サイエンスに片思い

第1回 横浜サイエンスフロンティア高等学校往訪編

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地球を救うため,ここへやってきた

今回,開設準備担当指導主事の栗原峰夫先生,佐野和夫先生,小島理明先生のお三方に,サイエンスの魅力を学生に伝えるのにどんな方法があると考えているかを聞いてみました。

今回の取材にご対応頂いた先生方。左から栗原先生,佐野先生,小島先生。

今回の取材にご対応頂いた先生方。左から栗原先生,佐野先生,小島先生。

そのひとつは「手に取れるサイエンス」の重要性です。一般に小中学校の理科は実験が多く,実際に見て触って感じ取れるものが多く,それは面白みを感じることが多いのです。しかしながら高校になると急に受験のための座学が増えてしまい,その魅力が伝えにくいといいます。そこで横浜サイエンスフロンティア高等学校では,豊富な実験環境を提供し,より関心を深め,追求する機会をより多く提供する予定とのこと。

横浜サイエンスフロンティア高等学校では,ライトシェルフやクールピットなど校舎そのもので自然環境に対する配慮・取り組みが行われている。

横浜サイエンスフロンティア高等学校では,ライトシェルフやクールピットなど校舎そのもので自然環境に対する配慮・取り組みが行われている。

もう1つは「自己表現としてのサイエンス」です。横浜サイエンスフロンティア高等学校では,第一回選抜試験の際,食料問題をテーマに30年後にサイエンティストとしてどういったリーダーシップを示すことができるかが問われました。塾などの受験関係者には思った以上に社会科学系の課題に思えたとの指摘が多かったそうですが,横浜サイエンスフロンティア高等学校重視しているのは課題解決の力であり,問題点を見出す能力であるため,サイエンスを身近にするのは知識だけでなく,ある種の使命感も重要なのです。事実,純粋な学生は「地球を救う人になるために,この学校に入りました」と言ったと,先生方は嬉しそうに笑っていました。

横浜サイエンスフロンティア高等学校の社会意識の高さについては,サイエンスリテラシーという授業にも顕著に現れています。生命科学/ナノテク・材料/環境,情報通信の4分野で各界の専門家を呼んで講演をしてもらうだけでなく,ディベート大会,グループ研究,研究発表会に加え英語のプレゼン発表会まで企画されています。

二年次には大学研究室との連携や科学賞・コンクール参加,海外研究での英語プレゼンをする予定です。つまり「なぜ」を育むプログラムであり,また「なぜ」をそのままに終わらせず,課題をつかみ,論理的に追求し,その成果を相手にわかりやすく発表するというのが趣旨なのです。そして,このプロセスそのものも研究活動の基礎となる力との認識だからです。

また,また毎月1回土曜には科学技術顧問の先生方が直接実験を指導する「サタデーサイエンス」なる授業もある。⁠あなたの遺伝子解析の結果は?」とか「ガン細胞を覗いてみよう」など横浜サイエンスフロンティア高等学校ならではの豊富で充実した実験機器があっての先端科学体験です。4月は小柴昌俊先生の講演が第一回目であり,5月以降は神奈川科学技術研究アカデミー(光触媒の働きを観察する実習⁠⁠,理化学研究所横浜研究所(白血球などの免疫研究の最先端に触れる)に始まり,東大・浅島誠研究室を往訪し,アクチビンと再生医療への応用,宇宙科学と生命科学,国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」での実験についてとサイエンスてんこ盛りです。

ただの見学会ではなく,ガスクロマトグラフィー質量分析機[GCMS⁠⁠,DNAシーケンサー,走査型電子顕微鏡,蛍光顕微鏡,天体観測機器を実際に触りながら,それも一流の科学顧問の先生から直接授業が受けれるなんて!羨ましい限りです。

ガスクロマトグラフィー質量分析機[GCMS⁠⁠。

ガスクロマトグラフィー質量分析機[GCMS]。

走査型電子顕微鏡。

走査型電子顕微鏡。

(第2回に続く)

著者プロフィール

前田邦宏(まえだくにひろ)

株式会社クォンタムアイディ代表取締役。株式会社関心空間取締役ファウンダー。東京大学大学院情報学環講師。ウェブ草創期から「見えない関係性の可視化」をテーマにネット上での人と人とのつながり方をデザインし,2001年にその活動を発展させたコミュニティサイト『関心空間』を立ち上げる。趣味や嗜好の共感にもとづくコミュニケーションをウェブ上で生み出すネットワークオーガナイザー。主な受賞に,グッドデザイン賞新領域デザイン部門入賞,日本広告主協会WebクリエーションアウォードWeb人賞。オーバルリンク共同代表。