レポート

Sansan Innovation Project 2019開催――イノベーションのインパクトとその先にある未来を展望した2日間

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AI,予測,加速するビジネスに向けて

キーノート後半は,もう少し俯瞰的な観点から,とくに⁠AI⁠にフォーカスしたプレゼンテーションが行われた。

まず,Hike Ventures,General Partnerの安田幹広氏が登壇し,ここ数年におけるAIおよびAIを取り巻くビジネスの変化について紹介した。安田氏はAIが進化している理由として,⁠データ量の急増」⁠アルゴリズムの進化とオープンソース化」⁠AI人材の増加」⁠コンピュータの処理能力の工場と低価格化」の4つのトレンドを取り上げた。

「急激に成長しているAIの分野では,とくにスタートアップ企業の勢いがすごい」と世界の状況を説明したHike Ventures,General Partnerの安田幹広氏

「急激に成長しているAIの分野では,とくにスタートアップ企業の勢いがすごい」と世界の状況を説明したHike Ventures,General Partnerの安田幹広氏

その上で,⁠ビジネスの中でも,とくにスタートアップの世界でAIが主役になっています。とくにスタートアップを育成するエコシステムとAIを取り巻く環境が非常にマッチしているからです」と,世界にあるスタートアップのAI企業たちが,成長するAI市場市場を牽引していることを,投資家の観点から説明し,次のゲストへバトンを渡した。

次に登場したのは,トロント大学ロットマン経営大学院教授で,Creative Destruction Lab創設者でもあるAjay Agrawal氏。Ajay氏は,予測マシンの世紀─⁠─AIが駆動する新たな経済の原著者としても有名である。

Ajay氏は「自動化が進む私たちの未来:インテリジェントマシンの時代に適応し,勝ち残る術を学ぶ」と題した講演を行った。

まず,今のAIバブルの状況を少し引いた立場で説明しつつも,⁠どんなジャンルでも新しい波が来たときにすぐに動き出すかどうかで,その後の成功の大きさが変わる」と,ビジネスで成功するために今のタイミングを逃さないための意識を持つべきだとAjay氏は主張した。

その具体的な方法として「AIの活用とは,予測問題ではなかった問題を,予測問題を置き換えることから始まる」と,AIの本質を説明しながら,タスクの解剖と予測の相関関係などについて,大学教授の立場としてまさに大学の講義さながらの内容で話を進めた。

「AIの価値を決めるのは,活用者自身のスタートダッシュ(最初の動き出し)である」と,今,この状況での適切なAI活用の必要性を強く訴えたAjay Agrawal氏

「AIの価値を決めるのは活用者自身のスタートダッシュ(最初の動き出し)である」と,今,この状況での適切なAI活用の必要性を強く訴えたAjay Agrawal氏

最後に「多くのデータ,良質な予測,たくさんのユーザ,この関係によるサイクルが循環し,流れが続くことで,その結果の価値が高まり,市場が成長する。AIはそこに欠かせないもの」とコメントし,同氏の講演を締めくくった。

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以上,初日のキーノートの模様をお届けした。前半では,Sansan代表の寺田氏をはじめとした,Sansan自身の取り組みから生まれてくるイノベーションについて,また,後半ではAIの可能性をグローバルの観点で知ることができた。

前後半ともに共通していたのが,技術の進化とそれにより起こりうる人間社会への影響について取り上げていた点。単に技術の進化を追求するのではなく,その影響の大きさ,インパクトを最大化することがイノベーションになりうることを,さまざまな視点で理解できるキーノートだった。

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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