レポート

INBOUND MKTG 2013 TOKYOレポート(その2)~見込み客育成,人を惹きつけるクリエイティビティの価値

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パネルディスカッション3:Thinking Lovable Content and Marketing 『人を惹きつけ,愛されるためのマーケティングとは?そのためにマーケターが身につけるべきクリエイティビティとは?』

3つ目のパネルディスカッションの冒頭,高広氏はマーケティング活動とは人に愛される活動として考えて行かなければならないという述べ,インバウンドマーケティングの直接の実践者じゃなくとも,どうやって読者に好かれるようなコンテンツを作るのか,どうやってサポートをしていくのかといったような観点で活躍する,交わりのないゲストをパネリストに迎えたディスカッションが始まりました。パネリストは,good design company水野学氏,株式会社インフォバーン増田隆幸氏,コミュニケーション・デザイナー河野武氏の3名です。

パネルディスカッション3の様子

パネルディスカッション3の様子

消費者は普通のものを見たい。顧客が見たいものを見たいタイミングで丁寧に見せる

水野氏は徹底的にシズルにこだわっていると言います。化粧品なら化粧品のシズル,カメラならカメラのシズル。つい,広告会社やメーカの人は毎日同じものについて考えていて飽きてしまうがゆえに,反動としておもしろいものを作りたくなってしまいます。しかし,実は消費者は普通のものを見たい,そこにギャップがあるというのです。顧客が見たいものを見たいタイミングで見せるためにシズルにこだわっていると語りました。

機能デザインと装飾デザインの2つがあり,機能デザインは当然満たせるべきもの。たとえば腕時計というものの基本機能は100年前からほぼ変わらないが装飾性を求めて今も買い求めてられています。一方,装飾デザインとは,たとえばスパゲッティを食べるときの気分はどんな気分だろう,どんな皿で食べたいだろう,どんな背景だったら食べたいだろうといったような細かなことを丁寧に考えることを意味します。

インバウンドマーケティングと同じなのは精度であると同氏は説明しました。つまり,どれだけ丁寧にものをアウトプットできるか,あなたのものですよといってあげることができるのかという精度の時代に入ってきているとのこと。

差別化を推し進めた結果市場のドーナツ化が起こっている

ここ10年で従来の広告,マーケティングと今のクリエイティブで最も大きな変化とはという高広氏の投げかけに対して,水野氏は市場のドーナツ化を挙げました。市場のドーナツ化とは,差別化,差別化といってドーナッツのまわりの部分ばかり出てきて,実は消費者はドーナツの穴の部分を食べたいのではないのか。こういった状況が80年代から2000年代まで加速してしまったのです。真ん中を訴求している会社としてはファーストリテイリング社,無印商品などがあり,そういった会社が伸びていると語り,そういったところを修正する作業を丁寧にやっていると持論とともに紹介しました。

企業側が身に付けるべきクリエイティビティ,リテラシーとは

マーケッターはデータドリブンだけでなく幅広い知識を

水野氏はデザインがユーザのために最適化されているかを企業側が見極めることは大切なこととし,センスは知識で学ぶことができるものと言い切っています。ネットのマーケティングはデータドリブンが中心になっている一方で,必要なリテラシーはそれ以外にも増えてきており,デザインはその1つと高広氏は続けました。

本セッションタイトルである「人を惹きつけ,愛されるためのマーケティングとは?そのためにマーケターが身につけるべきクリエイティビティとは?」に通ずるもので,マーケッターは得意分野を増やしていくことが大切と語りました。

読者側のリテラシーが上がってきている中で,企業側がどのようなリテラシーを身につけなければならないか

企業側はサービス,製品のプロではありますが,情報提供というところではどういうスタンスを取るべきなのかはこれからの課題だと思っていると増田氏は語ります。この課題に対して増田氏の取り組みとして,下から目線を実践しているそうです。どういうことかというと,ものによっては読者のほうが詳しいという状況がある中で,客観的というのではなく,私はこう思います,という視点を出していくこと。つまり,提供側が,読者とコミュニティの一員として,自分たちの意見を出しながら,さらけ出していく覚悟を持ているかどうかが大事だと語りました。

