レポート

HTML5 Conference 2017 基調講演レポート

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及川卓也氏「新しい技術潮流とWeb」

元Chrome開発マネージャーの及川卓也氏は「新しい技術潮流とWeb」というタイトルで発表しました。技術イノベーションは非常に速いスピードで進展しており,そのなかでWebをどう捉えればいいのか,というのが今回の内容だと話しました。

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最初に,エマージングテクノロジー(将来,実用化が期待される先端技術)がどういった形で普及していくかを示した,Hype Cycleの2017年版を示しました。取り上げられている技術のうち発表元のガートナーが注目している3つの分野は,機械学習や深層学習などいわゆる人工知能が遍在した社会(AI Everywhere⁠⁠,VRやARなどの透過的な没入感の体験(Transparently Immersive Experiences⁠⁠,5Gや Digital Twinブロックチェーンなどのデジタル基盤(Digital Platforms)だと言います。及川氏は,これらにWebがどう関係するのでしょうか?と問いかけます。

また,2010年のGoogle I/Oで使われていた,デスクトップアプリケーションがWebアプリケーションに遷移してきたことを示す図を元に,及川氏が2017年現在まで拡張したものを示しました。図を見れば分かるとおり,モバイルアプリケーションにいくつか戻っているものがあり,これらはスマートフォンだけでしか体験できないものです。及川氏は「Webアプリケーションは明らかに進展しています。しかしスマートフォンをメインで使っている層が出てきているここ数年は,⁠Webアプリケーション開発者にとって)過渡期を感じているはず」と指摘し,Webは大きな岐路に立っていると話しました。

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次に,先ほど取り上げた先端技術の3分野の技術を「AI」⁠AR/VR」⁠IoT, ブロックチェーン」に絞り,W3Cがどうしているのかを確認しました。そして,AI以外は,コミュニティグループが活動していることを紹介しました。

AIはW3Cで積極的に話されていませんが,機械学習や深層学習などのAI技術は明らかにどこでも使われる技術になっています。Googleも今年,モバイルファーストからAIファーストと標語を掲げました。ここにきて機械学習が普及し始めた理由は,データが十分なものがそろい,さらにGPUを汎用的に使う技術が広まってきたためです。そしてこのデータ取得の部分で,Webの果たした・果たす役割は大きいものだと及川氏は言います。

Webでのデータ取得は一般的に,スクレイピング,クローリングを行います。ただし機械学習などではデータの数が必要です。このことから「今まで以上にWebは人だけではなく,機械にも優しくある必要がある。つまり,セマンティック性がこの時代にとって大事になってきている」と述べていました。セマンティックにするために現在だとJSON-LDを使う方法があると紹介しました。また,ページ遷移がないシングルページアプリケーション,プログレッシブアプリに対してはHeadless Chromeを使う方法を挙げていました。

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一つ心配しないといけないこととして,フェイクニュースを取り上げました。機械が学習した情報を元に自動的にWebページを生成できるようになるわけですが,間違っている情報を元に学習した場合には,間違った情報が掲載されたページ(悪意のあるコンテンツ)が生成されることにつながるからです。これにより機械同士が喧嘩することが起こりかねないと指摘しました。こういったことを回避するためには機械と人を組み合わせたソリューションが最強であり,その方向を目指すべきだと話しました。

まとめると,先に挙げた先端技術とWebの役割は次のような関係にあると示しました。

先端技術 W3C Webの役割
AI N/A メディアとしてのWeb
AR/VR WebVR Community Group アプリケーションとしてのWeb
IoT, ブロックチェーン Web of Things Community Group, Blockchain Community Group 基盤技術としてのWeb

最後に,及川氏は「結論としては同じなのですが,Webは岐路に立っているからこそ再投資をし,さらには我々自身で再発明して,もう一度位置づけを明確にしていく必要があると思います。機械と人が最強という話をしました。Webというのは今回集まった人の中で語れるような技術だと思います。でも大事なのは人の部分だと思います。ぜひみなさんつながって,次の世代のWebというのを考えられると良いかなと思います」と締めくくりました。

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今年のテーマは「We can do anything on the Web.」

基調講演の最後に,進行役の吉川氏は今年のイベントのテーマが「We can do anything on the Web.」であることを案内しました。そして現在,Webでできないことはないのではないか?いうくらい,多くの仕様があることを示しました

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そして吉川氏は次のように述べて基調講演を締めくくりました。

「人によってはもうすこし足りない,まだまだ足りない,ということがあるかもしれない。けれども,我々はコミュニティなので,現状に即した言葉を言うだけではつまらない。我々はWeb上でなんでもできる,できるようになるという思いを込めて,この言葉を出しました。その可能性をカンファレンスで感じてもらえればと思います」⁠吉川氏)

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著者プロフィール

高橋和道

gihyo.jp編集部 所属。最近では電子書籍の制作にも関わる。

URL:https://twitter.com/k_taka