書籍『ピタゴラスの定理でわかる相対性理論』の補講

第6回 光と電磁波

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平行フィーダー線を伝わる電磁波の速度を表す

アンテナで受信した電気信号をテレビにもってくるのに,図3のような平行フィーダ線というものがあります。筆者はこの記事の実験のためにホームセンターで買いもとめました。

図3 電磁波を誘導するケーブル

図3 電磁波を誘導するケーブル

フィーダ線は,電磁波をこの電線に沿って伝播する仕掛けの一種です。端の2本の端子を解放しておくと,それは弦でいうと固定端のようなもので,電磁波が反射して左右を往来します。

しかし適当な抵抗で端を接続すると,あたかも無限に平行フィーダが伸びているかのようになり,反射がなくなります。その抵抗値を特性インピーダンスといいます。平行線の場合,特性インピーダンスは300Ωのものと200Ωのものがあります。

このようにした実験装置で,入力端にパルス状あるいは波束の電圧信号を与えると,フィーダ線の周辺に電磁波が形成されて,それが出力端に向かって伝播するのです。その速度とその計測がここでは問題です。

図4は,まっすぐに張った平行フィーダ線の2本の線の中央の電界と磁界に,正弦波信号が伝播する様子です。

図4 電磁波を誘導するケーブル

図4 電磁波を誘導するケーブル

進行方向をx軸に合わせて,磁界Bと電界Eの関係を計算・考察するものです。磁界の向きと電界の向きは直交するので,ここでは電界の向きをz軸に合わせると,磁界の向きはy軸に合います。つまり電界Eはy成分だけをもち,磁界Bはz成分だけをもちます。

このときの時間と空間の関係は,次式になることが知られています。

  • μ0=真空の透磁率(1.2566×10-6 H/m )
  • ε0=真空の誘電率(8.855×10-12 F/m)

伝播速度は=2.998×108 m/sです。同軸ケーブル構造でも,使用している絶縁体の誘電率と透磁率が真空のそれと同じであれば,伝播速度は同じです。

波動の速度を簡単に計ってみる

この波動の速度は,フィーダ線に使っている絶縁体の誘電率によって若干異なりますが,真空の誘電率と同じならば,光の速度に等しいということも分かっています。

そこで,それをできるだけ簡単に計ってみようではありませんか?

大学のたいていの工学部や理学部なら備えている機器を使って,調べる方法の一つを提示しましょう。

必要なものは,信号発生器とオシロスコープ,10メートルほどの平行フィーダ線,あるい同軸ケーブル(図3)です。同軸ケーブルの方が,測定器や標準的な信号発信器との整合のためには都合がよいです。同軸ケーブルの特性インピーダンスは,50Ωあるいは75Ωに制作されているからです。

位相を使う実験のやり方

ケーブルは別段まっすぐに張らなくても,実験室の中にぐるりと1周させて,入り口と出口の電圧の波形をオシロスコープで計測するだけでよいのです図5参照⁠⁠。

図5 位相遅れの計測

図5 位相遅れの計測

そして入り口の波形と出口の波形の時間遅れを見るのです。どんなタイプのオシロスコープでも可能な計測法が,連続した正弦波,あるいは三角波や方形波を入力端に加える方法です。

正弦波のときには,図5のような信号の遅れが観測されるはずです。このように電磁波の速度は,信号の位相というものによって観測できます。

信号の1サイクルの時間を360°として,出力が何度遅れているかというのが位相差です。この場合,周波数が高いほど位相差が顕著に見られるのですが,仮に3MHz(メガヘルツ)だとすると次のようになります。

3MHzの1サイクルは百万分の1秒であり,その時間の電磁波の進行距離は,3×108m/3×106=100mが波長です。

つまり100mのフィーダ線,あるいは同軸ケーブルならば,ちょうど1波長の遅れになるのです。ここでは10mですから,1/10サイクルの遅れであり,角度としては36°です。1MHzの信号でも,12°の遅れであり,オシロスコープで観測できるはずです。

繰り返しになりますが,この実験で気をつけることは,ケーブルの両端に特性インピーダンスに合わせた抵抗を接続することです。

信号発信器の内部で最初から接続されている終端抵抗の典型が50Ωです。信号発生器は,正弦波のほかに方形波も発生できます。その場合,終端抵抗が合っていないと波形が崩れるので,正しい実験をしているか,どこがおかしいのかの判断ができます。

実際には,ケーブルに資料する材料の誘電率のために,伝播速度が cからずれています。位相差の計測によって,そのずれがどれほどのものかが計算できることが分かっていだだけると思います。

写真は,いろいろなケーブルでこの実験をしているありのままの様子です。正確な計測実験ではないことご容赦ください。

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