「LinuxとLibreOfficeはミュンヘンのシステムをずっと順調に支えてきている。技術的な問題は何も存在しない。もしWindowsに移行するなら、それは政治的な問題でしかない」―独ミュンヘンのITサービス部門「IT@M」で統括責任者を務めるKarl-Heinz Schneider氏は3月上旬、LinuxからWindowsへの再移行が取り沙汰されている問題に対し、独メディアのインタビューに関してこうコメントしている。
当初、ミュンヘン市長のDieter Reiter氏および同市長の所属するSPD(社会民主党)はWindowsへの再移行案を市議会に提出した後、2月中の同案可決を予定していた。しかし野党やFree Software Foundation Europe(FSFE)などのオープンソース関連団体はReiter市長らの動きに強く反発、FSFEが中心となって展開した抗議行動が奏功し、現時点ではWindowsへの再移行は正式決定されていない。もっとも市議会ではいまだに市長らが優勢で、反対派がなんとか正式決定の延期にもちこんだ、というのが状況だ。
- What happened in Munich -FSFE
そうしたさなか、現場で市のシステムを運用する責任者のSchneider氏が「LinuxとLibreOfficeには技術的な問題はいっさいない」と発言したことで、あらためて本件の政治的要素の強さが際立ってきている。Windows再移行を推進する議員は「LinuxやLibreOfficeでは文書作成や印刷といった業務に支障が出る」「Linuxは信頼性や操作性に問題がある」と主張するが、Schneider氏はこうした意見に対しても「(LibreOfficeとMicrosoft Officeの)互換性の問題はほとんど存在しないし、どうしてもMicrosoft Officeでなければならない作業は仮想化環境を通して利用することができている。LinuxとWindowsに関しても同様」と強く反論する。
「今回の移行は非常に"奇妙な決定だ"といえる。Linuxには技術的な問題がないのになぜこのような話が持ち上がったのか。市長らの決定はファクトではなく政治的な事情や感情にもとづいている」とSchneider氏はコメントしている。同氏の発言がLinux/LibreOfficeを継続する可能性につながるのか、今後のミュンヘンの動きが注目される。