大阪発信の注目サービス・プロダクト・取り組みが盛りだくさん!――大阪近郊で作られているIT系のサービス・商品をアピールするイベント「Shoot from Osaka(n) vol.4」開催

2013年3月22日、オオサカンスペース主催のイベント「Shoot from Osaka(n) vol.4」が開催されました。

本イベントは、大阪の企業にフォーカスを当て、地元IT企業によるプレゼンテーションと交流パーティで構成された地域活性のためのイベントで、今回で4回目の開催となります。

本イベントの世話役である株式会社EC studio スペース大崎弘子氏は、イベント開催の背景について、

  • IT関連の東京集中に対する大阪からの課題意識
  • ピッチやLTに慣れていない方へのサポート
  • 「大阪発世界へ」の起点となる

ことを目指しているそうで、Shoot名前には、⁠言葉の意味に含まれる)打つ以外に、⁠語呂から)シュッとするという意味を込めている」そうです。

開催の挨拶を述べる大崎弘子氏
開催の挨拶を述べる大崎弘子氏

今回で4回目となるイベント開催に先立ち、⁠さらに盛り上げて行きたいと思います!」という意気込みを込めて開会の挨拶が締めくくられました。

電子系女子から公募校長まで、全11組の濃厚なプレゼン!

今回のShoot from Osaka(n)では、スポンサードセッションを含め、全11組のプレゼンテーションが行われました。まず、各プレゼンテーションを紹介していきます。

まさかの電子部品でギーク&キュートなアクセサリー

トップバッターを務めたのは、電子アクセサリー販売さのものを運営しているWebディレクターの石田さち子氏。

さのもので取り扱っている電子アクセサリーの紹介を行いました。電子部品を選んだ理由として、⁠機械っぽいかっこ良さ」⁠色が可愛い」⁠数字や模様が意味深で素敵」など、ご自身の観点で見た電子部品の魅力、そして、それを活かしたアイテム制作について発表しました。

石田氏は自身が制作したアクセサリーを身に付けての登場
石田氏は自身が制作したアクセサリーを身に付けての登場

販売には、いま注目のBASEを採用しており、それまで使っていたSTORESと比較して、⁠無料版での扱えるアイテム数」「Facebookなどソーシャルメディアを利用した情報発信」に魅力を感じて乗り換えたとのこと。

大阪市主催のものづくりイベントを企画・設計・運営し、そこで学んだ大阪のものづくりの今と未来について

続いて登場したのは、株式会社ジーオービーの谷口正樹氏。谷口氏は大阪でのものづくりの活性化を目指し、さまざまなイベントを企画しています。今回は、1月26、27日に開催されたものアプリハッカソン!!を紹介しました。

「まだまだハードウェアの波に気づいていない人が多いのではないか」とさらなる盛り上がりに期待する谷口氏
「まだまだハードウェアの波に気づいていない人が多いのではないか」とさらなる盛り上がりに期待する谷口氏

谷口氏は「行政主導でもいろいろなことができると思い、イベント企画に取り組んでいます。今回紹介したものアプリハッカソン!!には、44名の参加者が集まり、いろいろなものが生まれました。開催してみて感じたのは、集まる人が集まればたった2日でもすばらしいものが生み出せるということ。ソフトウェアにはない、ハードウェアの楽しみを伝えていければと考えています」と、最近の『Makers』などに通ずるハードウェアブームの波に乗りながら、大阪からのものづくりを活性化させたい意気込みを紹介しました。

完璧な翻訳アプリ、翻訳成功率が夢の100%

3番目に登場したのは、すでに多くの企業への導入実績を持ち、ビジネスとしてさらに拡張を目指す翻訳アプリ・サービスを展開する株式会社アールシステム取締役篠原裕幸氏。

同社ではTelTellコンシェルジュというiPad/iPhone/iPod touch向けの翻訳アプリ・サービスを提供しています。翻訳に取り組んだ背景には「インターネットの登場、進歩により時間と距離(の概念)は死んだが、言葉の壁というのはなくなっていない」⁠篠原氏)という状況があり、TelTellコンシェルジュでは、人力の翻訳を利用しながら、ユーザが簡単に他言語でのコミュニケーションが図れるようにサポートします。

今回の発表の中で、最も完成度が高く、すでにビジネスとしての軌道が見えていたTelTellコンシェルジュを紹介した篠原氏
今回の発表の中で、最も完成度が高く、すでにビジネスとしての軌道が見えていたTelTellコンシェルジュを紹介した篠原氏

すでに東京メトロやJR・私鉄各社、その他明治神宮などの寺社を含めた観光地など、海外からのお客さんが多い企業や場所で採用が決まっており、これまでの実績で平均7分で翻訳を完了できるようになっているとのこと。

