レポート

Sansan Innovation Project 2019開催――イノベーションのインパクトとその先にある未来を展望した2日間

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これからの技術の進化~AWS岡嵜禎氏&Sansan藤倉成太氏トークセッションから

続いて,2日目から「これからの技術の進化」と題した,アマゾンウェブサービスジャパン株式会社技術統括本部本部長技術統括責任者 岡嵜禎氏と,Sansan株式会社執行役員CTO藤倉成太氏によるトークセッションの模様をお届けする。

「これからの技術の進化」をテーマに,技術がイノベーションに与える影響,社会実装としての技術の進化についてトークを行ったAWS岡嵜氏(左)とSansan藤倉氏

「これからの技術の進化」をテーマに,技術がイノベーションに与える影響,社会実装としての技術の進化についてトークを行ったAWS岡嵜氏(左)とSansan藤倉氏

このセッションでは,技術の中でも,とくにクラウドにフォーカスを当て,クラウド黎明期(過去⁠⁠,クラウド普及期(現在⁠⁠,クラウドの先(未来)に時系列を分けながら,クラウドベンダとクラウドを利用するユーザ,それぞれの立場での対話形式で進行した。

契機となった大手金融機関でのクラウドシフト

まず,AWS(Amazon Web Services)の歴史とともにクラウド黎明期の振り返りで話がスタートした。

岡嵜氏は「この8年,AWSはおかげさまで成長し,進化し続けながらたくさんのユーザに使っていただけるインフラとなりました。黎明期は,コンシューマ寄りのゲームやWebサービス,そしてエンタープライズ領域,最近ではIoTやマシンラーニングなど,これからのビジネス活用領域におけるインフラとしての役割が強くなっています」と,2011~2019年までを振り返った。

藤倉氏は,クラウドのユーザ目線で「とくに黎明期のAWSと言えば,EC2とS3でしたね。いわゆる仮想サーバ+DB=クラウドという印象でした」と当時を振り返った。

さらに「もともと私たちはオンプレミスでサーバの管理・運用をしていました。その理由の1つは,⁠私たちのサービスの)ユーザにとってクラウドへの信頼感が低かったことがあったように感じます」と,当時はまだクラウドそのものへの信頼感,とくにセキュリティ観点での不安が強かったと言います。

岡崎氏もこの点に触れつつ,⁠三菱UFJフィナンシャル・グループが大手金融機関で初めて社内システムをクラウド並行したことがターニングポイントとなった」と,クラウドへの不安が,クラウドへの信頼へ変化したタイミングについて紹介した。

その後,AWSはさまざまな機能が実装されるとともに,セキュリティの確保にも大幅な開発リソースが割かれ,今では,多くのユーザに安心してご利用いただいている,と岡嵜氏は補足した。

藤倉氏もまた,⁠おっしゃるとおりオンプレという(自分たちで運用保守できるという)安心感と比較していたこともありましたが,いざ,クラウドへシフトしてみて感じたのは,サーバの運用保守をすべてAWS側に預けることで,私たちはサービスの改善・開発に集中できるようになりました」と,クラウドシフトがもたらした価値,クラウド活用のメリットを実体験を交えながら述べた。

re:Invent――世界最大級のAWSテクニカルカンファレンス

次に,AWSの世界最大級のカンファレンスに話が移った。藤倉氏は2018年,初めてre:Inventに参加したそうで,⁠とにかく,いろいろと固定概念が壊された」とコメントしました。

海外イベントの多くは,街全体を使って盛り上げることが多く,とくに西海岸では,IT系企業が多いこともあり,その傾向が強い。re:Inventの場合,空港の入国審査の段階からre:Invent用窓口が用意されているなど(※2018年からとのこと⁠⁠,とにかく,そのスケールの大きさに藤倉氏は驚いたという。

スケールの大きさだけではなく,⁠その場で毎回発表される新しいトピック,技術,そして,そこに集まる参加者同士のコミュニケーションがまた,イベントの価値を高めていくと信じています」と,岡嵜氏は,イベントを主催する立場からのコメントも述べた。また「正直,すべての新しいトピックを追いきれなくなっています(笑⁠⁠」と,悩みも吐露していたのが,その大きさを物語る。

藤倉氏は参加の感想として,⁠re:Inventの魅力は,ただ技術を追っていくだけではなく,その技術,たとえば,新しいソフトウェアのソースコードがビジネスに対してどのような影響を与えているのか,実際に目で見て,耳で聞いて,肌で感じられることにあると,初めて参加して強く思いました。そして,改めて,エンジニアとして,自分たちが関わる技術がビジネスに対してどのような影響を与えるのか,技術によるビジネスの進化を意識しなければいけないとも感じました」とコメントしている。

社会実装があってこその技術進化

次のイノベーションはどこの分野で起こるのだろうか?

次のイノベーションはどこの分野で起こるのだろうか?

最後のまとめとして,クラウドをはじめとした技術のこれからの展望について述べられた。

藤倉氏は,⁠クラウドの登場まで,技術領域の主役にソフトウェアがありました。しかし,今はビット,ソフトウェアだけの世界ではなく,リアル,ハードウェアと近づけていく必要性が高まっています。それは,クラウドの活用シーンがネット上以外の場所に増えているからです。

これからのエンジニアは,ネット上のデータや技術だけを追っていくのではなく,それらデータや技術が何を生み出すのか,社会に対してどう影響するのかというマインドが求められていくでしょう」と,技術のトレンドだけではなく,技術を扱うエンジニアに求められる「社会実装のための技術の追求」というマインドセット・スキルセットについて見解を述べた。

岡嵜氏もこの点について「元々,クラウドは,Webビジネス寄りの企業・ユーザが牽引して広がってきました。その大きな理由は,事業のコア領域としてクラウドが欠かせなかったからです。

しかし,クラウドが支える領域が広がり,また,ユーザの幅が広がることで,さまざまなビジネスに関わっていきます。本質的には,これからすべての事業にクラウドが関わっていく(クラウドが基盤になる)と,私は予想しています」と,クラウドベンダの立場から,クラウドが扱う範囲が広がる展望についてコメントした。

また「今回のSansan Innovation Project 2019に参加し,いくつかのセッションを聞いたり,展示を見て,本当に事業者の皆さんの,技術への感度が高くなっていると感じました。その印象もまた,先ほどの私が思う未来展望の理由の1つです」⁠岡嵜氏)と,ビジネスとテクノロジーの関係がますます密になっていく未来を展望し,トークセッションが締めくくられた。

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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