あらゆる領域で活用されるオープンソースソフトウェア─The Linux Foundation「Enterprise User's Meeting 2014」レポート

11月12日、第4回となるEnterprise User's Meeting Japanが横浜のハマギン ホールで開催されました。ここでは、その模様をレポートします。

はじめに、The Linux Foundationジャパン ディレクタの福安氏が挨拶しました。

あいさつするジャパン ディレクタ 福安徳晃氏
あいさつするジャパン ディレクタ 福安徳晃氏

表題は講演者のスライドに拠ります。

新しいIT経済とOSS(原題:New IT Economy and OSS)
─Jim Zemlin, The Linux Foundation、Executive Director

オープニングとして壇上に上ったThe Linux Foundation(LF)のJim Zemlin氏は『新しいIT経済とOSS(原題:New IT Economy and OSS⁠⁠』と題してLFの活動を説明するとともに、今後さらにLinuxやオープンソースに期待される壁を打破するような役割について触れました。

The Linux Foundation、Executive Director Jim Zemlin氏
The Linux Foundation、Executive Director Jim Zemlin氏

Zemlin氏はLF活動の一環として世界中の技術産業界のリーダーたちと意見を交わしていますが、昨今、これらリーダー達の間では、ソフトウェア(とりわけOSS)が技術産業界を『飲み込んで』おり、OSS抜きでは製品開発は不可能との認識が広まっているとのことです。

世界的大企業はOSSを社外資源活用(External R&D)の一環としてとらえ、多くの企業でOSS専任チームが設置されています。しかし、OSSの取り扱いには一定のスキルが不可欠であり、具体的にはOSSに関わる戦略策定、知財技術の習得、開発プロセスの管理、製品・サービスのビジネスプロセス整備を指摘しています。

また、LFの協業プロジェクト活動はIT技術の活用を志向するあらゆる産業セクターの拠点となってきており、LFメンバー企業の数(約200社)を大きく上回る約450社が多様なプロジェクトに参加しています。それらの中から以下の5つのプロジェクトを紹介しました。

OpenDaylight
ソフトウェア定義ネットワークの開発、スタート後18カ月間で貢献者数/コード量/プロジェクト数が倍増、9社で製品化の発表
OPNFV
ネットワーク機能の仮想化推進、ネットワークキャリアと関連製品製造企業の企画・開発・検証のコミュニティ
Core Infrastructure Initiative
OpenSSLのHeartbleedバグを契機に設置、企業活動に不可欠ながら開発貢献者が不足するOSSプロジェクトを支援、OpenSSL、OpenSSH、ntpdの支援開始し効果実証済み、支援対象拡大に向け提案募集中
AllSeen Alliance
IoT(Internet of Things)の推進に向け開発・接続検証
Dronecode
無人飛行体向けのOSSを開発する最新プロジェクト

最後にZemlin氏は技術産業界におけるLinuxの浸透に自信を見せながらも、今後さらにオープンソースに期待される壁を打破するような役割とは何だろうかと問いかけ、少しだけ心暖まるビデオを紹介しました。

米国で11才の小学生が学校の授業をきっかけにLinuxに興味を持ち、疑問をLinus Torvalds氏にメールします。その結果小学生はLinux技術者のイベントLinuxConに招待され、Linuxの創始者と直接会話、生涯最高の日とすることができたとのことです。オープンソースが重要である理由は、その有用性に留まることなく、⁠共有』することが、個人を、企業を、そして世界を良くするとの結論でした。

OSSがTwitterの拡張性を支える(原題:Scaling Twitter with Open Source)
─Chris Aniszczyk、Twitter、Head of Open Source

二番目に、Twitterのオープンソース プログラムを開発し、現在同社のオープンソース オフィスのリーダーを努めるChris Aniszczyk ⁠クリス・アニザック)氏が『OSSがTwitterの拡張性を支える(原題:Scaling Twitter with Open Source⁠⁠』と題してTwitterのシステムの拡張性を支える基盤技術を説明し、また同社が開発をサポートする新プロジェクト Apache Mesosについても紹介してくれました。

Chris Aniszczyk氏
Chris Aniszczyk氏

Aniszczyk氏の説明によるとTwitterの全世界ツイート数は平均6千件/秒の程度ながら、システムとしてはアクセス数変動に備えることが必要であり、その大きなピークとしては、2013年に記録された宮崎駿氏のアニメTV放映を契機とした日本のツイート急増、14万件/秒が残っているとのことです。