今後は、翻訳を担当する外国人ネイティブの方に資格を取ってもらって翻訳の品質を高めたり、実際の旅行をテストケースに個人向けサービスも拡充しながら、アプリ全体の品質向上を目指していくそうです。

日本人学生の留学をサポートする新しい就活インフラ

続いても、海外展開を意識したサービスが登場しました。4番目に登場したのは、株式会社i-plug取締役 田中伸明氏が紹介するOffer Box Globalです。

田中氏は、ここ1、2年で日本人留学生が減っていることに危機感を感じており、⁠いろいろなところでグローバルと言われているのに、数字だけ見ると逆になっていることが怖い」と思い、若い人たちの挑戦が増えるようサポートするためにこのサービスに取り組んでいます。

田中氏自身、4月のオファー解禁を楽しみにしているとのこと
田中氏自身、4月のオファー解禁を楽しみにしているとのこと

基本的には、日本の企業が現地採用(日本人留学生)を行いやすくすることで、日本人留学生と海外展開を目指す企業の利害を一致させることを目的にしています。

今後、50社のパートナーを目指し、この4月1日からいよいよオファー解禁となるので、展開が楽しみです。

「東大阪の町工場とWebベンチャーが融合されるような場作りを」目指す、ITisKansai

5番目は、今のノマドブームに一石を投じたいと語るITisKansai代表神田智広氏が登場しました。昨今、各種メディアでノマドブームが取り上げられている一方で、ITやWebの世界に関しては、東京一極集中となっているのが実状です。また、関西には、たくさんの大手メーカ企業があるのにイマイチ盛り上がりに欠けており(神田氏⁠⁠、こうした現実をふまえて、⁠もっとさまざまな分野の人が交流して、お互いの強みを活かし合うべき」と神田氏は語りました。

過去のイベントには家入一真氏や伊藤健吾氏などスタートアップを盛り上げる顔ぶれをゲストに迎えており、神田氏は「これからももっと盛り上げて行きたい」と力強く語った
過去のイベントには家入一真氏や伊藤健吾氏などスタートアップを盛り上げる顔ぶれをゲストに迎えており、神田氏は「これからももっと盛り上げて行きたい」と力強く語った

その取り組みの1つとして、東京からのITやWebに関するゲストを招いて大阪でのベンチャー向けイベントを開催しています。第1回は昨年に、また、今年2月には第2回を開催し、盛況のうちに幕を閉じたとのこと。

4月6日には、ITisKansai Vol.3ゼロからモノを作るの開催が予定されている他、6月にはサムライベンチャーサミット神戸が開催されるそうで、こちらにも注目したいところです。

Facebookページで20万いいね!を誇る超人気訪日客向け情報サイト⁠ラーチーゴウ日本⁠の革新的アプリ「這邊走!(こっちやで!⁠⁠~もう地図はいらない~

続いて登場した株式会社はぴふる吉田皓一氏は、世界展開の中でも、とくにアジア、台湾や香港にフォーカスした取り組みを行っています。吉田氏自身が台湾に注目していることと、最近は台湾や香港からの観光客が増えていることからサービスに取り組んだそうです。

ラーチーゴウとは、レッツゴーの当て字とのことで、楽しむ・食べる・買うという行動をサポートします。同氏の取り組みではソーシャルメディアを積極的に採用しているのですが、これは台湾や香港の方たちがFacebookがとても好きであるという調査結果によるものだとか。

吉田氏は、猪俣氏に会って「このエンジニア」だと感じたそう
吉田氏は、猪俣氏に会って「このエンジニア」だと感じたそう

今回の発表では、エンジニアの猪俣充央氏と一緒に開発している観光支援アプリ「這邊走!(こっちやで!⁠⁠」の紹介が行われました。絶賛開発中とのことで、4月中旬頃のリリースが予定されているので期待しましょう。

残光でデザインするという考え方

ここまでは実ビジネスや生活に密着したサービス、アプリが多く登場してきましたが、続いては大学の研究成果が発表されました。

ティエムファクトリ株式会社代表取締役でもあり、 京都大学研究員のMasa Yamaji氏が取り組んでいる残光の研究とその成果物です。多くのメディアで「発光」に関しては取り上げられる一方で、ここ日本では「残光(光を貯え暗闇で光るもの⁠⁠」への注目度はまだまだ低いと言えます。その中で、日本を含め世界でもトップレベルの研究を行っているYamaji氏が現時点での残光研究の成果、また、それを活かした成果物として残光絵の具を制作するなど、ITとは少し離れた内容で興味深い発表が行われました。

