レポート

アドテク業界のキーパーソンが集結!「Ad Engineering Summit 2014」開催

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フラグメンテーション

デバイスの増加がもたらしている課題は,実はもう1つあります。

デバイスが増えたことで,1人のユーザが複数のデバイスからWebを利用するようになりました。この「ユーザがさまざまなデバイスに分散した状況」「フラグメンテーション(Fragmentation⁠⁠」と呼んでいます。ユーザに合った広告を配信するためには,アドテクノロジー企業は,複数のデバイスに分散したユーザを,1つ1つつなげていく必要があります。つまり,ユーザをきちんと識別し,どのデバイスからアクセスしたときでも,同じようにユーザの嗜好に合った広告を配信する必要があるのです。

次のテーマでは,このフラグメンテーションに対して各社はどんな考えで取り組んでいるか,どのような解決策をしているのかについて,話し合われました。

マーク氏「複数のデバイスにまたがってユーザを追跡して広告を配信するというのは,パフォーマンスマーケッターの夢だと思います。ですが,問題は精度です。広告主が求めているのは,予測可能な形で,しかも信頼性の高い予測をもって,売り上げを伸ばして行くということです。ユーザを追跡するとは言っても,取れない情報があったりして,どうしても類推する部分が出てきてしまいます。その精度をどうやって上げて行くかが大きな問題だと考えています。」

マーク・ヘール氏(TapCommerce社 Executive Director APAC)

マーク・ヘール氏(TapCommerce社 Executive Director APAC)

マリオ氏「私たちはユーザの属性情報のデータベースを使って,まずは1つのデバイスでユーザを特定し,そのうえでほかのIDなどを見て行きます。たとえば,Cookie IDやiPhoneにおけるIDFA(Identification For Advertisers,Apple社が発行する広告用端末識別ID)などです。これにより1人のユーザが複数のデバイスからアクセスしても,すべて同じユーザとして認識できます。まずは,1つのデバイスで特定し,それを基にほかのデバイスと紐づけするわけです。それによってユーザのハンドリングが簡単になると思いますし,精度も高められると思っています。」

このように,ユーザが持つすべてのデバイスを紐づけるというやり方がある一方で,ターゲット層ごとにユーザを再統合するという方法も発表されました。

ジェイソン氏「私たちが採っているアプローチはユニークかもしれません。私たちが注力しているのは,まずは各バーティカル(特定のデバイスやユーザ層)ごとに最適なソリューションを提供していくということです。モバイルの広告ではベストなソリューションは何か,広告主に対してどういったものを提供できるか,またメディアに対してはどういうものを提供できるかを考え,対応を行っていきます。そうすることで断片化したユーザやオーディエンスをもう一度まとめられると思います。各バーティカルごとにベストな商品をきちんと提供していくことで,再統合していけるはずです。」

新しいデバイスが登場して便利に使われるようになってはじめて,そのデバイス向けの広告市場が形成されて行くため,アドテクノロジーの対応はデバイスの進化よりも,どうしても遅れてしまいます。そういったことからも,アドテクノロジーの業界には,まだまだイノベーションが必要であると語られました。

また,⁠PCからある商品を買ったら,スマートフォンでその商品に関連する広告が表示される」というのは,ユーザからすると少々びっくりすることでもあります。米国などではすでに当たり前になっていますが,日本国内では許されるのでしょうか? プライバシーポリシーの厳しいヨーロッパなどではどうなのでしょうか? ディスカッションではそんな問題提起も行われ,⁠信頼を得るためには,きちんとユーザの許諾を得るなど丁寧な対応が必要だ」という意見も挙げられました。

アドテク業界で求められる技術/スキル

最後に,登壇者が所属する各社の技術的な特徴や強みについて発表が行われました。各パネリストからは,⁠モバイルアプリにおけるディープリンク」⁠機械学習」⁠プライバシーに配慮したインフラ」⁠リターゲティング広告」など,さまざまなキーワードが挙がりました。

各社に共通していたのは,⁠大量のデータをさばけるインフラがあり,その中で分析をしている」ことと「分析で最適な解を出すには,ユーザ,広告主,自社のサービスについて,よく知っておかなければいけない」ことです。つまり,アドテクノロジーのエンジニアにも,単にモノを作るだけでなくユーザやサービスを理解するということが求められるのでしょう。

ディスカッションのまとめとして,菅原氏から次のような一言がありました。

菅原氏「現在の広告のしくみは1社の企業が実現しているわけではありません。⁠マイノリティリポート』のような世界は,いろいろな企業がつながることで実現されるでしょう。そうして行くためには,今後,APIやほかのしくみでもっとシームレスに企業同士がつながっていく必要があります。

海外ではこのようなイベントのあとには,人同士の交流が盛んに行われて,企業間の連携がどんどん実現されていきます。このカンファレンスでも,そういう交流のの時間を設けています。ぜひ,有効に活用してほしいと思います。」

菅原健一氏(⁠⁠株)mediba CMO)

菅原健一氏((株)mediba CMO)

アドテクノロジー業界は,日本ではまだ注目され始めたばかりですが,すでに多くの目標や課題を抱え,技術的にもビジネス的にも挑戦の余地がたくさんあることが感じられたセッションでした。

カンファレンス責任者の渡邊氏,ディスカッションのモデレータを務めた菅原氏,その両氏とも本イベントを通じてアドテクノロジー分野への参加/交流を呼びかけており,業界全体が優秀な人材を欲しているという印象を強く受けました。腕に覚えのあるエンジニアの方々は,ぜひアドテクノロジー業界に注目してみてください。