2006年にサービスを開始したTwitterのシステムはRuby on RailsとMySQLでモノリシックに構成されていました。2009年ごろからアクセス数が増加したため、サーバ数の拡大、RawDBやキャッシュ化などで凌いだのですが、その結果システムの柔軟性を損ない、また、それでもアクセスピーク時のエラー発生を避けることができなかったそうです。

そこで、大規模分散システムの特長を維持しながらも、モノリシックなシステム構成を見直す検討を行いました。すなわち、Twitterが提供する機能をいくつかのサービスとして定義しなおし、サービスごとにノード群を定め、Ruby、Java、Scala、MySQL、FlockDBなど開発ツール/ミドルウェアを組み合わせることにより、システム全体の拡張性を高くするとともに、エラー発生時には明瞭な境界を定めて、問題ノード・サービスのアイソレーション、およびサービスごとに最適な対応手順を採ることにしました。

Twitterシステムの中で開発されたツール群のうちFinagle(JVM用RPC⁠⁠、Zipkin(分散システム用トレースツール⁠⁠、Scalding(Hadoop分析用Scalaライブラリ)などはオープンソースとして公開されています。

また、カリフォルニア大バークレー校と協力し、分散システムを構成する分画されたノード群の資源(CPU/メモリ/ネットワーク/ファイルシステム)を動的に変更する機能の開発をApache Mesosプロジェクトとして立ち上げました。資源制御のベースとしてはLinux cgroupの仕組みが利用されています。Twitterの各サービスの負荷変動は避けられないものですが、余裕のあるサービスが資源のオファーを行い、高負荷のサービスがオファーを受けるような方法で大規模分散システムの資源有効利用を図るプロジェクトです。

最後に、Aniszczyk氏はTwitterシステムの経験から学んだ教訓として、⁠1)オープンソースを活用するとともにコミュニティを豊かにすること、⁠2)小さな変更を積み重ねてリスクを軽減すること、⁠3)⁠Datacenter as a computer⁠が将来のインフラの方向性とみなすべきことを挙げました。Twitterの過酷な環境で日本発のRubyが大規模に利用され、さらにまた、日本の技術者が大きく貢献したcgroupもTwitterの最重要部分に利用されそうです。

CoreOSのご紹介(原題:CoreOS: an Introduction)
─Kelsey Hightower 、CoreOS、Open Source Advocate

三番目に『CoreOSのご紹介(原題:CoreOS: an Introduction⁠⁠』と題して、CoreOS社のOpen Source Advocate(オープンソース啓蒙者)のKelsey Hightower(ケルセイ・ハイタワー)氏が講演しました。

Kelsey Hightower氏
Kelsey Hightower氏

CoreOSは、⁠The data center is the computer⁠のコンセプトのもとに、データセンターの多数のサーバリソースをユーザの要件に合わせて管理運用するための機能を提供しています。コアテクノロジーはLinux OS、Dockeretcdfleetで、CoreOSに含まれて提供されます。

CoreOSで提供されるLinux OSはWindowsや各種のブラウザなどのように自動更新機能を持っています。パッケージ単位ではなくOS全体を単一の構成単位としてアップデートできるため、サーバ群や、複数クラスタあるいはデータセンターすべてを一度に更新できます。またサーバ向け機能を中心に提供しているため、パッケージマネージャや、Ruby、Python、Perlなどのランタイムなどを含む必要性がなく、基本RAM容量は140MB程度に抑えることが可能です。

VMはオーバーヘッドが大きいという見方が広がり、最近クラウドではコンテナ技術が注目されています。CoreOSではコンテナ技術としてDockerを標準に装備、提供しています。そしてこのクラスタコンテナ群を管理するためにetcdを採用、提供しています。

etcdはクラスタシステムに向いた分散KVS(キーバリューストア)です。etcdは基本アクションにアトミックアクションを採用、コンセンサスアルゴリズムにraftを採用しており、運用性に優れたクラスタ管理機能もetcd上に提供しています。fleetはスケジューラの機能を持ち、クラスタに対してサービスの開始、停止などの制御を行います。また、Kubernetesとも連携して使用できます。