Yamji氏の発表は、アカデミックさとアーティスティックな雰囲気が混ざっていた
Yamji氏の発表は、アカデミックさとアーティスティックな雰囲気が混ざっていた

今後は、赤残光の研究開発やインタラクティブなネットショップの他、建築物やイルミネーションへの転用などを考えているそうで「私たち研究者の立場では、技術の研究を追求していましますが、今回のような場で、プログラマーの方やプランナーの方など、多くの方たちと交流して、残光の新しい使い方を考えて行きたいです」と、他業種との積極的な交流を行いたい意向を伝えました。

ChatWorkの今後の展開

チャットワーク株式会社谷川周平氏

いよいよ発表も残りわずかとなったところで、今回のイベントを支えるスポンサー企業のチャットワーク株式会社から、谷川周平氏のプレゼンテーションが行われました。チャットワークは大阪発のサービスとして、世界展開を行っています。現在、3年目に突入し、15万ユーザを突破したとのこと。最近は月間10,000ユーザを獲得しているそうです。

とくに注目したいのが、有料転換率の高さで、⁠具体的な数字は出せないのですが、DropboxやEvernoteと比較して3倍以上の有料転換率になっています」⁠谷川氏)と、フリーミアムモデルでの成功を伝えました。

まだまだこれからと、チャットワークのさらなる成長を目指す谷川氏
まだまだこれからと、チャットワークのさらなる成長を目指す谷川氏

今後は、現在展開しているシリコンバレーでの取り組みに加えて、シンガポールや台湾などのアジア展開を強化していくそうです。

電話リマインダー『未来電話』

再び通常発表に戻りました。次に登場したのは、株式会社KDDIウェブコミュニケーションズと提携し、4月17日にはTwilio Japan Summitを開催するなど、いよいよ本格的な日本展開が予定されているTwilioの無料通話APIを利用した電話リマインダー「未来電話」です。

未来電話を開発したのは、株式会社アナザーブレインの久田智之氏。前述のイベント世話役の大崎氏と検討しながら、かなり短期間で開発にこぎつけたそうです。

久田氏は、⁠大崎さんと話していたらこういうアプリができました」と、開発裏話にも触れた
久田氏は、「大崎さんと話していたらこういうアプリができました」と、開発裏話にも触れた

このアプリケーションは、時間を指定して電話メッセージを送る(かける)ことができるもので、たとえば、主婦が洗濯物の取り込みを自宅の子どもにお願いしておいたり、あるいは、田舎に住んでいる両親にメッセージを送るといったさまざまな用途が考えられます。

とくに、スマートフォンや携帯電話ありきではない、従来の固定電話をコミュニケーション手段として生活している人たちとのコミュニケーションを深めることを目的にしているアプリと言えるでしょう。

公募校長が校長手当月7万1200円で運営する学校支援組織を立ち上げ

今回の発表の中でも、とくに異色だったのが、元日本経済新聞記者で大阪市任期付校長予定者である北角裕樹氏が発表した「学校支援組織立ち上げ」に関するプレゼンテーションです。

北角氏は「前回は取材する立場だったのが、まさか自分が取材される立場になるとは(笑⁠⁠」と冒頭で述べた後、公募の校長という立場を活かして、従来の教育機関では取り組みづらかった教育体勢、とくに、⁠問題解決力」が身につく学校を目指すべく、さまざまな展開を考えているそうです。

北角氏は「たくさんの方たちの協力とともに、これからの学校教育の姿を創っていきたいです」と、サポーター・パートナーへの呼びかけを行った
北角氏は「たくさんの方たちの協力とともに、これからの学校教育の姿を創っていきたいです」と、サポーター・パートナーへの呼びかけを行った

そのために、できるだけ多くのボランティアの方を集め、企業とのコラボレーションや著名人による出前授業などを考えているそう。

また、その最初の取組の1つが、非営利型一般社団法人「中学支援機構」で、今上げたような企画を実現するための組織、窓口として準備していくとのこと。⁠まずはきっかけづくりを提供し、将来的には地域の組織に委ねられるのが理想的」と語ったことからも、短期的な目線ではなく、長期的に取り組んでいきたい意向が伺えました。

たった数千円で書籍を出版「MyISBN」オンデマンド出版の実例と可能性

最後の発表者は、3月25日に正式リリースとなったMyISBNの開発者、デザインエッグ株式会社CEO佐田幸宏氏です。

昨秋のAmazon Kindleの日本展開に伴い、今後は、個人出版の需要が増えていくと予想し、個人出版希望者向けにISBNを付与するサービスを行います。これは、MyISBN自身が出版社の立ち位置となり、ユーザに向けてISNBを付与していくというもの。

「現在の出版というのは大掛かりであり、個人での出版、自費出版がしにくい状況です。そんな中、Amazon Kindleの登場が、状況を一変させました」と、現在の出版業界とAmazon Kindleの関係を紹介しながら、誰もが手軽に出版できる環境を提供することを目的にサービスを展開しているとのこと。

佐田氏いわく、

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