書籍『ピタゴラスの定理でわかる相対性理論』の補講

第11回 電磁界のエネルギーについてアインシュタインはこう考えた

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(証明)

では(2)式を証明してみます。

まずこの表の③と④より次式が得られます。

ここで磁界の大きさBzと電界の大きさEy の比については,空間に電流がないときには

という関係があるのですが,それを説明するためにはマックスウェル方程式の展開が必要になりますので割愛します。これを(3)式に代入すると,電界と磁界についてそれぞれ次の関係が得られます。

電磁波が進行するときにエネルギーが伝播するのですが,それは前回に引用したイギリスのH.J.Poyntingの理論によって計算できます。ここでは単位面積あたりを通過するエネルギー密度はです。つまり互いに直角の向きの電界Eyと磁界Bzを掛けあわせて真空の透磁率で割ったものです。

よって座標系間のエネルギー密度の比は次式になります。

ただしβ=v/cです。

時間の短縮

図1において,静止している物体が時刻 t=0 から時刻 t=まで(光あるいは電磁波の)平面波を放射したとします。

では,静止している人から見て,速度vで走り去っている系ではどうなるでしょうか。t=0 のとき二つの系の原点が一致していたとします。t=で放射を終えたときの光が速度cで伝播するのですが,このとき系の原点は,x=vの位置にあって速度vで遠ざかります。最後の光がこの原点に到達する時間と位置は,図2に描いた時空線の上で2つの直線の交点として計算すると

になります。しかし,においた時計では,この時間が短縮されるというのが相対性理論の面白さです。

図2 時空線での計算(⁠⁠ピタゴラスの定理でわかる相対性理論」p.148参照)

図2 時空線での計算(「ピタゴラスの定理でわかる相対性理論」p.148参照)

その関係式こそ表の②のローレンツ変換でして,の時計で測った時間は

です。⁠7),(8)の関係をこれに入れると

が導かれます。

ちなみに,これと (7)式から

であることがわかります。つまり,速度vで運動している人の行動に関して系で観測される時間 t は,での当事者にとってはだけ短縮されてになるのだといえます(相対性理論の読み物に出てくる双子のパラドックスはこれにまつわるお話だと思います⁠⁠。

図1で,系の原点に静止している物体が,(あるいは電磁波)を放射した時間はです。この系では物体から離れていてもx軸と垂直な単位面(たとえば1cm2の面)を光が通過する時間も同じです。しかし系の時計では,その原点にある単位面を光が通過する時間はt' です。

さて,単位面を通過したエネルギーの全量はエネルギー密度と時間を掛けたものです。つまりエネルギー量の比率l' /l はエネルギー密度の比P'/P )と時間の比t'/を掛けたものですから

となります。これはまさに(2)式です。

9月論文の最後の一文をもう一度思い返してみましょう。

Wenn die Theorie den Tatsachen entspricht, so überträgt Strahlung Trägheit zwischen den emittierenden und absorbierenden Körpern.

もしこの理論が事実に対応すれば,放射は放出源の物体と吸収源の物体の間で慣性量を輸送するといえる。

これは光とは何だ? という問いへの一つの答だと,アインシュタインは考えたのかもしれません。つまり,物体が光を吸収したり,あるいは光を放ったりすることについて考えたのだろうと思います。では彼が何時そうことを考え始めたのでしょうか?

それは1900年に発表されたマックス・プランクの論文に記されている輻射(Stahlung)に関する重要な実験が起源だったと思われます。そしてアインシュタインは,1905年3月にノーベル賞の対象となった3月論文を発表しています。

アインシュタインは自分では実験をしなかったのですが,他の物理学者の実験結果から本質を汲み取る能力においては抜群でした。それを次回のテーマしようと思います。