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2011年8月17日最新カーネル、最新アプリが乗っているのに…非モテなディストロ・Gentooの事情

Linuxを10年以上使っているユーザなら、Gentoo Linuxの名前くらいはご存知だろう。2002年ごろまでは人気ディストリビューションのベスト3に入るほどの隆盛を誇っていた。ところがその人気もだんだんと下降線をたどり、今では新バージョンをリリースしても、レビュー記事が載るどころか、ニュースとしても取り上げられることがほとんどなくなってしまった。

8月7日、Gentoo Linux 11.2がLiveDVDでリリースされた。カーネルにはLinux 3.0を搭載、デスクトップ環境にはGNOME 3.0/KDE 4.7/Xfce 4.8と最新の環境が揃っている。主要アプリについても、LibreOffice 3.3.3やFirefox 5.0など、可能な限り最新のバージョンで揃えられている。にもかかわらず、残念なことにほとんど話題にならなかった。

なぜGentoo Linuxはこんなになってしまったのか? 長年のGentooユーザでテクニカルライターでもあるSusan Linton氏が興味深い分析を「OStatic」に載せている。ちなみにご本人も最近は別のディストロ(Sabayon)を使う機会のほうが多くなってきているという。

  • Gentoo特有のコンパイルシステム。ハードウェアが非力な時代は他のディストロに対してパフォーマンス面での優位性をもつことができたが、ハードの性能が飛躍的に高まった現在では、あまりありがたみが感じられず、むしろ面倒。
  • ファウンダーのDaniel Robbinsがプロジェクトを離れたことも痛かった。プロジェクトの顔となるようなリーダーの存在はやはり重要。ShuttleworthのいないUbuntu、LinusのいないLinuxを想像できるか?
  • Gentooを冒涜することになるのかもしれないけど、あえて言う。バイナリインストーラがないのはつらい。いまどきtarballの展開をインストール時に一般ユーザに強いるのは酷すぎる。手間も時間もかかり、トラブルも起こりやすい。インストーラがあれば、少なくとも「試してみよう」と思うユーザは増えるはず。
  • たとえばKDEだけをアップグレードしたいとき、わざわざコンパイルすることを考えるとものすごく面倒で萎える。一部のアプリについてはバイナリ版もあるけれど、本当にごく一部。カーネルとFirefoxをえんえんコンパイルしたときの苦痛と言ったら……
Gentoo Releases 11.2 LiveDVD to Crickets - OStatic
URL:http://ostatic.com/blog/gentoo-releases-11-2-livedvd-to-crickets

要するにGentooが一般ウケしない最大の要因は、ソースコードから好みの環境を構築するというGentooの最大の"個性"にあるといえる。Portageに象徴されるカスタマイズ性の高さこそがGentooの魅力なのだが、UbuntuやRed Hat系の手軽なディストロに慣れたユーザにとって、インストールやアップグレード時にソースコードのコンパイルを要求されるのはかなりの苦行に感じるはずだ。

これからはほとんどのディストロがインストールや設定のさらなる容易性を謳う方向に進むことは間違いない。Gentooはこのままマニア向けの独自な個性を維持し続けるのか、それともユーザ層拡大のために何らかの手を打つのか。今後の動向がちょっと気になる。

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