レポート

エンタープライズからエンドユーザまで取り込む求心力―「Dell EMC Forum 2017 Tokyo」基調講演レポート

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ゲスト基調講演

「デジタルトランスフォーメーションによる新価値の創造」

コニカミノルタ⁠株⁠代表執行役社長兼CEO 山名昌衛氏写真17

写真17 コニカミノルタ⁠株⁠代表執行役社長兼CEO 山名昌衛氏

写真17 コニカミノルタ(株)代表執行役社長兼CEO 山名昌衛氏

2003年にグローバル市場に向けて経営統合を行い,2006年8月に約3,000億円の売り上げがあったカメラ事業から撤退,B2B事業へ業態を変えて「コニカミノルタホールディングス株式会社」になるも,事業が分散していることについての疑問が生まれ,⁠勝てる会社」とすべく統合化へ舵を切り,2016年に傘下7社をまとめ「コニカミノルタ株式会社」に経営体制を再編した。ホールディング体制では顧客との距離が遠すぎるというのが,その理由である。

本講演では,顧客にとってサービスを提供する企業への戦略変更において,同社の強み写真18をベースに課題的型デジタルカンパニーへ写真19への転換をいかに行ってきたか紹介した。

写真18 コニカミノルタの強み(コア技術,200万社におよぶ顧客,オープンイノベーション)

写真18 コニカミノルタの強み(コア技術,200万社におよぶ顧客,オープンイノベーション)

写真19 課題的型デジタルカンパニーへ

写真19 課題的型デジタルカンパニーへ

その代表例として,Workplace Hubを取り上げた。これは1メートル四方程度の大きさの機材がサーバとなるもの。同社の200万ユーザを誇る複写機ビジネスの強みを生かしたものである写真20⁠。

写真20 Workplace Hub

写真20 Workplace Hub

Workplace HubはIoTデバイスからの情報を,このマシンをエッジとして統合できる。接続されたカメラから動画情報を取り込み,会議室の使用状況を確認したり,工場の現場レイアウトでの人間の動きの分析をしたりできる。そしてエッジからクラウドにつながりディープラーニングを応用した意思決定支援を行う。これが生産性の向上に大きくつながるという。建設工事現場での使用例写真21や製造現場での使用例がそれにあたる。

写真21 建設現場での利用

写真21 建設現場での利用

その他,プレシジョン・メディシン(個別化医療)では,得意とする分子イメージング技術を使用し,創薬支援を行う事例も紹介。IoTの時代で顧客メリットが何であるのか,価値をどう突き詰めていくのかが問題であり,製造業の強みを生かしアジャイルに対応するスピード感が大事であると示した。そしてまだまだデジタルトランスフォーメーションを実施する要素がたくさんあると結論した。

「働き方改革の未来~100人100通りの働き方」

サイボウズ⁠株⁠代表取締役社長 青野慶久氏写真22

写真22 サイボウズ⁠株⁠代表取締役社長 青野慶久氏

写真22 サイボウズ(株)代表取締役社長 青野慶久氏

総務省,厚生労働省,経済産業省,内閣府,内閣官房の働き方変革プロジェクトの外部アドバイザーを務める青野氏。自社での働き方改革をいかに行ったのか,その経験を語った。同社はもともとは高い離職率に悩むいわゆるブラック企業だったという。社長就任直後に離職率は28%になり,聞き取り調査を行ったところ,退職理由が社員よりそれぞれ違うことに気がつく写真23⁠。そこで人事の方針を「100人いれば,100通りの人事制度があってよい」と変更した写真24⁠。これにより離職率は大きく改善し,売り上高も上昇した。

写真23 離職率の上昇

写真23 離職率の上昇

写真24 働き方の多様化へのチャレンジ

写真24 働き方の多様化へのチャレンジ

これらの体制を整えていくにあたり,給与制度の改定も行った。これは社員を市場価値から決めるというもの。そのほか,オフィスの再設計による環境改善,個人用PCのスペック向上など,さまざまな施策をしてきたが,最も大事なことは2つの風土改善であったという写真25⁠。

写真25 2つの風土

写真25 2つの風土

青野氏は,会社の中で絶対に嘘をつかないことが大事で,実は日本の企業が不得意なところである指摘した。また,新しい制度が利用されるようになるには,率先垂範であるとして,自ら育児休業や保育園へ子供を迎えに行くための16時退社を実行,社内の雰囲気を変えた。そしてさらなる風土の変更として社員のワークスタイルも個人戦よりもチーム戦にしたことも挙げた。従来は個人でスキル・人脈・場所を独り占めすることが多かったが,そうではなくチームで働く体制にした。その結果,以前より大きな価値を生みだせるようになったという。これがサイボウズ社における働き方改革の重要なエンジンであるようだ。

最後に,働き方改革が世間では経営者にとって残業削減としか理解されないことに対し,情報発信をしつづける重要性を示した。

ひとり情シス薄い本

目を引いたのは,⁠ひとり情シス」⁠非売品)の小冊子である。展示会場入り口近くで配布された,執行役員広域営業統括本部長清水博氏によるもの。

ひとり情シス
(TOKYO DELL EMC FORUM2017
「ひとり情シス大会議」配布本)

ひとり情シス(TOKYO DELL EMC FORUM2017「ひとり情シス大会議」配布本)

「この調査結果による,たった一人だけの情報システム要員が全体の14%を占めており,しかも専任担当者が一人もいない企業が13%に上がっており,双方を合わせると27%を占めました。約3分の1の会社が,情報システム要員が1人未満というものでした(同書より引用⁠⁠」――同社が行った衝撃的なアンケート結果をもとに制作された。日本のだけでなく海外での「ひとり情シス」実態レポートを手始めに,情シス部門の笑えない仕事内容など,クラウド化が進む現状との乖離も含め,ITの現場で起きている問題に真正面から向き合った内容が盛りだくさん。エンタープライズ向けのセミナーが多い中,異彩を放っていた。 実際問題として,ITの現場は「ひとり情シス」に支えらえていることが多く,ここにスポットライトをあてる試みは非常に価値があると感じた。