レポート

アートとテクノロジーのカンファレンス FITC Tokyo 2015 詳細レポート(1日目)

この記事を読むのに必要な時間:およそ 13 分

「楽しさ」が生み出すクリエイティブ

Sadam Fujioka(藤岡定)

藤岡定氏は,過去に手掛けた作品や代表を務めるanno labでのプロジェクトを紹介しながら,楽しいものを楽しみながらつくること,その制作過程の楽しさを伝えることについて語りました。

ドキドキわくわくすること

anno labのメンバーは,新しい体験,ドキドキわくわくするようなものをつくっていきたい,自分たちの都市を世界一楽しい街にしたいという想いを持っているそうです。

学生時代におこなったアート展示「九州好青年科学館」は,展示物を単にすごいでしょう?と観せるより,どういうふうにつくられたのか,どういう仕組みなのか,どういう想いでつくられているのかをいっしょに伝えたいという想いで企画。例えば作成した機材を見せたり,メイキングビデオで伝えたりと,まずは体験としてわくわくしてもらってから,そのセオリーを教えるというアプローチでアート作品を伝えたいと述べました。

社会への応用

ドキドキわくわくするようなものをどう社会へ応用していくのか,3年程かけて体験して,模索したそうです。プロジェクトをいくつか紹介しました。

リハビリのために1日200回立ち座りの訓練をする高齢者に対して「少しでも楽しみながらリハビリを行ってもらいたい」という想いから,九州大学にいた時に"リハビリウム 起立くん"を制作。これは,立ち座りを検知して木が育つという仕組みです。

画像

"Cubie for kids"は,英語のパネルを並べると,並べ方によって音楽が変わるものです。⁠子ども達が最初にアルファベットに触れる機会を楽しいものにしたかった」とコンセプトを語りました。

東日本大震災を少しでも形骸化させない活動へと繋がればという想いが込められているイベントMONSTER Exhibitionに出展した"SHADOW PLAY - Play with KUMICA"は,組み木でモンスターを作ると影が動き出すというものです。出てきたモンスターが花になるところは復興のイメージとつなげており,作品について「自分が作ったものから影が出てくるというのはクリエイティブを刺激する」と述べています。

森の木琴

次に紹介したのは,NTT DoCoMoの"Xylophone in woods"です。invisible design labとの共同プロジェクトで,44mの木琴をつくり,その上を玉を転がして音楽をつくるという大作です。2mずつのユニットをつくって,森で組み合わせたそうで,試した形のパーツ,揺らぎの微妙な調整の様子を紹介しました。和音にしようかと実験もしたそうです。藤岡氏は完成された本番よりも,実験で1つ成功するたびに,ウォー!となっているほうが好きと語ります。

このプロジェクトではチームをポジティブに進めるやり方の一つとして,ご飯をメイドさんに給仕してもらう工夫も行ったとのこと。⁠チームがネガティブな方向に進まず済み,勉強になった。問題を解決するときにこの方向に行かなきゃいけない,とするのではなく,少し離れたところから俯瞰してみて,全然違ったアプローチから解決するというのは素晴らしい解法だと思ったと振り返りました。

完成したムービー

メイキングムービー

会社を立ててからつくったものは仕事ではなかった

Perfumeのモーションキャプチャデータが公開され話題になったPerfume Glocal Site Project。これに興味を持ち,仕事ではありませんでしたが,会社をつくった時に最初に取り組んだそうです。できあがったのがAnno Perfume Global Site Projectで,制作過程も公開しています。私が他に見てきた作品群とは一風違うコマ撮りした作風でした。

このプロジェクトについて,⁠CG制作会社ではないので,CGで勝負しても敵わないだろう。一工夫してユニークなプロセスをつくりたいと思った」とし,一旦OHPシートにプリントアウトして,グルーをパーティクルにのせたもの1,600枚を使ってCGのコマ撮りに挑戦したそうです。⁠動きはデジタルなのにアナログな質感のものができる。プリンターの解像度みたいなのもまたよい」と言うように,風合いが感じられます。

さらに,疲労の中で自分たちでも踊りたくなってしまった藤岡氏らはAnno Perfume 養成ギプスを制作しました。これは「上手に踊れなくても静止したポーズであればできる」と思いつき,カメラの前でPerfumeと同じポーズがとれたらシャッターを切るというソフト制作からはじめました。つなぎ合わせてみると論理的に正確なポーズのみで構成された歪みないダンス映像が完成し,⁠技術とPerfumeの無駄使い」とも称されました。

これらの作品をいろいろな人に見せたところ,⁠君たち面白いね」⁠何かできる?」と仕事が入ってくるようになったそうです。藤岡氏は売れる商品をつくっても,それより安いものが出るとそちらへ流れてしまう。君たちの作品が好きという人だったら,同じようなものをより安くつくるところが現れても,そちらへは行かないだろう。会社で最初にこのようなプロジェクトをやったことは意味があったと振り返りました。

他にも,神社でのクラブパーティー"Clap for Dream",インターネッ トの秘密結社IDPWとして開催しているイベント"インターネットヤミ市",ビデオフィードバックの時間差を伸ばすことによって過去の自分と 共演できる" 時空間のしっぽ",音と光を食べる食虫花をイメージした"Time Cord"など,作品を紹介しました。"Clap for Dream"は,(やしろ)で会うという日本の文化から「社会」が形成されたように,若い人にも神社に集まって社会をよくしていってほしいというコンセプトと,初詣以外にも神社に行ってほしいという想いから企画されたイベント。柏手を打つと映像が反応するプロジェクションマッピングも制作したそうです。

最後に,藤岡氏は「人のためとか健康のために動くのはなかなか難しいので,損得を考えず遊び心からついつい動いてしまうことが大事。そういうものが世の中を楽しくする。そして日本は楽しいものが普及していく文化だと思う。笑顔のまわりには笑顔が集まり,人に伝わっていくと楽しい社会を作っていける」と,想いを述べました。

画像

著者プロフィール

関谷繭子(せきやまゆこ)

株式会社 えにしテック

昼は受託系Web開発の会社でデザインのお仕事。夜はおうちでoFやLiveで遊んでいる。

Facebook:https://www.facebook.com/mayukosekiya