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2018年9月19日もう特別扱いはいらない ―Linuxコミュニティに新たな"Code of Conduct"確立へ

現在もLinuxコミュニティを騒然とさせているLinus Torvaldsの謝罪&休養宣言だが、今回の事件をきっかけにLinuxコミュニティ内部から"Code of Conduct" ―コミュニティメンバーの行動規範を新たに定義しようという動きが起こっている。中心人物はGreg Kroah-Hartman(GKH⁠⁠、現在Linusに代わってカーネル開発を統括する最古参のメンテナーだ。

Code of Conduct: Let's revamp it. - Linux kernel source tree

Code of Conductはオープンソースコミュニティでよく使われる言葉で、議論やプレゼンなどの公式の場でどのように振る舞うか、その基本的なガイドラインを定義するものだ。代表的なCode of Conductとしてよく知られているのがContributor Covenantで、GoogleやDocument Foundation、JRuby、Kubernetesといった組織/コミュニティがこれを採用している。

GKHはカーネルコミュニティのこれまでの行動規範を"Code of Conflict(確執の規範)"と表現、いまの状態のままでは「行動規範としての暗黙的なゴール - 礼節を重んじ、"互いにエクセレントな存在であれ"というスピリットを育むというゴールにはほど遠い」とこれまでのコミュニティのあり方を振り返り、プロジェクトを成功に導くための明確なガイドラインがカーネルコミュニティにも必要として、Code of Conductの叩き台となるドキュメントを公開している。この叩き台はContributor Covenant(バージョン1.4)をベースにしており、GKHやLinusのほか、Cris MasonやDan Williamsといった大物メンテナーたちも賛同を示している。⁠カーネルコミュニティが参加者をあたたかく歓迎する環境へと変えていくためにも、いま、この時点から我々はこの規範を遵守しなくてはならない」⁠GKH)

GKHが添付したCoCの内容で目を引くのは、最後の「Enforcement(実施⁠⁠」の部分だ。このパートでは、ハラスメントやそれに類する行為があった場合、それらの行為はLinux Foundation内に設置するテクニカルアドバイザリボード(TAB)にインシデントとして報告され、その内容がTABで審査されるとある。そして最後に「このCoCに誠意をもって従わない、あるいは実施をしないメンテナーは一時的、あるいは恒久的な措置を、プロジェクトに責任をもつ他のメンバーから受けることがありうる」と結ばれているが、Linus自身が今回、カーネル開発から一時離れるという措置をみずからに課している。Linusであろうと特別扱いされない、時代の標準的な価値観にもとづいた行動規範がLinuxコミュニティに本当に誕生しようとしているのは間違いない。

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