理系なおねえさんはアリですか?―内田麻理香が聞いた理系な女性の理系な人生―

第6回 勉強嫌いがパワーの原点 女医 中村あやさん

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4 分

学生時代に積んだ色々な経験 隔離病棟までも!

勉強が嫌いと言いながらもストレートで医学部に入学した中村さん。やはり並外れたエネルギーの持ち主です。学生時代も持ち前の積極性で,色々な経験を積みます。

――医学生は忙しいってよく聞きますが,中村さんはたくさん旅行に行かれてましたよね。

中村「アルバイトしまくって,そして半年留年して(笑⁠⁠。旅行から帰ってきた3日後に試験が始まって…という具合。うちの大学は単位制じゃなくて通期性だったんです。全部合格して半年OKっていう」

――本当によくバイトしてましたよね。車も大学1年の早々に買ってましたし。まさに勤労学生ですよ。

中村「はい,学校にいるよりもバイトにいるほうが長かったです(笑⁠⁠。毎回,前期や後期のはじめには⁠よし,今回こそ⁠と頑張ってはみるのですが」

――でも将来お医者さんになる人はそのぐらい「外」を知っているほうが個人的には頼もしいです。旅行が原因で隔離病棟に入れられていた時期もあったと聞いたような…。

中村「そう!4年生の頃でしたっけ。インドネシアから帰国してきたら熱が出て咳も止まらなくて。通ってる大学の寄生虫学教室で調べてもらったら腸チフスが血と便と尿から全て出て……全部汚染されてますね,隔離病棟へどうぞ,(笑⁠⁠」

――隔離病棟ってそうそう入れないような…一生に一度も経験できない人がほとんどだと思うんですけど。

中村「今は法律が変わって隔離病棟自体がなくなりましたしね。同じ病院の一角に作られるようになったんです。でも,私のときは病棟自体が本当に別の敷地に建てられていて。入院したとき20床ある病棟に私1人しかいなかったのに,トイレにも出させてもらえなくて。新聞紙でつくったトイレにしろって言うんですよ(笑)ひどいでしょう(笑⁠

――新聞紙!!

中村「食事とかはドアの外に置かれて。看護婦さんの顔を見るのは1日2回の点滴のときだけ。24時間1人がつきっきりで次の日はまた別の看護婦さんが来る形なので,新人の看護婦さんのときは点滴の針がうまく刺さらなくて辛かったですね…」

――すごい世界ですね…。ただ,将来お医者さんになる身としては,患者としてのリアルな体験ができて良かったのかもしれないですねえ。

さまざまな経験を経て,無事医師に。現在は泌尿器科の女医として奔走する日々です。

――ところで,どうして泌尿器科を選んだのですか?

中村「対極にある科がないんですよ。例えば胃がんだったら,手術をする外科と,内視鏡で治療をする内科とか,一つの症例が治療法によって分かれてしまう」

――「こっちの科だ」⁠いやこっちの科だ」という感じで,1人の患者さんを取り合う雰囲気を感じるのですが,それに近いですよね。

中村「それが,泌尿器科だとほぼ一つの科でできるんです。だから信頼をつけてさあ手術するぞっていう外科的治療もしやすいし,逆に化学療法や内科的治療になった場合でも診やすいし,最後の緩和治療までもできる」

――最初から最後まで。

中村「ええ。患者さんに診断をつけるところから始まって,治るあるいはお亡くなりになるところまで一つの科で診ていきやすい点が魅力的だったんですよね」

――それは患者にとっても嬉しいですよね。でもそれだけ範囲を広く勉強しないといけないですよね。

中村「そうですね。だから,普通じゃあまり耳にしないような珍しい症例まで覚えておかないといけない,全部診ることができないといけない,という大変さはありますね」

――そのぶん,責任が大きいですね。

中村さんが4月から勤務している岡山赤十字病院

中村さんが4月から勤務している岡山赤十字病院

著者プロフィール

内田麻理香(うちだまりか)

サイエンスコミュニケーター。東京大学工学部広報室特任研究員/東京大学大学院情報学環・学際情報学府博士課程1年。身近な科学を伝えるために各種媒体で活動中。

URLhttp://www.kasoken.com/