理系なおねえさんはアリですか?―内田麻理香が聞いた理系な女性の理系な人生―

第2回 早くもいきなり「理系じゃない」?! 科学と文化のプロデューサー 加藤牧菜さん

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オフィス設立のきっかけは,音楽のほう

2年間の研究室勤務を経て,2006年に起業。冒頭でお話していただいたような,科学と文化のプロデュース活動を行っています。 ところで,科学コミュニケーターとしての活動は大学院時代から想像がつきますが,やはり気になるのは音楽とのかかわり。そもそも音楽がきっかけで,オフィス設立に至ったのだとか。

─⁠─今のようにコンサートを始めようと思ったきっかけを教えていただけますか。

加藤「歌手や演奏家って,表に出れば出るほどうまくなるんです。本番の場数で決まる。ところが若い音楽家にとっての場があまりないらしい,ということを,音大生と仲良くなってから知ったんです⁠

─⁠─これからの人なのに,そのような場に恵まれない,と。

加藤「学生をしている間に,200人以上の若い音楽家と知り合ったのですが,彼らをよく見て考えてみたら,自分の立ち位置を見出せたんです。彼らは音楽をする、私は場を作る。違う視点,つまりイベントプロデューサの視点で見られるんじゃないかと⁠

─⁠─ここで「プロデューサーの視点」になれるのは,誰にでもできることはないと思いますが。

加藤「みんなはお客さんの前で舞台に立って歌や演奏がうまくなる,私はプロデュースをたくさんやればプロデュースが上手になるんじゃないかと思いました。そこでコンサートをやることにしたんです。それが大学4年のとき⁠

─⁠─大学4年で,とはかなり早い段階ですね。

加藤「コンサートホールを借りるときに団体名が必要だったのでオフィス名をつけました。そのときは会社ではなく,非営利団体という形で。一人でしたけどね。⁠

─⁠─はー,その頃に個人で団体を立ち上げちゃった,と!

加藤「なので,私が大学院を出て本格的に起業したときも,誰1人驚かなかったんですよ。学生時代から会社ごっこをしてましたから⁠

─⁠─本当に好きなことが仕事に直結しているんですね。

加藤「嫌いなことはしませんから! 好きになったり嫌いになったりはその時々で起こりますけど,その瞬間イヤなことは基本的にはやっていないんじゃないかな⁠

学生時代からプロデュースしているコンサートのパンフレットの一部。加藤さんは,企画から司会まで,まさに総合プロデューサーとして活躍!

学生時代からプロデュースしているコンサートのパンフレットの一部

私の考える理系女性は……

最後に,加藤さんのイメージする「理系女性」について聞いてみました。

加藤「自分はもともと理系でも文系でもなく,境界に立つ人間になりたかったから……難しいですね。ただ,理系の学問も怖くないし,もともと学歴がそこにあるので,理系ということになるのですが⁠

加藤「あ,理系かどうかというのは「怖くなさ」で決まるのかもしれないですね⁠

─⁠─⁠理系の学問」は怖くない,という感覚でしょうか。

加藤「あと,理系女子って聞くとピンとこないんですよね。理系男子だとすぐ浮かぶのに(笑⁠⁠。自分はそこに入らないかもしれない……入らないというより,ボーダーの人間だと思います⁠

加藤「私は競争が好きじゃないんです。負けず嫌いなので,自然と人がいない方向に進む。 スペシャリストではなくジェネラリストになりたい。そして広く浅くではなく,広く深く関係をつくりたいですね⁠

─⁠─広く深く,というと,おそろしく難しいような気もしますが。

加藤「いやいや! 人をつかまえると自然と深くなりますよ!⁠

⁠2009年5月 対談収録⁠

そんな加藤さんには学生時代の体験から学んだ「仕事をするときに心がけること・五箇条」があります。それは,

  1. 数打ちゃ当たる
  2. 誰も取って食わない
  3. 人脈が仕事を呼ぶ
  4. 無駄な経験はない
  5. アイデアを捨てない

とのこと。この五箇条が,理系と文系の両立を生み出したのでしょう。いやはや,そのパワフルな行動力には,頭が下がるばかりです。

(イラスト 高世えりこ)

プロフィール

加藤牧菜(かとうまきな)

学生時代の専攻:生物学(生命倫理⁠⁠。

1976年東京生まれ。筑波大学第二学群生物学類卒業,同大学院生物科学研究科修了。京都大学大学院生命科学研究科勤務を経て,現在は「科学と文化」のプロデューサーとして活躍中。2006年~㈱オフィスマキナ 代表取締役。

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著者プロフィール

内田麻理香(うちだまりか)

サイエンスコミュニケーター。東京大学工学部広報室特任研究員/東京大学大学院情報学環・学際情報学府博士課程1年。身近な科学を伝えるために各種媒体で活動中。

URLhttp://www.kasoken.com/