このようなテクノロジーを組み合わせることにより、障害で停止したクラスタに管理されているコンテナの置き換え、コンテナの補充、ユーザの要請に応じたコンテナの配置、スケジュールを行います。このような特長のあるクラスタ化されたコンテナの運用・管理技術で、⁠The data center is the computer⁠のコンセプトを実現します。CoreOSはGoogle Compute Engine、Amazon EC2、Rackspace Cloudなどをサポートしています。

オープンソースの開発現場より
─江藤圭哉、富士通株式会社、Linux開発統括部 統括部長

午後のセッションのスタートとして、10年にわたり富士通のLinux開発チームを指揮してきた富士通の江藤氏は『オープンソースの開発現場より』と題してオープンソースを使ったコア技術開発の成功の秘訣やLinux開発チームを率いた経験から学んだ管理手法、ベストプラクティスについて講演しました。

江藤圭哉氏
江藤圭哉氏

江藤氏の説明によれば、富士通は1990年代からFM TOWNSでGNUユーティリティを利用するなどOSSの活用を進めてきました。現在ではLinuxを基幹システムの推奨OSと定め、東証システムをはじめ約6万台のサーバがLinuxで安定して稼動、さらに、お客様要件を積極的にLinux上に実装しており、それらの成果がLinuxのメモリシステム、ファイルシステムなどへの富士通の貢献(全パッチ数の4%)になっているのです。このようなカーネル開発への参加に当たって注意した点として、知財・ライセンスの理解、経営層(特に大企業では)の理解獲得、そして開発プロセスの管理の3つを挙げました。

Linuxでは大規模サーバから小型デバイスまでを一本のソースコードで実現し、単一の開発コミュニティで開発されるため、プラットフォーム間の要件の矛盾、コミュニティメンバー間の調整が必要となることもあり、開発の難しさを倍加させるようです。江藤氏は、富士通が主導的に開発に参加したサーバ要件の例としてメモリホットプラグとcgroupを挙げました。想定よりもはるかに時間も工数もかかりましたが、コミュニティの中で粘り強く議論し、他社の技術者と共に工夫を重ねることによって解決策を見出し、サーバベンダー以外の開発者の合流も得て、結果としては、当初のサーバ要件を越えた多様なプラトフォームで利用できる革新的な機能を実現できました。

IT技術の進化・多様化の中で、今後力を入れて行く分野の例として、ミッションクリティカルワークロードの相互干渉を排除するcgroupのさらなる強化、アプロケーションの長期維持にも活用できるコンテナ(たとえばDocker)の活用、インターネットインフラを担うOSSプロジェクトを財務支援するOpen Infrastructure Initiativeの継続を挙げました。必ずしもオープンソースの進歩が早いと感じているわけではありませんが、正しい方向性でアイデアを出してコミュニティに受け入れられると、世界中の知恵が集まり、止まることなく実装が進み、当初の想定を越えた革新に貢献できることが醍醐味なのです。

大規模商用Linuxの適用拡大に向けた取り組み~コミュニティにおけるノウハウ共有の必要性
─吉川拓哉、日本電信電話株式会社、NTT OSSセンタ

次に、⁠大規模商用Linuxの適用拡大に向けた取り組み~コミュニティにおけるノウハウ共有の必要性』と題して、NTT OSSセンタ、日本電信電話株式会社の吉川拓哉氏が講演しました。

吉川拓哉氏
吉川拓哉氏

吉川氏はNTT OSSセンタでOSS(Linux)サポート業務、およびコミュニティ活動を行っています。Linuxはユーザの裾野が大変広く、ハイエンドユーザから個人ユーザまで、知識レベルを含めて、多様性を持ったコミュニティであり、ユーザからいろいろなレベルの問い合わせがあります。

Linuxは、大容量メモリ、NUMAサポート、コア数増加などの最新のサーバに搭載される計算資源を有効に使いこなし、システムの性能を十分に引き出すことのできるOSとして日々進化しています。とはいえ、これにともない、たとえば「タスクの配置とNUMAのメモリアクセスの問題で性能問題に直面した」⁠メモリ増加に合わせてページサイズ変更機能(THP)を使用したが不都合がでた」⁠アプリが古いカーネルを前提としていた」などの問い合わせも出てきます。しかし、このような実用的なサポート情報はすでにどこかのプロジェクト、あるいは組織でノウハウが存在しているものが多くあるはずです。

