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2013年7月18日「汚い言葉はやめて!」女性開発者の苦言にLinus倍返し

もはや本コーナーは"Linus暴言録"と陰で呼ばれているようだが、我らがLinus Torvaldsがまたまたカーネル開発メーリングリスト「LKML.org」での発言で物議を醸している。といっても今回の場合、どちらかと言うとLinusは巻き込まれた感が強いかもしれない。

コトの発端はLKMLに7月15日付でポストされたIntelの女性開発者 Sarah Sharpからのメールである。

LKML: Sarah Sharp: Re: [ 00/19] 3.10.1-stable review

彼女は、Linusがカーネルメンテナーの古参"GKH"ことGreg Kroah-Heartmanに対し"door-mat(ドアマット、踏みつけられてもしょうがないほどのボケ)"と呼んだことにひどく立腹し、⁠これはもう暴力です! カーネルの質の向上に、こんな汚い言葉は必要ありません!! とても受け入れがたいわ」と噛みついたのだ。

ご存知の向きも多いと思うが、GKHはLinuxカーネルの新バージョンがリリースされた後、次のバージョンが出るまでの間、セキュリティアップデートなどを施したメンテナンスバージョンを継続的にアナウンスしている人物だ。Linusとは付き合いも長く、信頼も厚いはず……だが、Linusはたとえ友人であろうとも、カーネル開発におけるルール違反者には容赦なく口撃を行う。逆に言えば理由なく罵倒することはない。

今回、GKHがドアマット呼ばわりされた理由は、GKHがLinusに黙っていくつかのパッチをあててメンテナンスバージョンを出したからだとされている。LinusはGKHに対し「けっこうみんな言ってるよ。Linusに送るほど重要じゃないパッチでも、GKHに送れば彼はこっそりパッチを当てて、あとから報告するみたいだから、アップデートバージョンが出るまでちょっと待ってみようかな、ってね」とチクリと刺し、そうした行為を「ドアマットなボケがやるのと同じこと」と批判している。

Linusのこれまでの暴言を知る者から見れば、それほど過激なものとも思えず、どちらかといえばおとなしい感じすらするのだが、どうもSharp女史には耐えられなかったらしい。⁠メーリングリストではプロフェッショナルに振る舞いましょう」⁠次回のカーネルサミットでこのことを議題にしましょう」と学級委員よろしく提案し、メールの最後には「もう私は我慢しない。大声で周りに訴えてやる! これまでトップメンテナー(Linusのこと)に逆らえず、黙るしかなかった人たちのためにも! 私はもういい子でいることはやめたの!」と力強くLinusに宣戦布告している。

さて、このご提案&宣戦布告に我らがLinusはどう反応したのだろうか。まずはこんな短い返信を行っている。

LKML: Linus Torvalds: Re: [ 00/19] 3.10.1-stable review

最後はもちろん「Star Wars」からの引用だろう。見ての通り、Linusはまともに相手にする気がなかった。多少は面倒臭がったのかもしれない。

だがSharpはこれで終わりにする気はなく、しつこくLinusに噛み付いていく。果ては自分のブログやTwitterでも喧伝、⁠私はひとりでも戦う。でも賛同者がいてくれればもっとうれしい」⁠カーネル開発はプロフェッショナルの場であるべき」などと書きこみ、あっという間に世界中のLinuxユーザに知られる存在となった。

No more verbal abuse -The Geekess
Twitter /Sarah Sharp: I'm on to something...

また、彼女に同調するメディアも出はじめている。

Dear Linus, STOP SHOUTING and play nice - says Linux kernel dev -The Register

さすがにこうした攻勢に黙ってられなくなったLinus、⁠平常運転⁠に戻り「クソ食らえ(Bullshit⁠⁠」で始まる長い反論メールをLKMLに投稿した。

LKML: Linus Torvalds:: Re: [ 00/19] 3.10.1-stable review

「君の言う"プロフェッショナル"とやらに僕はまったく興味がない。同様に見せかけの礼儀正しさや、オフィスでの正しい振る舞いかたにも興味ないね。他人に自分の流儀を押し付ける真似なんて、最悪の人間がやること」としており、それ以上は今のところ相手にしない構えを見せている。

しばらく長引きそうな騒動だが、Linusが今回の件に懲りて暴言を吐かなくなることはまずないだろう。Linusの口汚さを止めるにはただひとつ、ルールに沿ったカーネル開発の方針を守ること、それだけなのだが。

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