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2011年2月25日Ubuntu 11.04をめぐる小さなトラブルに見る“OSSとビジネスの両立”難しさ

Ubuntuは世界で最も人気のあるLinuxディストリビューションであるだけに、その動向には多くのユーザが注目する。そして注目度が高まれば、当然ながら良い話ばかりではなく、きな臭いネタも伝わってくる。今回の話題は、リリースを2ヵ月後に控えた"Natty Narwhal"ことUbuntu 11.04に搭載予定のアプリケーションをめぐる、ちょっと首を傾げたくなる話題だ。

Ubuntu 11.04では、デフォルトの音楽プレーヤーに新しくオープンソースの「Banshee」を採用することを決めている。BansheeはAmazonミュージックストアをデフォルトサポートしており、ユーザがAmazon MP3経由で曲を購入した場合、その収益(年間1万ドル程度)はGNOME Foundationに振り込まれることになっている。だが、Ubuntuの最大スポンサーであるCanonicalがこれに異を唱えた。Bansheeのメーリングリストにおいて、⁠Ubuntuにおいては、BansheeのAmazonサービスはデフォルトから外す必要がある。もしAmazonのままであることを望むなら、Canonicalが収益の75%を受け取る」と宣言したのだ。

GNOME側は当然ながら収益配分の変更には応じず、これによりUbuntu 11.04ではBansheeのデフォルトミュージックストアはUbuntu Oneになるだろうと見られている。もちろん、ユーザはマニュアルでAmazonに変更することはできるが、どう考えてもAmazonのほうがユーザ数が多いのに、なぜわざわざ手間をかけさせることをCanonicalは強いるのか、という不満の声が出始めている。

さらに不信を増幅させるような話題も同時に上がっている。Ubuntu 11.04ではFirefoxの検索ボックスでAmazonを指定すると、AmazonのアフィリエイトIDをCanonicalのものに書き換えるようになっているという。もちろん違法ではないが、もし同じコトをMicrosoftがIEで、AppleがSafariでやったとしたら、世間はどれほどの批判を彼らに向けるだろうか。

参考:~mozillateam/firefox/firefox-4.0.head : /debian/patches/ubuntu-codes-amazon.patch (revision 793)

世界で最も人気のあるディストロとはいえ、UbuntuはこれまでほとんどCanonicalとMark Shuttleworth氏のスポンサードの下で運営されてきた。そしてCanonicalは創業以来、経営的には苦しい状況が続いている。Sun Microsystemsを例に引くまでもなく、オープンソースをビジネスの主体にするというのは本当に難しいことなのだ。Canonicalが少しでも儲かる方向を向こうとすることは、今の時代、当然といえば当然であり、それを咎めるLinuxユーザはいないはずだ。

だが、今回のケースが多くのユーザをがっかりさせたのは「取れるところから取ろう」とでもいうような、ひどく"セコい"感じが伝わってくるからだろう。非営利団体から年間1万ドル程度をかすめ取るような真似を、誰もCanonicalにはしてほしくないのだ。OSSとビジネスの両立の可能性を、多くのユーザが本気で考える時期に来ているのかもしれない。

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