体制など、世間話にフォーカスしてしまった部分は少し残念でした。第二部に関してものディスカッションに対する結論が出ないまま次のテーマへ移ってしまったり、全体的に物足りなく思う空気が流れていた時間帯もありました。

せっかくの機会だったので、技術を深堀りしたり、特定分野の議論を重ねるスタイルにして、SAP側よりバグの改善点や、機能の要望、ツールのベンチマークやデバックツールの提案など活発な提案などがあれば盛り上がったのではないかと思います。

次回は10月頃の予定で「UI,UXの衝撃」をテーマに開催されるとの事ですので期待したいと思います。

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