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2009年12月24日 Slackware,Red Hat,Ubuntu…歴史を変えた5つのLinuxディストリビューション

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Linuxが誕生して20年,さまざまなディストリビューションが世に広まっているが,Linuxが現在のように普及するまでにはいくつかの劇的なターニングポイントがあり,そこには必ず起爆剤となったディストロが存在した。『Linux Magazine』において,Steven J. Vaughan-Nichols氏がLinux普及に貢献した5つのディストリビューションを挙げているので,それを紹介しよう。

Slackware

Linuxをかなり初期からいじり倒しているユーザなら,フロッピーを何枚も使ってSlackwareをインストールした経験があるのではないだろうか。1993年に登場したSlackwareはまさしく,Linuxの歴史を大きく変えた最初の"ディストリビューション"である。インストールするにはソースをビルドしてmake,そしてコンパイルという手順を踏む必要があった時代,プログラミングの知識がない人にも簡単にLinuxにトライする機会を与えてくれたその功績は大きい。もっとも現在,Slackwareは決して初心者にとって"やさしい"ディストロとは思われていないのだが…。

ファウンダーのPatrick Volkerding氏は現在もSlackwareのトップとして開発を続けている。

Debian

SlackwareがVolkerding氏という1人のすぐれたプログラマによって誕生したディストリビューションであるのに対し,その翌年に登場したDebianは"コミュニティ"が生みだした初のディストリビューションである。現在はSun Microsystemsのバイスプレジデントを務めているIan Murdock氏が中心となり,まったく新しい形でLinuxディストリビューションを作り出そうという動きが起きた。GNUの精神にのっとり,開発の進捗をオープンに公開し,参加者の意見を採り入れながら,みんなでひとつのディストリビューションをリリースする─現在ではごく当たり前の開発スタイルだが,これをはじめて地で行ったのがDebianだ。

当然,多くの人が集まるため,意見の食い違いや激しい論争も起こる。トップの交代も何度かあった。だが,そういった困難をひとつ乗り越えるたびに,Debianは確実に力強くなっていった。現在も最も人気のあるディストリビューションのひとつであり,Ubuntuをはじめとする数多くのLinuxのベースOSとして,その地位はゆるぎない。

Caldera

若いLinuxユーザの中には,Calderaの名前も存在も知らない人が多いだろう。だがこのディストリビューションは,はじめてのビジネスユースLinuxとしてその名を残す。もっともその後のCaldera→SCOの迷走ぶりを知る者にとっては,それ以上に感慨深い名前ではあるが。

Caldera社は元Novell社員のRansom Love氏とBrian Sparks氏によって設立された。Love氏はLinuxに触れてすぐ,⁠これは売れる! ひょっとしたらWindows NTを打ち負かすかデスクトップOSになるかも」と直感した。そして当時のNovell CEOであった故Ray Noorda氏の支援を得て,1995年にCaldera Network Desktopをリリースする。オープンLinuxを標榜していたCalderaは,同社のNASDAQ上場を果たす牽引役となった。

Linuxを心から愛し,ビジネスLinuxという市場を開拓したLove氏が同社を去り,Darl McBride氏がCEOの座に就いてからの一連の裁判で,Caldera,もといSCOは"Linuxエネミー"として,全世界のユーザから憎まれることになった。なんとも皮肉な話である。

Red Hat Enterprise Linux

Red Hatは2004年,それまでの歴史を捨てるかのように「個人向けLinuxディストリビューションは今後開発しない」と宣言し,多くのユーザから反発を買った。ハッカーの集まりからスタートした会社なのに,それを忘れたのか,と。

だが,同社はその方針を変えることはなく,エンタープライズソリューションの提供にビジネスを一本化する。⁠企業へのオープンソース導入を促進することで,大幅なコスト削減とパフォーマンス向上が得られる。その成功体験を拡げていくことこそがオープンソースの地位向上につながり,コミュニティの発展に貢献することになると信じているからだ」とRed HatのバイスプレジデントMichael Tiemann氏は語っている。

Red Hatは個人向けデスクトップの販売をしない代わりに,オープンソースのFedoraプロジェクトを全面的にサポートしている。FedoraはLinuxディストリビューションの中でも"先進性"を標榜していることで知られており,たとえばファイルシステムのext4などは真っ先にFedoraで採用された。Fedoraでの取り組みはRHELに反映され,エンタープライズの世界へと拡がっていく─これがRed Hatのビジネスモデルである。同社がLinuxの歴史に果たした役割は,やはり大きい。

Ubuntu

数あるLinuxディストリビューションの中で,いま最も勢いのあるものをひとつ挙げるとするなら,やはりUbuntuをおいてほかにないだろう。Linuxの普及に伴い,ユーザの裾野が拡がるにしたがって,⁠もっとやさしく,もっと簡単に」という要望も当然ながら増えてきた。Debianユーザで南アフリカ出身の若き大富豪Mark Shuttleworthは,そのニーズをすくい上げ,Debianをベースに"easy-to-use"にこだわったディストリビューションを作り上げた。

2004年10月,最初のリリースである"Warty Watchdog(イボだらけの番犬)"が登場,以来,毎年4月と10月の年2回,定期的にリリースされている。バージョン番号はその年と月から作られ,2009年12月現在の最新版はUbuntu 9.10,コードネーム"Karmic Koala(業の深いコアラ)"である。その後,Dellがネットブックに搭載するなど急速に市場に浸透し,現在ではデスクトップLinuxにおいてNo.1の人気を誇る。

Ubuntuの開発資金は,Shuttleworth氏が英国に設立した会社 Canonicalから拠出されている。つまり,ほとんどShuttleworth氏の個人支援によるものと言っていい。同氏は自身のことを「心優しい独裁者」と表現しており,実際,新バージョンの方針やコードネームは同氏がすべて決定している。まさに,はじめにMark Shuttleworthありきのプロジェクトであるが,最近,同氏はCanonicalのCEOを辞する旨を発表している。長く続いた独裁体制にも少しずつ変化が起こっているようだ。

著者プロフィール

階戸アキラ(かいとあきら)

起きてからまず海外ニュースサイトのハシゴをしないと1日を始められない海外ニュースウォッチャー。英語は英検準一級の資格を持ち,日本人と話すより英語圏の人のほうがウマが合う。

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