OSSの基本精神であるコミュニティでの情報の共用によるコミュニティの進化・発展が重要と考えており、今後とも、コミュニティでの情報の共有化の推進を進めていくので、皆さんにもぜひ参加してほしいとのことです。吉川氏はこのOSSの良さである情報共有により、日ごろ頑張っているLinux、OSSサポートエンジニアが少しでも楽に仕事ができるようになれば良いと願っているそうです。

フルマネージドホスティング~OSSを用いたインフラ運用サービスの実際と今後
─嶋田健作、テコラス株式会社、代表取締役社長

テコラスの嶋田氏は『フルマネージドホスティング~OSSを用いたインフラ運用サービスの実際と今後』と題して10年以上に渡るOSSを用いたホスティング運用実績に基づいて、インフラ運用サービスの実際と今後のOSS運用の流れを紹介してくれました。

嶋田健作氏
嶋田健作氏

テコラスの前身、データホテルは2000年4月にライブドアのデータセンターサービスのブランドとして開始され、現在に至るまでフルマネージドホスティングの提供を主力としています。2015年1月に株式会社SavawayとNHN PlayArt株式会社の技術部門を統合するのに先立ちテコラス株式会社と改名しました。

フルマネージドホスティングというのは設計・構築・監視・保守・障害対応などすべてのサーバ業務を請け負うサービスですが、2000年以降、IAサーバとOSSの普及、回線の低価格化に伴い、データホテルが提示するフレームワークに顧客が合わせてもらうことに抵抗がなくなったためにサービスの提供が可能になりました。

また、データホテルとしてもOSSに特化することにより、学校を出たばかりの若い人に活躍してもらい、平均年齢20歳代のベンチャーがデータセンター事業に参入することができ、開発量も低減できたのです。一方で、チケットシステム・監視システム、あるいは、業種別設計ノウハウなどのコアコンピタンス部分は自社開発・ノウハウ蓄積を進めています。

今後の展開として、クラウドの先を見据えオープンコンピュート ジャパンプロジェクトの設立に参加しました。また、データセンターのマネージドサービスはさらにプロフェッショナルなサービスとしての比重が増すのでグローバル競争に勝てるグローバルなサービスを提供して行きますが、そのためには、世界中のコストパフォーマンスの良い部品を調達してサーバを自社で組み立てていくことも重要とのことです。

さらには、IoTとの組み合わせでセンサーデータや人の動きを捉え、それらを分析した結果に基づいてインフラの動的変更・自動割り当て行う、あるいは、Watsonと連動するようなクリエイティブなクラウドなどに期待しており、クラウドの普及と知識のオープン化は2000年ごろに起きたIAサーバやOSSの登場に匹敵する新たなるチャンスだと思っているとのことです。

従来のシステムを新時代のワークロードへ:OSSを活用したホストマイグレーション
─田中一義、株式会社日立ソリューションズ、主任技師

続いて『従来のシステムを新時代のワークロードへ:OSSを活用したホストマイグレーション』と題して、オープンソース開発技術センタ、株式会社日立ソリューションズ主任技師 田中一義氏が講演しました。

田中一義氏
田中一義氏

汎用機で稼働しているシステムはシステム老朽化などを理由にオープン化を望む顧客も多くいますが、移行コスト、現行システムの複雑さなどから移行を諦めています。本講演では、汎用機固有の操作性、特にディスプレイ端末の画面操作を汎用機文化や操作性を維持しながら、オープンシステムに移行させた例の紹介を中心にオープンシステム移行のメリットを紹介しています。

プラットフォームはRed Hat Enterprise Linux 6.2、日立JP1などを採用しました。移行部分は汎用機帳票との互換性の高い日立PDEとopensource COBOL、PostgreSQLを採用、再構築部分はRuby on Rails、日立EURなどを採用しています。汎用機で稼働しているシステムの切り替えといった分野もオープンソースを中心に移行、再構築を実現し、運用コストの削減、技術者不足の解消、特定ベンダ依存の解消、開発生産性向上といったオープンソース活用のメリットを生かすことができています。

