レポート

“ネ申エクセル”をめぐって徹底討論! 「Excel方眼紙公開討論会」開催

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「ネ申エクセルを語る」パネルディスカッション

最後のプログラムは上原氏,長岡氏に加え,一般社団法人実践ワークシート協会代表理事の田中 亨氏,福島コンピュータシステム⁠株⁠ビジネスシステム事業部の渡辺 恭浩氏も参加してのパネルディスカッションでした。

田中氏はExcelの情報サイトOffice TANAKAの運営や,Excelのセミナーを数多く行うExcelのプロ。渡辺氏はExcelの多機能アドインRelaxToolsの開発者です。

渡辺氏(左と)田中氏

渡辺氏(左と)田中氏

モデレータはPublickeyを運営するITジャーナリストの新野 淳一氏が務めました。

新野氏

新野氏

「ネ申」となる条件

新野氏:最初に「ネ申エクセル」⁠Excel方眼紙」という言葉の定義をあらためて確かめたいと思います。奥村晴彦氏は2013年,論文「ネ申Excel」問題を発表しました。論文では,Excelに代表される表計算ソフトをDTPソフトとして用い,データとしての再利用の困難な複雑な帳票を作成してしまうことが,ネ申Excel問題として提起されました。一方でExcel方眼紙というと,セルを正方形に設定した使い方を揶揄した言葉というイメージですが,みなさんはいかがでしょうか。

上原氏:ネ申エクセルは表をきれいに見せるために,さまざまなテクニックがされているもの。そのテクニックの1つに,正方形の設定があるという位置づけです。

長岡氏:ネ申エクセルとExcel方眼紙は使い分けています。方眼紙は単純にセルの形の設定でしかなく,ネ申と呼ばれるようになるにはまだ早いです。私の中では,文字を打つごとにカーソルキーやマウスの操作が発生してしまい,キーボードだけでは操作が完結しないものがネ申エクセルです。

新野氏:ネ申エクセルの元凶はどのような設定,使い方にあるでしょうか。

長岡氏:セル結合が一番大きいのではないでしょうか。セルの結合が正しい場所で使われていないのが,ネ申への昇格条件だと思います。

上原氏:セル結合そのものというよりは,入力をまったく想定していない,Excelの機能を破壊しているものが元凶だと思います。

田中氏:私はネ申エクセル,Excel方眼紙は一緒のことと思っています。生産性の悪い,また使いにくいものがネ申/Excel方眼紙。セル結合のほかに,円や人といった単位を手で入力させるものは,作り手は表示形式を知らないのではと憤りを覚えますね。

渡辺氏:ネ申は再利用性の悪いもの,方眼紙はセルの設定と使い分けていますね。方眼紙の中にも,良いものと悪いものがあると思います。

新野氏:河野太郎衆議院議員の2016年11月のツイート行革推進本部で文科省をよんで,こういう神エクセルを至急,全廃することにしました。も話題になりました。なぜ全廃の必要があるのでしょうか。

田中氏:もともとExcelを使うのは,生産性を上げるため。たとえば月と日を別々に入力させるものは,生産性を逆に下げています。

上原氏:私は生産性,ワークフローを考えてほしいという思いから,ネ申エクセルを悪と言っているというところもありますね。

新野氏:ネ申エクセルの条件にはどのようなものがあるでしょうか。

田中氏:個々の機能で説明は難しい。Excelで扱えるデータは大きく分けて,数字・文字・日付で,それを意識できているかどうかという使い手の問題になりますかね。

長岡氏:キーボードを打っていて,エンターとタブで自然に入力箇所が移動できないものですね。あとは,データの吸い出しやすさが損なわれてしまうような,規則性がないセル配置のもの。

渡辺氏:セルに見せかけた透明なシェイプ(図形)を見つけたりすると,げんなりしますね。私はSIをしていますが,お客様からこういった特殊な形式でやってくれと言われることも多々ありますね。

上原氏:その入力は何のためか。単票の入力であれば,そもそもその単票は必要か。その問いに答えられないのが真のネ申エクセル。Excelファイルがプリントアウトされたものがホッチキスで留められて保存されるだけでは,業務上必要な書類とは言えないでしょう。

許されざるExcel,許せるExcel

新野氏:ネ申エクセルであっても,この設定は許されるなどという妥協点はありますでしょうか。

上原氏:誰かに入力させたデータを何かしら再利用するのなら,Excelにちょっとは仕事をさせてあげてほしいですね。たとえば銀行名と銀行番号の紐づきを別のテーブルに持っておき,銀行名の入力だけで済むような工夫や,ふさわしくない入力をセルの色変えで警告するなどです。

長岡氏:データとして使い回さないのであれば,ネ申エクセルのままでも良いと思います。

田中氏:Excelについて勉強してほしい。最低限,手元の電卓を使わずExcelに計算させてほしい。そこが妥協点かなと思う。

新野氏:具体的に,どこから勉強すれば良いでしょうか。

田中氏:基礎からですね。どこからが基礎なのかは,どんな業務かにもよってしまいすが,⁠そもそもセルとは」⁠そもそもデータとは」という基礎知識ですかね。

上原氏:データと表現は絶対的に違うということを押さえてほしい。そこがないと,日付をデータ形式に変換することにたどりつけない。紙と鉛筆のように使ってしまう。Wordで言うと,スタイルを使わず,インデントを自分で入力してしまうことが挙げられます。

新野氏:これはむしろ便利なのでは,というExcel方眼紙はあるでしょうか。

長岡氏:私が気をつけているのは,結合するセルの数をシート全体でそろえることと,隠し列と隠し行(非表示)は使わないこと。これを守っていれば,VBAからデータを読み出しやすいんですよね。あとは,幅が違う表を複数含んだ書類では,Excel方眼紙として使うようにしています。

渡辺氏:説明資料ではExcel方眼紙は便利ですね。作り終えてから縮小してA4に収めるなど,あとから印刷サイズを決められるので,レイアウトの柔軟性は高いです。PowerPointだと,先にスライドのサイズがあらかた決まってしまっているので。

上原氏:単にDTPソフトとして使うならありだと思います。Excelの中だけで完結するなら,どんな複雑な設定も許されます。表示させるものを入力にも使うのが問題です。

新野氏:先ほど,生産性,ワークフローを考えてほしいという思いから,ネ申エクセルを悪と言っていると伺いました。

上原氏:声高に訴えることで,Excelから業務を構築することにブレーキをかけられるのではないかと思っています。

長岡氏:便利だと感じているExcel方眼紙にも飛び火するのは考え物ですが,いわゆるネ申エクセルがなくなるのには賛成ですね。

田中氏:基本的には同意です。Excelは魔法の道具などではなく,表計算ソフト。それ以外の用途で使う際は,罪悪感があってしかるべき。

新野氏:Excel方眼紙の代替ツールはあるでしょうか。

渡辺氏:宣伝になってしまいますが,ExcelにアドインするRelaxTools,あとはMarkDownもありますね。

田中氏:文書ならWord,アイデアをまとめるならPowerPointやOneNote。なんでもExcelはやめてほしい。

上原氏:会議の出席管理として,Excel方眼紙に入力するように言われたことがあるが,今は調整さんやGoogle FormsといったWebサービスがありますね。

著者プロフィール

中田瑛人(なかたあきと)

Software Design編集部所属。2014年 技術評論社入社。

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