アクティブサポートにおいてはある程度のルールと塩梅,そして精度

困っている人がいて,企業がその対応をするときに公的,客観的に話しかけるのが良いのか,人として,主観的な形で人の付き合い方をすればいいのか,という問いが高広氏から河野氏に投げかけられました。これに対して,河野氏は,すべての人に同じルールではないが,すくなくとも一番最初に話しかけるときには,あまり馴れ馴れしくなりすぎないように,かといってよそよそしすぎてもいけない,そのバランスが大切と答えました。

アクティブサポートの研修時には,まず,話しかけるべきかの判断をするトレーニングをします。この人は話しかけることを望んでいるのか,話しかけられて不快ではないのかを判断する力が重要で,その判断材料に過去のTweetなどを見てどれだけフランクに話しかけていいかの塩梅を決めていると答えました。

ただし,ある程度の型を作らないと現場が困るので最低限のルールは作っているとのこと。たとえば,顔文字。河野氏は音符マークと星記号は使ってよく,その他は企業の代表者が使うには不適切とした事例について語りました。その細かさは,☆はOKで★はNGであるというレベルにまで及びます。こういった印象差まで設計することが大切なことだと同氏は考えています。水野氏はこの違いについて,先に同氏が述べた精度の時代はまさにここにあり,こういったところは声にはならないが人は必ず認識していて,人が人の顔を記憶する能力として,同じ顔なのに1万人ぐらいは認識できる,この能力をばかにしていませんか?という例をよく話すそうです。こういった精度にこだわることはとても大切なことだと続けました。

好かれるコンテンツ,クリエイティビティを実現するうえでどういう考え方,姿勢が重要か

上記質問に対して,各登壇者から以下の回答が挙がりました。

水野氏:消費者を仲間に入れること。水野氏が関わった,NECカシオモバイルコミュニケーションズ社のメディアス知名度UPを目的としたキャンペーンを例にとり,お笑い芸人に消費者が一緒になってどっきりをしかけるという仕掛けを行いました。この仕掛けは自分たちが使われているのではなく,自分たちが参加しているということを意図したものでこういった消費者を仲間に入れることが大事なのです。これはコンテンツの内容ではなく,コンテンツの機能を考えるということと語りました。

水野氏が関わったキャンペーン

水野氏が関わったキャンペーン

増田氏:水野氏と同じく,共犯関係,巻き込むということが大事とのこと。これは本セミナーでいわれているAuthentic(嘘をつかない)ということであり,すなわち本音トークです。自社の例では,読者モデルの本音トークは中身が面白いというだけでなく,読者からのツッコミを受ける。これは少し隙を作るということで,弱みを見せていることでもあるわけです。企業側が発信したい情報と読者が知りたい情報とのギャップは,同じくクライアントも巻き込む努力をしています。ただ,納得の面でも一度作ってみて,担当者とすり合わせていくこともしているそうです。

河野氏:巻き込む,隙を見せる,プロセスを見せるというのは1つの切り口としては良いと思います。同氏が取り組んでいる事例として北欧雑貨のECを行うクラシコムを紹介しました。同社はコンテンツマーケティングに取り組んでおり,ブログ執筆,小冊子を発行しています。

クラシコム

クラシコム

同社のブログ運営では自分が書きたいことではなく,みんなが読みたいものでもなく,⁠自分が読みたいこと」を書くという軸で考えていると言います。コンテンツを作ろうという中で,この「自分が読みたいこと」を書くということでうまくいくのではないかと語りました。

クラシコムでは,業務の一環としてブログを書いているため,みんなが読みたいものを追いかけ続けるとものすごく大変で続かなくなってしまうそう。しくみとして継続可能であることが業務として実施するうえでは大切なこととも語りました。

以上,INBOUND MKTG 2013 TOKYOのイベントレポートをお届けしました。イベントレポート冒頭で書かせていただいたとおり,インバウンドマーケティングを考える上で,答えを聞くカンファレンスではなく,考えるカンファレンスであるため,なるべく端折らずレポートさせてもらいました。次回は最後に少し私が今,インバウンドマーケティングに思うことを書かせていただこうと思います。

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著者プロフィール

和田嘉弘(わだよしひろ)

インテリジェントネット株式会社COO/WebSig24/7代表。

大手企業のコミュニケーションデザイン,コンサルティング,制作に多数携わる。2004年に業界団体WebSig24/7を立ち上げ,WebSig1日学校など参加型の勉強会を主催。

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