レポート

アートとテクノロジーのカンファレンス FITC Tokyo 2015 詳細レポート(1日目)

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音からゲーム,そしてインタラクテイブアートへの旅

Baiyon

Baiyon氏は,ミュージシャンからはじまり,アート,ファッション,ゲームと様々な分野へ活動の場を広げてきました。今回は,マルチメディアアーティストになるまでの経緯とキャリア形成について話しました。

はじまり

"moog"というシンセサイザーのドキュメンタリーがBaiyon氏のミュージシャンとしてのデビューで,そこからファッション,他のアーティストのグラフィック,漫画へと活動の幅が広がっていったそうです。

Baiyon氏は高校生の時から絵を描いていたり,アカデミックな展示に参加したり,カセットをはさみで切り貼りしての宅録りをしていました。その後,芸大に進み洋画を専攻しましたが,アカデミックな中に自分を見つけられずにいたそうです。その頃,友人がやっていた音楽が波形で見えるソフトに感動し,PCを購入しました。そうして自分のレーベルを立ち上げるに至り,ビジュアルも自然な流れで自分で制作。レコード,CDをリリースして,STUDIO VOICEにも掲載されました。

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ビデオゲームへ

ある日,TOWER RECORDSで働いている友人から「高校生がCDを買ったらその場でCDプレイヤーにセットし,ジャケットをその場で捨ていく」という話を聞きました。トータルで楽しんでほしいのに,結局トータルで楽しんでもらえてない。音楽とジャケット等も含めた楽しみ方をひとセットにして売らなければならないという想いが生まれ,ストーリーも伝えられる,はじまりと終わりがある,ビジュアルとサウンドをいっしょにできる「ビデオゲーム」をつくりたいという気持ちに辿り着いたそうです。

そして作品には,パーソナルな要素を埋め込むことを考えると語りました。

自分のパーソナルなものを商業作品に忍び込ませ,アイデンティティを埋め込んでいくと,作品の強度が強まる。例えば友人の実家に行ったとして,友人が何十年も開け閉めしている音と,そこに初めて行った自分が開け閉めする音は違うものであると思いたい。音の結果ではなく,そこに宿るアウラがあると信じていて,それを商業作品にも入れていくというのは大切なことだと思っている⁠Baiyon氏)

ビデオゲームをつくりたいとは思ったが,つくり方もわからず,ゲーム業界の知り合いもいない。友人に誰か紹介してとお願いする以外なかったそうです。そんな時出会ったのが,STARFOX等をつくっているQ-Gamesの社長です。キャリアはありませんでしたが,アートディレクター,サウンドディレクターを任されることになりました。⁠ラッキーで,今までやってきたことともタイミング良くつながった」と言います。

そうして初めてつくったのが"PixelJunk Eden"でした(セッションでは触れられていませんが,インタビューの動画を見つけ,興味深い内容でしたので,トレーラーの下に掲載しています⁠⁠。

「ゲームのつくり方がわからず,墨汁で描いたものをそれをスキャンして,コンバートしてからゲームにもっていく等していたため,ゲームづくりという感じではなかったが,とても勉強になった」と振り返ります。

また,植物のランダム生成は当時難しかったため,ランダムなものは自分自身でつくってしまったほうが早いと考えました。そこで,バグや偶然から生まれるもの,墨汁でペイントしたものを使うなどし,力技で全部手で描いたそうです。

さらに,⁠アナログ感を残したい,どこを静止画にしてもかっこいいものにしたいといった面で苦労した。レベルデザインなどはできないのでお任せしたが,同じ植物が並んでいるのは嫌だ,こんな不自然な配置はないという気持ちがあり,何回も試行錯誤してつくった」と振り返りました。

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次に作ったのは,PS3のムーブコントローラーを使ったものです。Edenが好評だったため,そのビジュアルを使ってビジュアライザーをつくろう,サウンドも自分でつくれる機能を入れよう,となり,"PixelJunk 4am"が完成しました。

このゲームはライブみたいなものをユーザーに観せることができて,いいね!の ようなフィードバックを送ることもできます。音楽はトラック分けしたものをミックスする形で作成できるようにし,作った音楽を元に映像を出すようにしました。こちらにもパーソナルな要素がトロフィーとして込めてあり,ライブ中にコントローラーへキスをするともらえるものに"The Sun Can't Compare to Your Light"という名前(Larry Heard Presents Mr. Whiteの曲名からとったもの)をつけたそうです。

次に携わったのは,"LittleBigPlanet 2"という,ユーザーが自由にステージを作ることができるPS3のゲームでした。楽器をつくって,それで音楽をつくることもできます。そのシーケンサーのお手本になるようなものを作ってほしいというオファーでした。ここでのパーソナルな要素は,Baiyon GuilfordとBaiyon Kyotoというサウンドです。Guilfordに開発で行った時,ここへ来たことをゲームにフィードバックできないかと考えたそうです。相談したところフィールドレコーディングしてはどうかと提案され,ハイキングに行って動物の声や足音を録ったり,京都へ帰って神社などを巡って録ったりとしたと紹介しました。

最近携わったものは,4amでグラフィックのプログラマーをしていた人から「ロサンゼルスにスタジオをつくったから何か一緒にやろう」と声をかけられ,Leap MotionとOculus対応のアプリ"Collider"でサウンドを担当しました。Leap Motionが指をトラッキングできるようになったのを見せたいとのことで,パーティクルを集めたり,手を叩くと弾けたりといったゲームっぽい要素が散りばめられています。

さらに昨年後半には,Best iOS Games 2014にも選ばれたFOTONICAへ2曲提供しま した。

パーソナルなマテリアルを込めること

最後に,Baiyon氏は次のように話をまとめました。

「プログラムで制御されるものに,より深い印象となる揺らぎ,グルーヴみたいなものを与えるために,パーソナルな要素をいかにフィードバックしていくかということを可能な限りやっていきたい。それによって作品が強度を増していく。それが商業作品のようにたくさんコピーされて売られていくものであれば,よりいっそう強くなると思う。
DJで針が飛んだ時,逆に盛り上がったりとか,それってライブなんだと思える。生きている,今やっている,そのハプニング,すごくいいなと思う。昔はIllustratorでパキパキにパスを切って完璧にしたいと思っていたが,完璧って実は完璧じゃないのかも。余地を残さないとつまらないのではと思うようになり,最近は水彩でやったりとか。アナログなものとデジタルなものを融合して新しいフィーリングを生み出せたらと思っている。技術が進んでも変わらない,新しい技術とどう向き合っていくか,自分なりのアプローチを見つけていきたい⁠Baiyon氏)

著者プロフィール

関谷繭子(せきやまゆこ)

株式会社 えにしテック

昼は受託系Web開発の会社でデザインのお仕事。夜はおうちでoFやLiveで遊んでいる。

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