沖縄オープンラボラトリにおけるオープンイノベーション
─鳥居隆史、日本電気株式会社、主査

続いて『沖縄オープンラボラトリにおけるオープンイノベーション』と題して、沖縄オープンラボラトリ、日本電気株式会社主査の鳥居隆史氏が講演しました。

鳥居隆史氏
鳥居隆史氏

沖縄オープンラボラトリは情報通信における2つの潮流であるクラウド技術とSDN(Software-Defined Network)技術にフォーカスし、⁠オープンイノベーション」を推進しています。今回はそのプラットフォームとして開発したテストベッド⁠OpenStack with SDN as-a-Service⁠について紹介しています。これは、具体的にはユースケースを検証し、OSSで実証モデルを構築し、それを普及させるためのテストベッドです。このテストベッドはサーバだけでなくスイッチもベアメタルリソースとしてオンデマンドで利用できます。

これを実証するデモとして、今年のInterop Tokyoでは、米国から沖縄オープンラボのVMに負荷をかけ、過負荷をネットワークが認識、一部の負荷を東京に新たに立ち上げたVMに迂回させるといった自動負荷分散機能をSDN関連OSS、OpenStackで実現しました。このような活動が認められて、会員数が増加しています。今後ともSDN、クラウドの融合を推進する組織として活動を発展、強化していくとのことです。

パネルディスカッション─OSS導入最新動向2014

最後に、LF Japan SI Forumが9月に発表した企業のオープンソース活用実績データ2013年度版に基づく恒例のパネルディスカッションが行われ、エンドユーザやSI企業が安心して活用できるOSSを選ぶための情報が提供されました。モデレータは日本IBMの小薗井康志氏が務め、パネリストとしては、日立ソリューションズの吉田行男氏、NTTデータの原田季栄氏、富士通の野山孝太郎氏、NECの鈴木慶一郎氏が参加しました。

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子

モデレータに促されて、今回が6回目となるオープンソース活用実績データの調査に継続して携わってきた吉田氏が説明したところでは、今回の調査対象は550種のOSSツール(昨年より21種増加⁠⁠、調査に協力した多くの企業で導入実績が報告されたOSSツールは69種(昨年より27種増加⁠⁠、大きな傾向として仮想化・クラウド関連ツールの動きが著しく、OpenStackの定着、Docker、Cephなどの登場が見られるとのことです。

もっとも原田氏はじめ多くのパネリストの意見では、このような新登場ツールはインストールし、使ってみる程度なら問題ないが、過酷な環境や高い信頼性が求められる状況ではユーザにおいてもSIerにおいてもノウハウの蓄積が乏しく、注意が必要とのことです。一方、野山氏は、昨年まで適用の拡大が見えていたEucalyptusはやや足踏みの様子であり、今後どうなるか見守るとのことです。また、鈴木氏もSIの現場でOpenStackの利用が増える一方、Dockerの評価を進めてビジネスへの適用の可否を判断したいとのことでした。

続いて、モデレータのOSSの良さをどう説明するかとの問いかけに、野山氏は、B2CではOSSを適用するが、レガシー系にはCOBOLを残すなど、適材適所と住み分けを実行していること、また、吉田氏はOpenStackじゃなければできない例が広がるなど、新しい領域に新しいOSSが適用されるのが自然との考えが示されました。一方、OSS適用時の注意事項として、鈴木氏は、商用製品と違って技術情報のまとまり、デフォルトの適切さなどに課題があり、それらの情報も分散しているため情報収集能力が不可欠との見方でした。また、原田氏は開発コミュニティとの信頼のチェインが不可欠であろうとのことです。

聴衆からOSSのマーケティングを行っているかとの問いかけもありましたが、各社ともOSS個別のマーケティングにはそれほど力を入れず、自社製品のマーケティングに従属させる形が多いとのことでした。また、吉田氏は、コスト削減効果などが定量的に表現されているケースも見受けるが、その裏側までは説明されることがないことに注意が必要であるとの意見です。

今回のパネリストはいずれもOSS利用をサポートする立ち位置にあり、新しいOSSに対して注意喚起するコメントが多かったような印象です。Solarisで実現されていたコンテナ機能(Docker)にしてもクラウド環境での利用という未踏の領域に入り、オープンな連携の中でノウハウの共有や機能強化を期待したいものです。

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