理系なおねえさんはアリですか?―内田麻理香が聞いた理系な女性の理系な人生―

第6回 勉強嫌いがパワーの原点 女医 中村あやさん

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医者はあまり理系じゃないかもしれない

そして皆様を悩ませる恒例の質問です。

――これ,恒例の質問なのですが。中村さんにとっての理系女性へのイメージってどうです? といっても毎回面白い人達ばかり選んでインタビューしてるから,ご本人が自分が「理系女性だ」って意識していないんですよね。

中村「そうですね。私も意識してませんね。医者って逆に理系じゃない人が多いかもしれないですね」

――それは,コミュニケーションが重視される職業だからとも思うのですが,どうですか?

中村「難しいですね,どうなんでしょう。医者になるまでの6年間で理系部分が失われちゃうのかもしれませんね。ひたすら覚えることばっかりですから。A+Bは?と聞かれたら,すぐさまCと答えられるような頭のつくりにさせられるんです。考えることはしてますが,考える=理系ではないじゃないですか。それは文系も同じですし」

――では,中村さんの考える理系的な考え方とは?

中村「うー⁠ーん。なんとなくイメージですが,できないことはできないとスッパリあきらめたりとか,なんでも計算して考えちゃうみたいな感じですかね。例えば,人の生死は計算だけでどうにもならないんだけど,これだけやってもダメならしょうがないな,って思うのは理系っぽい感じがしますね」

――物事の割り切り方が。

中村「でも,いずれにしても人の生死はわからないですからね。もうダメだと思っても復活したりしますからね」

――実は理系でもはかりきれないところにいる,と。

中村「どうなんでしょう。こればっかりは難しいですね」

「パワーあるな,私」

中村さんと話していると,こちらまでパワーをもらえた気分になります。やってみたいことも,まだまだあるのだそう!

――お医者さんはすごく忙しくて大変な職業と聞きますが,お子さんを3人つくられているのがすごいです。

中村「できちゃいましたからねえ,なんて(笑⁠⁠。うちは主人が医者じゃないからそのぶん助けてもらえるということも大きいですが,やはり病院や科の体質によりますね。岡山大学の泌尿器科医局に所属している女医は,私含めて8人中6人結婚していて,しかも結婚している人には全員子供がいるんです」

――へえ!

中村「珍しいケースなんですけどね。逆に,だから働かざるをえない(笑⁠⁠。この前,朝の9時から21時まで子ども3人連れてディズニーランドで遊んでいるときに思いましたね,パワーあるな私,って(笑⁠⁠」

――開園から閉園まで!しかも小さいお子さんを3人連れて。

中村「勉強しなかった18年間,パワーを溜め込んでいたのかもしれないですね。途中で辞めたくなったこともあったけど」

――医学部って,入学した時点でゴールが決まってしまいますからね。

中村「もう覚えることが多すぎて,その努力をするのがすごく嫌だったんです。でも辞めても特にやりたいこともありませんでしたし。あと1年頑張ろう,あと1年頑張ろう…で,気が付いたら国家試験受かっちゃった!みたいな」

――アフリカへの夢はまだありますか?

中村「もちろん。でもそうこうしているうちに結婚して子どももできたから,しばらくは動けなくなっちゃいましたね」

――本当に気が付けば…という感じですね。

中村「でも,今の病院の近くにAMDA(アジア医師連絡協議会)があるんですよ。最近そこに所属している女の子と仲良くなったから,日本が嫌になったらいつでも行けるぞ!って思いながら頑張ってます(笑⁠⁠」

――中村さんは本当にそのうち行きそうな気がします(笑⁠⁠。

(2009年7月対談収録)

対談を終えて

理系女子,女医さん,3児の母……どんな視点から見ても爽快にそのステレオタイプな予想を裏切ってしまう中村さん。中学高校時代は,教えられる内容をそのまま受け取るのが勉強だと思っていましたが,中村さんの姿を見てそれは違う,と目からウロコでした。

「あたりまえ」を根本から疑う姿勢に,幼心に「生粋の理系魂」を感じました。そして持ち前のエネルギッシュさもただものではありません。これからもどんな生き方を切りひらいていくか,期待大です。

(イラスト 高世えりこ)
※ 記載画像の無断転載・改変等はご遠慮下さい。

プロフィール

中村あや(なかむらあや)

学生時代の専攻:医学。

1975年千葉県生まれ。群馬大学医学部医学科卒業。岡山大学病院,福山第一病院,国立病院機構岡山医療センター,岡山市立市民病院を経て現在岡山赤十字病院勤務。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医・指導医。岡山大学大学院医歯薬総合研究科在籍中。

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著者プロフィール

内田麻理香(うちだまりか)

サイエンスコミュニケーター。東京大学工学部広報室特任研究員/東京大学大学院情報学環・学際情報学府博士課程1年。身近な科学を伝えるために各種媒体で活動中。

URLhttp://www.kasoken.com/